第四章 小型船の邪神教徒
39.そこいらへんでやめとけって
夏の月夜、うっすらと
せまい水路には、月明かりも街灯の光も入り切らず、欠け落ちたような闇があちこちにうずくまっていた。
そんな闇の一つ、背の高い建物にはさまれた水路の真ん中に、
一人が黒い大きな革袋を広げて、他の一人が中から、
「……あれ、普通にしめてるだけってこと、ないかな?」
「見知らぬ他人を外見で判断するのもなんですが、異常な集団です」
「巡回で見つけるなんて、運が良いんだか、悪いんだか」
「アルマンドみたいなことを言ってはいけません。私たちの愛の共同作業で、地上に正義を執行するのです」
げんなりとするリヴィオに、グリゼルダは、ふん、と鼻息が荒い。そうこうする間に、船上の異常な三人は、
革袋に
「あー、そこいらへんでやめとけって。おっさんたち」
女かも知れないが、リヴィオがとりあえず、決めつける。
「な、なんだ、貴様っ? どうして、ここが……?」
「その官服、と、特務局か?」
「おのれ! 我らの悲願を妨げるか、
声からして結果的に、おっさんたち、という決めつけは合っていたようだ。なんだか好き勝手を言っているようだが、リヴィオはまとめて無視した。
「ええと、
「難しい言葉を使いますね」
「一応、国立高等学校生だからな!」
がんばった
「そんなわけでさ。迷惑そうな集団行動はやめて、おとなしく家に帰れって。せっかくしめた
「ふ……ふはははは! 甘いぞ、特務局! 我らの儀式は止められん!」
「なにやってんだよ、もったいな……」
リヴィオのため息に、暴風が重なった。
わずかな月明かりもさえぎって、闇の中になにかが飛来する。
リヴィオの右足が踏みしめた
いや、男の
「あ、ごめん」
「相応でしょう。
グリゼルダの言うように、
リヴィオもまた、二本目、三本目の岩の柱を水路に伸ばす。ことごとく男たちの
「見事ですね」
「い、いや、わざとじゃないって!」
水路に落ちた男たちが、悪態っぽい声を上げながら、すぐに
技能の問題ではない。全身を
「おい! なんとか、
少し魔法に自信を失くして、リヴィオが呼びかける。その眼前に、影が舞い降りた。
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