15.あれこれ考える必要はない
ガレアッツオが
「働いているのか? 滞在費用は、不備なく
「……
あんたの金を使いたくない、という言葉は、
レナートが目を
「子供を育てるのは、親の
「……っ!」
「
ガレアッツオの注文に、レナートが
ガレアッツオも、小さく
ダニエラが一人だけ鼻歌混じりに
「学校には、通っているのか?」
「……第三分校にね。少し騒がしいけど、授業の水準は悪くないよ」
「そうか。知識と学問は、おまえ自身の力になる。今の経験と見識も、視野を広げてくれるだろう」
ガレアッツオの横顔からは、感情のゆらぎは読み取れなかった。レナートは
「今年も……やっぱり、<
「当然だ」
ガレアッツオが、
「私の……
「父さん……っ!」
「おまえが、あれこれ考える必要はない」
ガレアッツオが席を立った。
宿泊費や生活費などは、いつもレナートの知らないところで支払われていた。ダニエラも、直接レナートには、なにも言わなかった。
レナートは
なにもできない、できていない自分が
ガレアッツオが立ち去った後、忙しくなった
一通り宿泊客が食事を終えて、外来客も
「お疲れ、レナート! 今日も大変だったみたいだな。なんか顔が暗いぞ? 母さん、人使い荒いからなあ」
「そ、そんなことないよ。リヴィオこそ、お疲れさま」
「まったく、宿の仕事は大して手伝ったこともないくせに。よく言うよ、この子は」
ダニエラが苦笑しながら、自分とレナートたち、合わせて四人分の
「おや? ロゼッタさんは一緒じゃないのかい?」
「ああ。今夜は
リヴィオの言葉に、気まずい沈黙が降りた。ダニエラが目を
「そうかい……まあ、ちょっと
「は? なに言って……」
「リヴィオ、同じ職場で
「レナート? おまえまで、なにを……いや! そんなわけないって! ちょっ、グリゼルダ……っ!」
「グリゼルダ?」
「あ、ええと……な、なんでもっ! ホントっ! なんでもないって……っ!」
リヴィオがなにやら、脇腹を押さえて
こういう感じも、最近多い。どこかの病気を心配しても、すぐに
「と、とにかく! ロゼッタは放っとこうよ! みんなが誤解してるみたいなこと、ないから!」
リヴィオが、必死に話題を変える。レナートとダニエラは目を合わせて、それを受け入れた。ようやく一息ついたのか、リヴィオが
「それよりさ、ほら! 給金、かなりもらえたんだぜ! ちゃんと
「あら、まあ……なんだか、いっぱしの金額だねえ。全部、
差し出された封筒の中を確認して、ダニエラが感心する。リヴィオはもう、得意満面だ。
「自由にしてくれよ! 父さんが次にいつ帰ってくるか、あてにできねえしなあ」
「それじゃあ、これはあんたたちの
ダニエラが、封筒からある程度まとまった
「ダニエラさん? そんな、ぼくは受け取る理由がありません」
「働いてもらってる給金だって言っても、あんた、受け取らないじゃないか。あたしの自由にして良いってんだから、自由にするのさ」
「リヴィオ……!」
「良いんじゃねえの? またその内、買い食い頼むかも知れねえしさ。
「素直でよろしい。今日はもう休んで、
ダニエラが手を叩いて、リヴィオとレナートを追いやった。
二人とも
「リヴィオ……なんだか、ごめん。関係ないぼくが、こんなお金……」
「関係ないことないだろ。母さん言ってたぜ? おまえ、けっこう
「大したことはしてないよ。それに、少しでも宿泊費の
「それとこれとは、話が別だろ」
リヴィオが肩越しに振り返って、笑った。
「掃除とか料理なんて、少なくとも俺には無理だよ。おまえが母さんを手伝ってくれるから、俺が他の仕事できるんだぜ? ええと……だからさ。この金だって、俺一人で
リヴィオの笑顔を、レナートはまっすぐに見られなかった。
どうしてこんなに違うんだろう、などと考える段階は、とっくに通り過ぎた。
リヴィオはレナートにとって、特別な友人だった。そのリヴィオを
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