第45話  桔梗と水族館に行ったんだけど

 パンケーキを食べた俺たちは、水族館にたどりついた。アリスと行った水族館に比べて、小さいが、その分近代的である。でもさ、なんか周りにカップルしかいないんだけど……

 隣を歩いている桔梗をみると、ワクワクと擬音が出そうな顔で目を輝かしている。まあ、桔梗が楽しんでるならいっかー。

 俺は受付のお姉さんに声をかけてチケットを購入する。



「高校生二人分でお願いします」

「あ、刹那、自分の分は私が払いますよ」

「これは、バレンタインのお礼だからさ、それに、バイトしてるからお金は、たくさんあるんだよね」

「むうぅー。気を使わなくていいんですよ。刹那におごってもらうよりも、そのお金で何回もデートをしたいんですが……」



 財布を出した桔梗を、俺は制止した。これくらいしないとね。桔梗は財布を持ったまま不満そうな顔をしているが気にしない、気にしない。まあ、気がすまないようだったら、ジュースでもおごってもらおうかな。俺がそんなこと考えていると、腕に何か暖かくて柔らかいものがくっついてきた。



「桔梗……?」

「館内は薄暗いですからね。早く行きましょう」



 彼女が手をつないで……いや腕をとってくっついてくる。すると俺の腕に彼女の胸があたるわけで……俺は思わずどきどきしてしまう。そんなあたふたとしている俺がおかしいのか、彼女は意地の悪い笑みを浮かべて、俺の腕を引っ張って進もうとする。やばい、そのたびに胸が……色々やばいって!! 素数を数えよう……あれ、素数ってなんだっけ。数学苦手なんだよね……よくわからないけどいっかー。おっぱい、いっぱい。



「わぁー、すごいきれいですね」



 己の中の欲望と戦っている俺をよそに、桔梗が水槽の中で泳いでいる魚たちをみながら、感動したように声をもらす。照明の落とされている室内に多種多様な魚たちが泳いでいる。ガラス越しに魚に触れようと、手を伸ばしている桔梗の姿は、元々の顔が整っていることもあってか、どこか幻想的だった。エッチなゲームだったらCGになりそうである。パシャリと俺はスマホで撮影をする。よっしゃCG回収完了。



「何を勝手に、撮ってるんですか!!」

「ごめんごめん、可愛かったからさ、ついね……」

「もう、そんなこと言われたら怒れないじゃないですか……ちょっと、貸してください」



 そういうと桔梗は、少し顔を赤くしながら俺からスマホを奪い取って、俺の顔に、自分の顔を近づけてパシャリと撮った。2ショットじゃん。

 そして、そのまま、何やらスマホをいじった後、俺に返す。しかし、いきなりでびっくりしよね……顔と顔がすごい近かった……やっぱり桔梗って、なんかいい匂いがするよね。



「あれ、待ち受けと、ラインと、ツイッターのアイコンと、ヘッダーが桔梗との2ショットになってるんだけど」

「うふふ、せっかくの記念です、変えないでくださいね」

「え、でも……」

「何か不都合でもあるんですか? 例えば、他の女に見られたらまずいとか……」



 俺の言葉に、先程まで笑顔だった、桔梗の目から感情が失われる。でたー、桔梗のインセクトモードだ。時々こうなるんだよね。本当に器用ですごいなぁ。



「いやさ、桔梗的には嫌じゃないの? これじゃあ、まるで付き合ってるみたいだよ。他の人に勘違いされちゃうよ」

「いいんです。早く行きましょう。イルカショーは見たいんです」



 よくわからないけど、桔梗がいいならいっかー。俺たちは腕を組みながら水族館を楽しむ。少し歩くとなれない姿勢だったからか、桔梗がバランスを崩したので、咄嗟に引っ張る。すると抱きしめるかのような距離になってしまい、目が合う。うおお、むっちゃ、やわらかい。

 なんか気恥ずかしくて、俺達はすぐに、元の体制に戻る。桔梗は恥ずかしいのか、顔が真っ赤である。でもさ、たぶん俺も顔が真っ赤なんだろうなぁ……



「この姿勢は危ないね、離れよっか?」

「いえ、このままでいいんです、このままでいたいんです」



 俺の言葉に彼女はゆっくりと、首を横に振って否定する。大丈夫かな? 顔が真っ赤なままなんだけど……まあ、次からは彼女がバランスを崩さないように、気をつければいっかー。

 でもさ、この体制って、はたからみたら完全にカップルみたいだよね。俺も桔梗が相手じゃなかったら、この子俺のことが好きなのかなって、誤解しちゃうよ。



「もう、悟の馬鹿!! せっかくのお出かけなんだから、ちゃんとリードしてよね」

「そんなこと言っても、無理だって……僕だってデートだから気合を入れたんだよ。でもわがままばっかり言うから……」

「だ、だから、デートじゃないって言ってるでしょ。私たちは単なる幼馴染なんだからね。それにわがままって何よ!! レディをエスコートするのがあなたの仕事でしょう?」



 声の方を見てみると、小学生低学年くらいの女の子と男の子が、口論していた。まあ、口論と言っても、男の子が一方的に、女の子に文句を言われて泣きそうになっているんだけどね。

 子供は元気でいいなぁって思う、でもさ、せっかくのお出かけなんだから、喧嘩したらつまらないよね。それにさ、あの女の子がツンデレだったころの桔梗に似ているんだよね。男の子の方は俺とは違って、本気でへこんでそう。台風みたいなもんだから、気にしなけりゃいいのにね。でもさ、あのままじゃあ、あの二人は、仲たがいしちゃいそうだよね。



「デート中にすいません、あの子たち喧嘩をしているみたいなので、声をかけてきてもいいですか? その……なんかほうっておけなくて……」

「ああ、もちろん。俺も行こうとしていたんだよね」

「やはり、私たちは気が合いますね」

「そりゃあ、幼馴染だからね」



 そうして俺たちは喧嘩している二人に声をかけることにしたのであった。



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