第25話 委員長の様子がおかしいんだけど

 休日にデパートの本屋に行くと、俺は見知った顔が立ち読みをしているのをみかけたので声をかけることにした。背後にこっそりと忍び寄る。



「立ち読みはいけなーいんだ」



 俺は委員長の肩をトントンと叩いて声をかけた。彼女は一瞬驚いたように目を見開いたがこちらを冷たい目で見て一言。



「誰か、不審者です!! 助けてください」

「待って、俺だよ、一条刹那だよ。委員長!!」



 俺の言葉にこちらを下から上までみて再度口を開く。



「誰か変態です!! 助けてください」

「ランクアップした? いつも隣の席で会話してるじゃん!! マイネームイズ刹那一条オーケー?」

「隣の席で会話しているからと言ってあなたが変態ではないという方程式にはならないわよ、刹那。それであなたは何か本を買いに来たのかしら、おススメがあったら教えてほしいのだけれど」



 そう言って彼女は教室の時のように微笑んだ。毒を吐いてからの笑顔たまらないね!! 今日の委員長はレースのあしらわれたワンピース姿だ。蒼い目と相まって何か神秘的な感じがしていいなぁ。あと細身でスタイルがいいんだよね。足が長くてモデルみたい。



「いやー、桔梗がトイレに行っているから暇つぶしに本屋にきたんだよね。そしたら委員長がいたんで声をかけたんだ」

「あなた……他の女の子とのデートを抜け出して、私に声をかけにきたの……相変わらず地雷原をタップダンスしているわね」

「シャールウィーダンス?」

「ノーサンキューよ、あいにく私はあなたと違って自殺願望はないの」



 そう言って委員長は溜息をついた。ダンスのお誘いを断られてしまった。それにしても女の子といっても幼馴染の桔梗だよ、これっていつも一緒にいるけどデートなのかなぁ。ちなみに俺も自殺願望はないよ、人生楽しいからね。



「刹那……何で委員長と一緒にいるんですか?」

「ほら……来ちゃったじゃない」



 声の方を振り向くと、虫の様に感情のない目をした桔梗がいた。なんだろね、虫ポケモンってかわいいよね。俺はスピアーとか好きなんだよね。ダブルニードル強くない? まあ、エスパータイプに瞬殺されるんだけど。



「勘違いしないでほしいのだけれど、彼と会ったのは偶然よ、あなたたちのデートを邪魔する気はないから安心しなさいな」

「あ、今の勘違いしないでってすっごいツンデレっぽい。委員長もう一回言って」

「刹那……私の命がかかってるから黙っててくれるかしら……」

「刹那って呼んだ!! いつの間にそんなに仲良くなったんですか? でもデート……そうですよね、はたから見たら私達デートしてるように見えますよね。どう思います、刹那?」

「どうって……俺達家族みたいなもんだろ。昔に俺がデートかな? って言ったら自分で言ってたじゃん『何を勘違いしてるのよ、私たちは家族みたいなもんなんだから、調子にのらないでよね』って」

「うう……確かにいいましたけど、確かにいいましたけどぉぉぉぉ。あれは黒歴史なんです。忘れてくださいぃぃぃぃ」



 俺の言葉に呻く桔梗。黒歴史って誰にでもあるよね、俺の中学の頃も友達に「俺は黒竜の騎士である」とか言って木刀振り回してたやつもいたな。あいつまだ厨二病なのかなぁ。久しぶりに連絡来て彼女できたから文化祭こない? とか言われたんだよね。俺が昔を思い出していると何やら委員長が思い詰めた顔でつぶやいた。



「家族か……ねえ、一条君、家族ってなにかしらね?」



 その時の顔が彼女にしてはあまりにも儚げで美しく俺は一瞬見惚れてしまった。すっごい哲学的なこと聞いてくるなぁ。でも家族ってなんだろね、血のつながり……だけじゃないよね。養子とかでも幸せな人いるしさ。



「きっと愛情で結ばれた人たちの事じゃない? だから恋人とかは家族予備軍みたいな感じだよね」

「じゃあ、愛って何なのかしら……ごめんなさい、変な事を聞いてしまったわね。忘れてちょうだい」



 何かを言いかけたが、言葉の途中で委員長はいつものクールな表情に戻ってしまった。だから俺はこれ以上そのことに関してつっ込むことはできなかった。でも一瞬だけど、彼女の苦悩をみた気がしたんだ。



「せーつーなー、何で委員長ばっかりみてるんですか。今日は私とデートなんですからね、早く行きましょう」

「ふふ、本当に仲良しね、お邪魔しちゃいけないし、私はそろそろ帰るわね」



 委員長はそういうと本を本棚に戻し、俺達に背を向けて店を出ようとする。彼女が読んでいた本は『誰かを愛するという事』という本だった。難しそうな本だなぁ……俺が委員長の背中をみていると腕に柔らかい感触を感じた。お、これたぶんおっぱいだ。あんまり桔梗を放置しても申し訳ないよね。だから最後に一言だけ声をかける。



「アリス、何かあったら相談してくれたら嬉しいな」

「こんな時だけ鋭いのね……ええ、その時は力を借りるかもしれないわ」



 そう言って彼女はこちらを振り向かずそのまま歩いて行った。その後ろ姿を見届けてから俺は頬を膨らませている桔梗に声をかける。



「ごめんごめん、じゃあいこっか。映画観よ」

「ええ、そろそろ時間ですからね、ポップコーン買っときますね。刹那はキャラメル味が好きですもんね」



 ちなみに俺たちが観に行くのは、ソシャゲの元になった作品のゲームの劇場版である。あのゲームマジで星5でないんだけど……沖田さん……



「おー、むっちゃ楽しみ!! 桜ってエロいよね!!」

「桜……今度は桜の格好でもしましょうか……」



 俺が声をかけると虫のような目で委員長をみていた桔梗が笑顔になった。これはもしかして桔梗のコスプレをみれるかもしれない。俺が桜の恰好をした桔梗の姿を想像してにやにやしていると真面目な顔をして桔梗が口を開いた。




「刹那……委員長が心配なんですか?」

「当たり前だよ、桔梗も委員長も俺にとっては大事だからね、死んでも助ようって決めてるんだ」

「ふふ、そういう刹那が私は大好きなんです。いつか、私が一番、二番は委員長って言わせてみますからね。あと委員長がピンチだからと言って私の事を放置しないでくださいね、もし、そんなことがおきたら……私どうにかなっちゃうかもしれないですから」

「もちろん、そうなったら桔梗の事も助けるよ」

「ありがとうございます。でもまあ、委員長には借りがありますし、困ったら私も手を貸しますから言ってくださいね」



 俺たちは委員長に関して少し話すと、映画をみにいくことにした。それにしてもどうにかなっちゃうってどうなるんだろうね、ポケモンみたいに進化するのかな?


-----------------------------------------------------------------------------------------------


委員長編のはじまりです。



面白いなって思ったら、是非作品フォロー、レビュー、コメント、応援の方をいただけると大変モチベがあがるのでしていただけると嬉しいです。

特にレビューをいただけると無茶苦茶モチベが上がりますのでよかったらお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る