第27話 委員長に尾行がばれたんだけど
俺は忍者のように二人の後を追いかけた。いや、忍者って言っても見たことはないんだけど……まあ、こういうのって気分だよね。
緊張しがちな委員長におっさんが積極的に話しかけている感じだ。正直尾行とかしたことないから緊張するなぁ。こういう時に、桔梗がいればなぁと思う。あいつなぜかこういうのうまいんだよね。どこかで練習したの? って聞くと「うふふ、秘密ですよ」としか答えてくれないんだけどね。どっかに忍者学校とかないかなぁ?
おっさんが指をさしたのは高そうなホテルだ。委員長はうなずいて二人で入っていく。あ、ホテルっていってもエッチなホテルじゃないよ。俺たち未成年だから入れないしね。どうやらロビーでお茶をするようだ。俺は店員さんに頼んで近くの席にしてもらう。怪訝な顔をされたがどう見えているんだろうね、俺がストーカーみたいだね。
「うげっ」
メニューを見てみると思わず金額に驚いて変な声をあげてしまった。オレンジジュースが1000円くらいするんだけど……サイゼリアなら豪遊できるじゃん。客層もよく見てみると年齢層高めである。少なくとも高校生で一人のお客さんは俺しかいない。まあ、いっかー、さいわいバイト代あるしね。とりあえず委員長とおっさんの話に集中しよう。俺は聞き耳を立てる。桔梗がいればなぁ……あいつすっごい、耳がいいんだよね。隣のクラスなのに俺と委員長の会話聞こえてるんだもん。なんかアメコミのヒーローとかになれそうだよね。
「今日はわざわざ時間をとってくれてありがとう。何でも好きなものを頼んでくれていいからね」
「はい、ありがとうございます、では……そうですね、アイスティーでお願いします」
そういって委員長はぎこちない笑顔を浮かべながらおっさんに返事をした。いつもの教室でのクールっぽさはなく笑顔で接している。だけどあの笑顔からは何の感情も見つける事はできなかった。端正な顔も相まって本当に人形みたいである。こんな委員長なんか嫌だな……なぜか俺はそう思ってしまった。
「学校はどうかな? どんな友達がいるんだい?」
「そうですね、何を言ってもへこまないポジティブサイコパスな男の子とその男の子を大好きなヤンデレな女の子とよく話してますが、中々刺激的で楽しいですよ」
「え? ポジティブサイコパス? ヤンデレ? 最近の子は難しい言葉を使うね……」
委員長の言葉におっさん若干ひいたように相槌を打った。たぶんポジティブサイコパスは俺のことだと思うんだけど、ヤンデレってだれだろうね? てか委員長がじっくり話してるのって俺と桔梗くらいかなって思ったけど意外と知り合いがいるんだなぁ……
そしてぎこちないながら会話が続く。例えばそれは天気の話だったり、おっさんの仕事の話だったりと、あたりさわりのない話題ばかりだ。そしてきりが良くなったところでおっさんは決意をきめたように口を開く。
「私のことは何て呼んでくれてもいい、その……馴れたらお義父さんと呼んでくれると嬉しいんだが……無理は言わないよ。その……私は君をアリスちゃんと呼んでもいいだろうか?」
「アリスって呼ばないで!! アリスって呼んででいいのは……」
「すまない……馴れなれしすぎたかな……」
「こちらこそ声を荒げてすいません……今日は帰ります」
おっさんの言葉に大声を上げた委員長だったがはっとしたようにしておっさんに謝って席を立ち出口をへと歩いてきた。それがいきなりだったため俺と目があってしまう。やっべえ……
「刹那、なんでここに……もしかして話を聞いてたのかしら」
「ちょっと待って!!」
委員長は氷のような目で俺を睨むとそのままホテルを出て行ってしまう。追いかけないと!! ああ、でも会計しないと食い逃げになっちゃうよ。俺が千円をテーブルにおいて、急いで走りだそうとすると背後からおっさんの声が引き留める。
「待ってくれ、君は彼女の友人かな……?」
「はい、委員長の……アリスさんの友人です」
「そうか……君は名前で呼ぶのを認められているんだね……ここは私が払っておこう、彼女を追いかけてあげてくれないか? そして彼女の話を聞いてあげてほしい……」
そういっておっさんは少し悲しそうに笑った。なんだかわからないがおごってくれるようだ。これもパパ活かな? と思いながら俺は委員長を追いかけた。
ホテルを出ると委員長は俺を待ち構えるかのように気まずそうな顔をして立っていた。そして俺と目が合うとゆっくりと口を開いた。
「さっきはごめんなさい、気が動転してしまって……刹那のことだから心配してついてくれたのでしょう? 最近の私はあなたから見てやっぱり、おかしかったかしら」
「うん、時々変だなって思ったよ。なんていうか委員長らしくないっていうかさ……」
もっと迷惑がられるかと思ったが委員長は思ったよりも俺には攻撃的ではないようだ。昔の悪い癖をだしてしまったかとちょっと後悔してしまったが良かった……俺の返答に彼女はまた憂いに満ちた顔を浮かべる。だから俺は思わず口を開いてしまった。
「なあ、委員長大丈夫? 俺で良かったら力を貸すよ」
「唐突ね……でも結構よ、私は別にへこんでないし」
「委員長いってたじゃん、目は口程に物を言うってさ。俺にはへこんでるようにしかみえないんだけど。俺さ友達は大事にしようって決めているんだ。だから俺は何度だって大丈夫って聞くよ?」
「もう……あなたは昔から人のピンチにだけはするどいのよね……」
委員長は一瞬目を見開いたかと思うとあきれたかのようにため息をついた。そして俺の方をみてほほ笑みながら言った。
「一条君ちょっと江の島までつきあってくれないかしら?」
「いいよー、デートのお誘いだね。だいたい二時間かーちょっとした小旅行だね」
「あっさりオッケーするのね。お金はあるかしら、今ならといちで貸してあげてもいいわよ。ちなみにデートではないわ」
「当たり前でしょ、委員長の力になりたいんだよ。といちかぁ、なら弁護士に相談しなきゃ。違法な利子なら無効化できるんだよ。ちなみにお金はカフェのバイト代があるから大丈夫。むしろ俺が貸そうか? そのかわりツンデレっぽい言葉言ってくれない?」
「刹那の馬鹿、ストーカーかしら? まだ借りてないから前金として半分だけサービスしてあげるわね」
「ツンデレのツンだけだったー!! ただの罵倒じゃん!!」
軽口を叩きながら、俺たちは駅へと向おうとした瞬間に桔梗から連絡がきた。
『今日はあなたにサプライズがあります。特別な格好で料理をしてあげますよ。何時くらいに帰ってきますか?』
という文字と同時に黒桜の格好をした桔梗の写真が送られてきた。うおおお、谷間がやべええ!! でも今は委員長が心配なんだよね。ごめん桔梗。俺は急いで彼女に返信をした。
『今日は遅くなる、多分晩御飯も食べて帰ると思う。ごめんね』
そうして俺たちは江の島に逃避行をするのであった。なんか携帯がすっごい通知が来ているんだけど歩きスマホはマナー違反だからね。電車に乗ったら確認する事にしよう。
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