37.いくらでも文句を言ってください
同時に、目のくらむような光があふれた。
ロゼッタは光の中、モルガナに抱かれて浮かんでいた。二人を包む大きな光から、前にも見た、小さな光の泡が無数に飛び立った。
光の泡は、壁を、屋根を、床をすり抜けて、水路を、
ロゼッタには、そのすべてが見えていた。どこまでも一緒に広がっていくような、不思議な感覚だった。
やがて、星の数ほどの光の泡は、物陰や建物の屋根裏、道端、水路の奥に入り込んだ。誰にも、動物にも見えていないようだった。
そして静かに、
光の泡が、明るく、暖かくなって、
モルガナが祈るように目を閉じた。ロゼッタも同じことをした。
なにが起きているのか、理屈ではわからなくても、感じていた。自分たちの都合でひどいことをした。許しは
最後に、ロゼッタとモルガナを包む光だけが残った。
「ありがとう、モルガナ……これで……終わったのね」
「いいえ。まだ、大事な仕上げがあるわ」
モルガナが、ずっと抱いていたロゼッタを、寝台に横たえた。ロゼッタの両側の
「あなたに会えて良かったわ。大好きよ、ロゼッタちゃん」
「モルガナ……?」
「本当のお母さまには悪いけれど、向こうで会ったら、私の娘でもあるのよ、って言わせてもらうわ」
モルガナがロゼッタから、身体を離す。光は、モルガナだけを包んでいた。
「お願いね、ジャズアルド……それから、アルマンド坊や」
モルガナが、ロゼッタの知らない名前を呼んだ。
光が大きく
光が消えて、モルガナもいなかった。身体を起こすと、手に、小さななにかが触れた。
ロゼッタが呆然としていると、扉が開いて、誰かが入ってきた。
灰色の
男は、まだ裸でいるロゼッタを気にもしないで、寝台の丸薬みたいなものを拾い上げた。両手で
「
そしてロゼッタに向き合うと、片手でロゼッタの鼻をつまんだ。わけもわからず開いた口に、丸薬みたいなものが押し込まれる。
「申しわけありませんが、あなたの意向は無視します。後で、いくらでも文句を言ってください」
わからなさすぎて、もう、どうとでもしてくれ、という気分だった。抵抗する力もなく、ロゼッタは、丸薬のようなものを飲み込んだ。
暖かい熱量が身体の中を満たして、なにかに抱かれるように、ロゼッタは眠りに落ちていた。
********************
医療局による迅速な
医療局のバティスタ=ロッシリーニ局長は第一の功労者として、大評議会から
ロゼッタは、それこそ奇跡としか言いようのない回復をした後、
バティスタは、胸を張って家を出るロゼッタに、苦笑してなにも言わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます