第26話 委員長を見かけたんだけど

 いつものように桔梗より早く起きて彼女と一緒に朝食を作って、一緒に朝ごはんを食べて、一緒に登校した俺はようやく教室へとたどりついた。

 最近桔梗とばっかり一緒にいるんだけど、なんだろね、母さんも、もううちに住んじゃえばとか、家族になっちゃいなさいとか言ってるけどまずいでしょ。向こうの両親の意見もあるだろうし、常識的に考えて養子とか無理だと思うんだよね。母さんにもそう言ったら、なぜか哀れなものを見る目で見られるんだよね……

 俺が考え事をしながら席に着くと委員長が挨拶をしてくれた。



「おはよう、一条君。デートは無事終えたかしら? あの後は大丈夫だった?」

「おはよー、何言ってんの委員長。俺と桔梗は単に映画観ただけだよ、なんで命の心配されなきゃいけないのさ。ここは戦場かな?」

「戦場でも一条君は最後まで生き残りそうよね、憎まれっ子世に憚るっていうし、別に役にはたたないけどなぜか死なない、そんなキャラって映画だといるわよね」

「いやいや、そんなことないでしょ、「俺はこの戦争が終わったら、結婚するんだ」って言ってからモールス信号で恋人に告白して、かっこよく主人公をかばって死ぬイケメンキャラだよ」

「だいたいあなたモールス信号なんてできないでしょう。ちなみに私は覚えているわ。でも、あなたなら模擬戦2000回勝って、何があっても生き残りそうだけど……」

「え、モールス信号できんの? 委員長は何でも知ってるね」

「ふふ、何でもは知らない。知ってることだけとでも言って欲しいのかしら」



 委員長が意地の悪い笑みを浮かべながら言った。まあ、でも長生きしそうって嬉しいよね。不可能を可能にしてやるぜ。俺は炭酸を飲みながら思う。でも、モールス信号ができる女子高生ってすごいよね。俺もちょっと勉強してみようかな。暇だし授業中ちょっと勉強してみよう。携帯が動いたので俺は内容を確認する。桔梗からだ。



『刹那は結婚するんですか?』

『いや、しないよ。俺はまだ未成年だし相手もいないしね』



 あれおかしいな、確か盗聴器は全部外してもらったから声は聞こえないはずなんだけどな、いや、別に悪用されないのならいいなって思ったんだけど、やっぱり俺も高校生だからさ、その……ソロプレイのおかずを知られるのはちょっと恥ずかしいんだよね、だからGPSはともかく盗聴器は全部外してもらったんだよ。もしかしたら声が大きかったのかもしれない、隣のクラスまで聞こえてたらちょっと恥ずかしいな。



「ねえ、委員長……」



 俺はちょっと声を抑えようっ言おうとしたら、考え事をしているのか、彼女は窓を見ながらはかなげな顔をしていた。昨日みたのと同じ顔だ。その横顔はまるで人形のように端正だけどどこか感情が抜けていて、とても美しくて思わず魅入ってしまった。俺の視線に気づいたのか、いつものクールな表情に戻りこちらを睨みつけるように言った。




「何かしら人の顔をみて……セクハラで訴えるわよ」

「見てただけなのに!! 俺は委員長に触ってすらないんだけど!?」

「あら、知らないのかしら、セクハラっていうのは相手が不快に思ったらアウトなのよ、私に話しかけたわね、はい、セクハラ!!」

「え、ひどっ!! じゃあいいよ、話しかけないから」

「だからって無意味にラインにスタンプを送らないでくれるかしら。普通に嫌がられるわよ。しかもこのスタンプ音付きでうっとおしいんだけど」

「ごめん、話しかけたらセクハラらしいから……今の気持ちを代弁してもらったんだ」

「あ、息をしたわね、セクハラだわ」

「そこまで!! 俺死ぬしかないんだど!!」



 俺が息を止めると委員長はクスクスと笑った。ちょっと元気なかったみたいだけど元気になってくれたみたいでうれしいね。



「ごめんなさい、ちょっと言いすぎたわね。それで……、あなたは何を言おうとしたのかしら」

「いや、何でもないよ、そんな重要なことじゃないからさ」

「目は口程に物を言うって言葉をしらないかしら。すごい目で何か言いたそうにしていたけれど」

「あー。委員長の横顔がきれいだなって思っただけ」

「なっ……あなたね、そういう事いうから二宮さんが心配するのよ……」



 そういうと委員長はそっぽを向いてしまった。部屋が暑いのかな? ちょっと顔が赤くなってる気がする。照れてる委員長可愛いなぁと思っていると、また携帯が震えた。



『私と委員長どっちが可愛いですか?』



 あれ、また聞こえてたのか、どっちが可愛いかぁ。委員長はどちらかというと綺麗系だからなぁ。俺は『桔梗にきまってるじゃん』と答える。するとハートマークのスタンプが大量にこちらにきた。嬉しいけどそろそろホームルームはじまるから返信できないや。








 放課後俺は街をぶらぶらとしていた、今日は土曜なんで授業が午前中で終わるんだよね。隣に桔梗は珍しくいない。なにやら家に荷物が届くということで別行動である。時間もたっぷりあるし、バイト先のカフェで双葉ちゃんとしゃべりにでもいこうかなぁ。

 俺が足をカフェの方に向けると視界に委員長を捉えた。お、すっごい、偶然じゃん。運命かな? 



「すまない、待たせしまったかな?」

「いえ、大丈夫ですよ」



 委員長と40歳くらいのおっさんが会話していた。あっぶね、声かけるとこだった。お父さんかな? あれ? でも委員長のお父さんは小学生の頃に亡くなっているんだよね。葬式も行ったから覚えてる。じゃあ、あれは誰だろう。



「まさか、パパ活とか……」



 冗談半分でつぶやくがさすがに信憑性がなさすぎてわらってしまう。まさか脅迫とかじゃないよね……エッチな同人誌みたいに!! とはいえ最近みせる寂しそうな顔が気になる。よしつけてみるか!!


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ちなみに、パパ活とかそういうのではないです。


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