口は悪いが巨乳で美人な幼馴染に「別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!!」って言われたから「俺もだよ」って答えたらヤンデレになってしまった。
第40話 先輩とパンケーキをつくることになりました。
第40話 先輩とパンケーキをつくることになりました。
私は少し緊張しながらカフェのドアを開ける。もちろん、父に許可はとってあるのだけれど、やたら嬉しそうなラインが返ってきたので何か察したのだろう。帰ったら絶対いじられるなぁ。とはいえ、異性と二人っきりといのは少し緊張する。それが気になっている相手ならなおのことだ……
「なんか誰もいないカフェって新鮮だね、毎日これくらいだったら仕事が楽で良いのになぁ……」
「良くないですぅぅぅ、つぶれますよね? うちの家計がピンチになっちゃいますよね? 例えるならば、ハリウッド映画に登場するスラム街の住人のような生活になってしまいます!!」
「現代の日本なら生活保護があるから大丈夫だよ、でも、元気になってよかった」
そういうと一条先輩はへらへらと何も考えていないかのような笑みを浮かべた。だけど私は知っている、この人は、人のマイナスの感情にはやたら察しが良いのだ。今回もちょっと緊張していた私をなごませるための軽口だろう。まったくこの人は……私は優しい目で彼を見つめる。
「待ってるからさ、行ってきていいよ」
「え? 行ってくるってどこにですか?」
「いや、トイレだけど……さっき我慢してなかった? なんかもじもじしてたよね。我慢は体に良くないよ」
「失礼ぃぃぃぃ!! 可愛い女の子はトイレなんてしないんです。というかそういう事を女性に言ってはだめですよ!!」
前言撤回、この人は頭がおかしいだけである。私はため息をついて着替えに向かう。さすがにお洒落をした格好で料理はできない。でも、この服は一条先輩に可愛いっていってもらえた……思わず顔がにやける。
「ゆっくりしていってね」
「着替えですぅぅぅぅぅ!!! 例えるならば無罪の罪で断罪される聖女になった気分です」
私は一条先輩に叫び返して更衣室へと入った。私はなんだかんだどきどきしている胸をおさえながら二人の友人に相談のラインをする。
『話のながれで、一条先輩と二人っきりでカフェで料理をすることになったんだけど、どうすればいいかな? 先輩に私を意識してもらいたいんだけど……』
『裸エプロンでせまって料理の代わりに双葉が食べてもらえば?』
『あの先輩はやめた方がいいと思う、油断させて『ゴールド・エクスペリエンス』って言って殴りかかるべき』
『二人ともなんでそんなに適当なの!?』
おかしい……仲直りをしたはずなのに二人が冷たい……なにかやらかしてしまったのかと、私があたふたしていると追加でラインが来る。
『リア充は……』
『死すべし!!』
うわぁぁぁぁぁ、絶対ホワイトデーの女子会を断ったのを根に持たれている。単なるバイトなのに……あ、でも一条先輩もいるから実質デートかもしれない。などと思うとつい顔がニヤニヤしてしまう。それと余計一条先輩を意識してしまう。
先ほどはつい夢を語ってしまったが変に思われていないだろうか、私は高校一年生だ。この年で夢を……進路が決まっているというとよく怪訝な顔をされるものだ。もちろんその気持ちもわかる。だけど、私は自分の天職に出会ってしまったのだ。
お父さんは勘違いしているが、カフェの仕事のお手伝いは本当に好きでやっているのだ。学校で友達と話すのも楽しいけれど……放課後みんなで遊んだりするのも楽しいけれど……何よりもカフェでお父さんの料理を食べて、お客さんが笑顔になるのをみるのがなによりも好きなのだ。お父さんがどや顔で新商品を出してはみんなで感想を言い合うのが何よりも好きなのだ。
だから私もそんな風に誰かを笑顔にできるようにカフェで働きたいと思う。みんなが笑顔になるような料理を広めたいと思う。そして誰かが一緒に私といてくれたらそんな幸せなことはないだろう。まだ私の隣にだれがいるのかはわからないけれど……
「双葉ちゃんこっちは準備できたよー」
ああ、隣に誰かがいたらなと思ったときに一瞬一条先輩が思い浮かんでしまった。私は必死に頭をふる。今のは声が聞こえたから……そう声がきこえたからにすぎないのだ。二人でいる未来の姿を妄想して顔がにやけかえたがあんまり待たせても申し訳ないし、何よりもトイレだと思われるのが不愉快である。私はキッチンに急いで向かった。
でも、もしも一条先輩が私の夢を肯定してくれたら本当に嬉しいし、もっと頑張れると思うのだ。
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