第4話俺にストーカーができたのかもしれないんだけど

朝起きると俺は何かやわらかい感触と甘い匂いにつつまれる。なんだろう、柔らかいな。抱き枕なんて買ったっけ? 俺は寝起きで鈍い頭を働かせようとがんばる。



「刹那抱きしめてくれるのも嬉しいですが、早く起きないと学校に遅れてしまいますよ」

「ああ、そうだな……」


 俺は夢心地にいながら答える。ん? この抱き枕しゃべった? おかしくない? 目を開けると抱き枕と目が合った。そしてほほ笑んできた。これ、抱き枕じゃねえよ!!



「うおおおおおおおお、桔梗なんでいるの? しかもなんで俺のベットに寝てるの?」

「刹那を迎えに玄関に行ったらお母さんが、せっかくだから起こしてあげてって言われたので……でもいきなり抱きしめられてドキドキしてしまいました」



 桔梗は頬を赤らめながら言った。俺もいきなり制服姿の桔梗がベットにいてびっくりしたよ。俺もむちゃくちゃドキドキしたわ。ホラー映画の主人公ってこんな気分なのかな? でもミニスカートってエッチだよね。生足がとても艶めかしい。朝からいいものを見させてもらった。あと、さっきの柔らかい感触はもしや……俺は黙って桔梗の胸を見る。



「さあ、刹那も目が覚めたようですし、学校へ行く準備をしましょう」



 そう言って彼女は俺をベットから引きずりだした。なんで俺は朝から桔梗に起こされているんだろう……なるほど、幼馴染だし、漫画とかではよくある事だし、母さんもオッケーしたなら問題はないのだろう。現実におこるなんて奇跡だな。まあ、よくわからねえけどなんかきもちよかったからいいや。



「起こしてくれてありがとう、とりあえず、すぐ着替えるからリビングで待っててくれる?」

「私は大丈夫ですよ、気にしないでください」

「いや、俺が気にするんだけど……」

「私は大丈夫ですよ、気にしないでください」




 無限ループってこわくない? とりあえず俺は強引に桔梗を外に追い出して着替えていると一つの事に気づいた。あれ、パンツ減ってない? 気のせいかな……いや気のせいじゃねーよ。一番お気に入りのやつだもん。母さん捨てたのかなぁ。まあ、いいやとりあえず着替えなきゃ。

 着替えて食卓へ向かうと俺の大好きなフレンチトーストが並べられている。甘い匂いが食欲をそそる。いつもは食パンがそのまま置いてあるだけなのにずいぶん豪華だな。



「おはよう、刹那。今日は桔梗ちゃんが朝ごはんを作ってくれたのよ。本当に料理上手でいい子ね」

「お母さん……そんな褒めないでください。恥ずかしいです……」



 あれ、人の家で料理するのって当たり前なのかな? でもお母さんが普通に接しているって事は常識的なのだろう。まあ、フレンチトーストがうまいからいいか。



「じゃあ、私はもう行くけど遅刻しないようにね、桔梗ちゃん刹那をよろしくね」

「えへへ……よろしくって言われた……これはもうお母様公認……?」



 そういうとお母さんは出勤していった。元々桔梗は俺以外には普通に接していたからか、母さんには信用されているんだよね。何で俺には口が悪かったんだろうね? 今は今で結構変だけど……まあ、俺の推しキャラみたいで可愛いからいいや。



「刹那は今日は暖かいのと冷たいのどちらが良いですか?」

「え……? うーん、冷たい方で」



 俺が答えると当たり前のようにアイスコーヒーが出てきた。確かに俺は朝はコーヒー飲むんだけど、なんで桔梗は知っているんだろう。お母さんが伝えてくれたのかな?



「どうしました、私に何かついてますか?」

「いやー、なんか新鮮でいいなって思ってさ」

「新鮮……新婚みたいでいい響きですね……」



 俺の言葉に何故か顔を真っ赤にしている桔梗をみながら俺は食事を進めるのであった。いつもとは違う桔梗といつも通りに一緒に登校をする。








 学校に登校して教室についた俺は鞄を開けると手紙が目に入った。そうだ手紙があったじゃん。結局桔梗のキャラ変でてんぱってすっかり忘れていた。下着も無くなってたし、なんか変なことが連続でおきているきがしてきた。とりあえず隣の委員長に相談をしてみることにした。




