第41話 双葉ちゃんに料理を教わったんだけど
着替えた俺たちはカフェのキッチンでパンケーキを作る練習をする。着替え終わった双葉ちゃんはなぜか俺をみると顔を真っ赤にしたけど大丈夫かな? 熱とかじゃないといいんだけど。
カフェの制服にエプロンを付けた双葉ちゃん可愛らしい。彼女と一緒にキッチンに立つのは初めてである。いつも双葉ちゃんはホールだからなぁ、でもさ、ひとつ気になることがあるんだよね。
「そういえば、双葉ちゃん料理できるの? 知識はあるのはわかるんだけど……」
「失礼ぃぃぃぃ!! 料理ができないのに私がわざわざドヤ顔で調味料に関して語っていたと思っていたんですか!! 例えるならばファンタジー小説で主人公に、得意気に魔法について話すけどそのあと圧倒されるかませ犬扱いされた気分です!! そこまでいわれたら仕方ないですね。一条先輩は卵焼きは甘いものとしょっぱいのどちらが好きですか?」
「甘い奴だけど……あと半熟が好きかな」
「さりげに注文を増やしましたね、まあ、いいでしょう」
そういうと彼女はさっと卵を割って慣れた手つきで料理をする。うおお、すっごいきれいな卵焼きができた!! というかフライパン捌きとか、すごいんだけど……俺がびっくりしていると彼女はどや顔で俺に一口サイズに切られた卵焼きを差し出してきた。いい匂いに誘われて俺は手を伸ばす。え、なにこれむちゃくちゃうまいんだけど!!
「ふふん、どうですか。私の料理は? 伊達に小学生高学年からお父さんに習ってはいませんよ、ちなみに和洋中全てある程度できます」
「すごいよ、双葉ちゃん!! 例えるならば、異世界転生小説で、え、なんでこんな雑魚をパーティーに入れてんの? 追放しようぜってみんなが思っていたキャラが本当は最強だった!! ていうのを目撃した気分だよ」
「私の評価ぁぁぁぁぁぁ!! 失礼すぎませんか? 私を何だと思っているんですか!! もう料理を教えてませんよ」
ぷんぷんと怒っている双葉ちゃんに俺は謝る。でも本当にすごいなと思う。もうプロ並みじゃんと思う。カフェに行くまでの道で彼女がはなしていた夢を俺は思い出した。彼女は自分の夢のために頑張ってきたのだろう。この腕前は一朝一夕で身につくものではない。
風船のように頬を膨らませている彼女が俺には自分よりはるかに立派な人間に見えた。ただ、高校生活を生きている俺よりも立派に見える。俺には彼女のような夢はないけれど自分のできるかぎりのサポートはしたいなって思ったんだ。
「ごめんごめん、でも、本当にすごいと思うよ、だから改め……俺に料理を教えてくれませんか? 双葉先生」
「先生……」
俺の言葉に彼女はきょとんとしていたが、満面にの笑みを浮かべて、嬉しそうに答えた。
「ふふん、先生ですか……そこまでいわれては仕方ないですね、教えてあげましょう」
「チョロいね……将来変な男に騙されないようにね」
「失礼ぃぃぃぃ!! 上げて落とすのやめてくれません!? それに今はポジティブなだけの頭の悪い男にいいように扱われています……」
彼女の言葉は最後の方は聞こえなかったけれど、何を言っていたんだろうね。そうして双葉先生による料理教室が始まった。俺は彼女に言われた改善点を修正しながら料理をする。そうしてようやく料理が完成する。
目の前のパンケーキを一口食べると俺は生地の柔らかさと甘みが口に広がった。うおおおお、上達してる!! 確かに店長のパンケーキには劣るけれど、双葉ちゃんのパンケーキにも劣るけれど、自分の中での最高記録が更新された感じだ。後はホワイトデーまでに努力をすればいいだろう。
「一条先輩どうでしたかー、今回はうまくできました?」
「うん、すごい。美味しいくなった!! 双葉ちゃんは人に教えるのがすごいうまいね。これなら料理教室の先生にもなれると思うよ」
「今、そういうことを言うのはずるいです……」
俺の言葉になぜか彼女は頬を膨らませた。でもその表情はなぜか嬉しそうだった。どうしたんだろ? ツンデレごっこかな?
「そうだ、お礼と言ってはなんだけど双葉ちゃんなんかしてほしいことあったら教えてね、できる限り頑張るからさ」
「本当ですか、じゃあ……」
俺の言葉に彼女は一瞬考えてからこう言った。
「その……刹那先輩ってよんでもいいですか?」
「え、いいよ。なんか距離が縮まった感じでいいね。じゃあ、俺は双葉って呼ぶね」
「はい、これからもよろしくお願いしますね、刹那先輩」
「うん、こっちこそ、よろしくね。双葉」
「えへへ、名前で呼び合うってなんか特別って感じがしますね」
「そうだね、なんか兄妹みたい……刹那お兄ちゃんでもいいよ」
「勘違いぃぃぃ!! うう、また上から下に落とされました……例えるならば乙女ゲーでグットエンドだと思ったら、ノーマルエンドだった気分です」
なぜかへこんでいる双葉ちゃんだったけれど、俺にはその顔が不思議と大人びてみえた。夜も遅いということで食べきれなかったパンケーキを包んでもらって俺たちは解散した。
「ただいまー」
俺は誰もいない家の玄関の扉をあけて挨拶をする、これはほとんど習慣に近い。そしてそのまま、扉を部屋の扉を開けて電気をつける。
「おかえりなさい、刹那」
「うおおおおおお、って桔梗じゃん。どうしたの?」
真っ暗な部屋で彼女は瞑想でもしていたのだろうか。メイド服の少女がいると思ったが桔梗だった。桔梗は顔を難しい顔をしていたが俺をみると満面の笑みを浮かべた。ちょっとびっくりしたよね。また鍵をかけわすれてしまったのだろうか……
「こんな遅くまでどこに行ってたんですか……寂しくて会いに来ちゃったんですけどだめでしたか?」
「いやいや、全然いいんだけど……おお」
「ちょっと刹那を充電させてください」
そしてちょっとすねたような顔をしてから桔梗は俺に抱き着く。なんで部屋にいるのとか? なんで電気つけないの? 暗闇でこわくなかった? とか色々聞きたいことはあるけど抱き着かれた時の胸の柔らかさに俺はどうでもよくなる。やばい甘い匂いと柔らかさせ顔がにやけちゃう。彼女はなぜか俺の匂い嗅いで一言。
「なにやら、ほかの女の匂いがしますね。刹那……もう一度聞きます。どこに行っていたのですか?」
そう尋ねる彼女の目には先ほどまでの喜びの色はなく、まるで虫のように感情がなかった。
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