第3話幕間 二宮桔梗の独白
『あれー、桔梗のやつどうやってはいったんだろう。でもまあ、ご飯美味しかったし、メイド服も可愛かったからいっかー』
「うふふ、気に入ってもらえて何よりです」
自宅に帰宅した私はヘッドホンから聞こえてくる刹那の声に作戦が成功したのを確信した。刹那は許してくれた。朝、刹那と別れた後ショックで走りさった私は漫画喫茶に逃げ込んで、傷心しながらも、日課として盗聴器で彼の会話を聞いていたのだ。そして、委員長との話から今回の黒髪のヤンデレっぽくふるまえばいいのかという事を思いついたのだ。彼の好みになれば彼は再びわたしに振り向いてくれるのではないかと思ったのだが、予想以上の効果を発揮した。ちょっと委員長と仲が良すぎる気がするがあまり言っても嫌われてしまうだろう。委員長が目に入らないくらい私に夢中になってもらえばいいのだ。
とりあえず彼が好きだというヤンデレキャラについて調べた私だったがよくわからないので自分なりに彼の好みになるために行動をした。まずは口調を変え彼の好みの黒髪に染めてみた。そもそも茶髪やツンデレキャラも彼の好みに合わせただけなので、特に変えることに抵抗はなかった。
ネットの知識では浅いのだろう。ヤンデレキャラを理解するのは私には難しいようだ。だって、好きな人が他の女の人にデレデレしていたら嫉妬のあまり狂いそうになるのは当たり前だし、盗聴だって悪いことだとはわかっているが好きな人の事を知りたいのは当たり前の事である。そこまで異常扱いされる理由がわからなかった。ああ、でもGPSの発想はなかったなと思う。今度携帯を触る機会があったらいれてみよう。
そして何かあった時用に作っておいた彼の家の合鍵を使って、彼にひどいことを言ったお詫びに掃除をしてあげる事にした。部屋を掃除してみると彼の好みであろうエロ本をみつけ、一瞬嫉妬で本を捨ててやろうかと思ったが、これ以上彼には嫌われたくないのでなんとかこらえた。どうやら彼はメイドが好きらしい。だから彼が隠し持っているメイド服をきてみたのだが効果はあった様でよかった。
私にとって彼がすべてなのだ。学校に馴染めなかった私を救ってくれた刹那。私がピンチな時救ってくれた刹那。刹那がいなければ今の私はいなかっただろう。だから私は彼のためならなんだってやるしできるのだ。それにしても……
「えへへ、刹那が可愛いって言ってくれた。可愛いって言ってくれた……」
私は彼の言葉をかみ締める。刹那が可愛いっていってくれただけで幸せな気分になれた。ちょっと露出が高いメイド服だったが勇気をだして着てみてよかった。
お詫びという事で料理も久々に作ってあげたら本当に喜んでくれた。隠し味が効いたのだろう。ちょっと痛かったけど自分の血液が彼の一部になるということはかつてない高揚の気分に襲われた。
しかし、人がいないタイミングで学校にも行き、彼に謝罪の手紙を送ってみたのだろうがこれはだめだったみたいだ。ラインで連絡というのも考えたがやはり手紙のほうが誠意を感じて、もらえると思ったのだけど手紙については今日何の反応もなかったなと思う。もしかしたら謝罪が足りなかったのかもしれない。そういえば掃除に夢中でラインの返信もしてなかったが怒ってないだろうか? 今から送っておこう。ああ、でも声が聞こえなくなった。深夜12時いつも刹那が寝る時間だ。そろそろ眠りについたのだろう。
「おやすみなさい、刹那。また明日」
明日からもがんばって彼のためにしてあげようと思う。私は戦利品を握りしめながら思う。彼の匂いが私を満たしてくれる。これだけで幸せになれる。だれか刹那の匂いの香水を作ってくれないかとすら思う。私は幸せに包まれながらベッドに入ることにした。
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