「委員長聞いてよ、俺はストーカーにあってるかもしれない」

「なるほど……通報が必要みたいね。119ってかけるといいわよ。現実と妄想の区別がつかなくなるって大変よね」

「やっぱりそうかなって……110じゃないのかよ!! 妄想じゃないぞ、これみてよ。俺って意外ともてるだろ」



 そういって俺は得意げに手紙を委員長に見せつける。手紙をみた委員長が一瞬引いた顔をした。やっぱり文体おかしいよね。



「自作自演もここまですごいわね、その中身のないもてるアピールってむなしくない?」

「そっちーー!! だから自演じゃないってば!! 下着もなくなってたし」

「下着……雑巾にでもつかわれたのかしらね……」

「自分の下着の末路が嫌すぎるよ。てか普通の人は雑巾にするにしてもせいぜいシャツでしょ」

「確かに雑巾だと思っていたものがあなたの下着だったと判明したら……ごめんなさい、気分が悪くなったから保健室いってくるわね」

「そこまでー!! もう、ホームルーム始まっちゃうよ。でも確かに雑巾だと思っていたものが委員長のパンツだったら……」

「……死にたい?」

「待って、今のは俺が悪かったから無言で110番しないで、セクハラで捕まっちゃうの俺!?」



 こちらを冷たい目でみながら無言で携帯を取り出した委員長を俺は必死に制止する。冷たい目もたまらないね!!



「まあ、いいわ。お昼、久々に部室を開放するから一条君もきなさい。誰にも内緒でね」

「別にいいけど……部誌の発行にはまだまだ時間あるのにどうしたんだ?」



 最後の方は委員長は俺にだけ聞こえるように耳ともで囁いた。近すぎてびくっとながらも返答した俺の言葉に委員長は答えない。あれ、もしかしてラブレターをもらった俺に嫉妬して告白とか? モテ期きたー!! どうでもいいが委員長もいい匂いするなぁ。桔梗とは違う種類のいい匂いでなんかテンションあがる。俺と何が違うんだろ、今度シャンプーきいてみようかな。

 ちなみに俺と委員長、ついでに桔梗は同じ文芸部に所属している。人が少なくて廃部になりそうだということで委員長に誘われ俺が入ると、桔梗も入ると言ってついてきたのだ。

 ちなみに委員長は文章が、桔梗は漫画を書くのが上手い。俺? 俺は……文章や漫画一回書いたらなんかいるだけでいいよって言われてしまった。二人とも俺の才能に畏怖しているのかもしれないな。天才はつらいぜ。





 昼に購買部でパンを買うために並んでいると俺は何者かの視線を感じた。そのたびに、振り向くのだが誰もいない。ラブレターの女の子といい、委員長の呼び出しといい俺マジでモテ期きてるかも。そういや、今日携帯を忘れちゃったんだよね。告白ラインとかきてたらどうしよう。

 俺は色々と考えながら部室に入った。中には委員長が可愛らしい猫柄のお弁当包みの上にお弁当箱を広げながら本を読んでいる。読書しながら食事とは行儀悪いぜ、委員長。などと思いながら向かいの席に座った。



「ちゃんと部室に来るって言うのは誰にも言わなかったわよね?」

「ああ、もちろんだよ、委員長」



 人払いってことはやっぱり告白かな。俺はわくわくしながらお弁当を食べる委員長をみつめる。でも俺は委員長の事好きなのかな? よくわからねえんだよな。デートにでも誘ってみるかなぁ。そんな俺の視線に何か勘違いしたのか、彼女はお弁当箱から肉じゃがを箸で取り俺のほうへと差し出す。



「そんなに食べたいならあげるけど……パンだけじゃ栄養が偏るわよ。はい、あーん」

「え、いいの、ありがとう」



 うおおおおお、何この男子高校生の憧れるシチュレーションNO2である『クールな同級生からあーんしてもらう』いうという夢がかなうとは!! ちなみにNO1は『学校が襲撃されたときに封印されたロボットをみつけて襲撃者を倒す』である。俺調べ。アンケート回答者一名。いや、俺ってば誰とでもそこそこ仲良く出来るんだけどむちゃくちゃ親しいやつはいないんだよね。



「ちょっと待ってください!! 刹那のご飯は私が作るって決まっているんです」



 俺が口を開けているとガラガラという音と共に扉が開いて桔梗が乱入してきた。まるで漫画かどこかで盗聴していたかのようなタイミングである。ちなみに俺のご飯を作るのは誰ってのは決まってないよ、母さんだって作ってるしね。




「あらあら、何で呼んでもいないのにあなたがいるのかしら二宮さん?」

「そっ、それは……部室は部員の共同のものですよ、私が来てもおかしいことはないと思いますよ。ですよね、刹那」

「そうだけれど、いつもはクラスでお昼を食べるか、一条君にちょっかいをかけにうちのクラスに来るあなたが、今日に限って部室に来るなんて不思議な事もあるものね、しかもまるで私の邪魔をするかのようなタイミングで乱入してくるなんて……おかしいとは思わない一条君?」



 何か良くわからないけど委員長の肉じゃがはもらえないのかな? そろそろ開けっぱなしの口が疲れてきたよ。俺はなぜかにらみ合う二人をみてふとそう思うのだった。




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