第44話 桔梗とパンケーキを食べたんだけど

 土曜日の朝に、俺は品川駅にいた。いや、桔梗と一緒にいこうって話をしたら、こういうのは待ち合わせもデートのうちって言われたんだよね。俺は時計をみる。今は11時で、待ち合わせの一時間前である。やっぱりこういうのは、男がリードすべきだと思ったから、事前に場所の下見に来たんだ。



「あれって……」



 待ち合わせの場所も、確認しようかと思っていたら、窓ガラスの前で、髪型を整えている桔梗がいた。あいつ何やってんの? まだ待ち合わせまで、むっちゃ時間あるんだけど……



「桔梗なにやってんの?」

「え? 刹那!? なんでここにいるんですか?」

「え、今日の下見だけど……そういう桔梗はなんで……」

「その……今日が楽しみすぎて、つい、いてもたってもいられず……その、今日の服装はどうですか?」



 そういうと彼女は照れたように顔を赤くして笑った。今日の桔梗はロングスカートのワンピースにニットセーターをきている。黒髪といい、一見清楚だけど……その胸で清楚系は無理ですよ!! 俺は思わず顔ではなく強調された胸をみてしまう。



「すごい似合ってるよ、俺の好みドンピシャだよ!!」



 俺は興奮あまりちょっと早口で言ってしまった。だってすごくない? これさ、俺が家で検索していた、彼女に着せたいなぁって、一人でつぶやいていた女の子の服装と一緒だよ。偶然ってすごいよね。まるで検索履歴をみていたかのような正確さに、俺は思わずテンションが上がりまくってしまった。やっぱり幼馴染だから好みとか似るのかなぁ。



「喜んでくれて嬉しいです!! ちょっと早いですが、せっかく合流しましたし、パンケーキを食べに行きませんか?」

「そうだね、せっかくだし行こっか」



 そうして俺たちはちょっと早いけどパンケーキを食べに行くのであった。下見してないけど、まあ、せっかく合流したしいっかー。



 お店に入った俺と桔梗は、それぞれの料理を目の前にテンションが上がっている。朝ごはん兼、昼ご飯のエッグベネディクトに、デザートを兼ね備えたパンケーキである。このお店のパンケーキはレモンリコッタパンケーキだそうだ。

 地元では食べれないような料理を、俺たちは、しばし、会話も忘れて楽しむ。リコッタってなんだかよくわからないけどおいしいね。

 薄いパンケーキなんだけど、生地の味がしっかりしているので、すごいおいしい。トッピングの果物と、メイプルシロップのおかげで飽きが来ないように工夫がされているのもポイントが高い。



「んー!」



 桔梗の方をみると、彼女も味を堪能しているのか、幸せそうな顔をして食べている。俺もつい嬉しくなって、彼女をみていると、目があった。そして……



「もう……少しだけですよ。あーん」



 そういって彼女は、自分の分のパンケーキを、一口サイズに切って俺に差し出した。なんか昔を思い出すよね。かつては、俺の方が世話を焼いていたんだけど、すっかり、立場が逆転したね。俺はお言葉に甘えて一口いただく。うん、美味しい。あとで双葉ちゃんに、リコッタパンケーキについて聞いてみよう。



「こんなことしていると、恋人みたいですね。私たちは周りからどう見えてるんでしょうね」



 彼女は、少し恥ずかしそうに言った。確かに、俺たちはもう、高校生だからね、付き合っていない異性にしては、距離感が近いのかもしれない。だから、安心させてあげようと思う。



「大丈夫だよ、俺たちは、仲の良い幼馴染にしかみえないって」

「うー、なんでそういうことを言うんですか!! 恋人にみえるかもしれないじゃないですか」

「だって、中学の頃、俺がそう言ったら『何を勘違いしているのよ、私たちはただの幼馴染でしょう? いわば、親戚みたいなものよ』って、桔梗が言ってたじゃん。安心してよ、俺は過去の失敗から学ぶからね。同じ勘違いはしないよ」

「過去の私の馬鹿……でも、ダメです……正妻戦争に勝つためには、このままではいけないんです」



 なぜか桔梗は、落ち込んだようになってしまう。どうしたんだろうね。なんか、戦争とか言っているけど、なんか事件に巻き込まれるのかな? だったら、いつでも、助けれるように体を鍛えといて、桔梗を守らないとね。ジムでも通うかなぁ。

 脱力したせいか、たまたまか、桔梗の手からフォークが落ちて、メイプルシロップの池に飛び込んでしまう。そしてはねたシロップが、俺の方に飛んできた。



「ああ、ごめんなさい、大丈夫ですか。良かったらこれを使ってください。」

「桔梗ありがとうって……そのハンカチの生地みたことあるなぁ……あ、俺の無くしたパンツとおんなじ柄だ!!」

「ああ、すいません……これはですね……その……」

「やっぱり幼馴染だからか、好きなものの趣味あうね」

「そ、そうなんですよ、そろそろ食べ終わりましたし、水族館に行きましょう」



 そう言うと何やら慌てだした桔梗は、さっさとパンケーキを食べて終えてしまうのであった。やっぱり幼馴染ってすごいなぁ。一緒にいるからか好みも似るんだね。





-----------------------------------------------------------------------------------------------


面白いなって思ったら、是非作品フォロー、レビュー、コメント、応援の方をいただけると大変モチベがあがるのでしていただけると嬉しいです。


特にレビューをいただけると無茶苦茶モチベが上がりますのでよかったらお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る