第24話 バイトをすることになったんだけど エピローグ


 学校の放課後俺はいつものカフェにいた。今回はバイトとしてではなく客として来ている。正面には双葉ちゃんがニコニコ幸せそうな笑みを浮かべながら紅茶を飲んでいる。



「この前のお礼に美味しいお店につれていってくれるって聞いてたんだけど……」

「ええ、だから私の知っている中で一番おいしい、お父さんのお店に連れてきたんですよ、例えるならば食レポで絶賛されるような素敵なお店です」

「とりあえず食べログの点数5にしとくね」



 俺はコーヒーを飲みながらスマホを操作する。「ケーキと紅茶、コーヒーが美味しいお店です。看板娘の双葉という女の子をからかうと、とても面白い反応をしてくれます」よし、これでいいかな。俺は満足げにうなずく。

 今日はこの前のお礼がしたいといわれ呼び出されたのである。ちなみに桔梗も誘おうとしたんだけど、双葉ちゃんが「すいません、例えるならばSF映画でエイリアンに捕食されるモブの気分になるので勘弁してください」と言われてしまったのだ。そのかわり桔梗には焼き菓子の詰め合わせをプレゼントしたいという事でお土産として受け取っている。



「その……この間はありがとうございました。おかげで二人とは仲直りできました」

「そっかー、よかったね。あ、このモンブランいつもと違うね。美味しいなぁ。栗とクリーム変わってない?」

「会話のキャッチボールゥゥゥ!! もっと突っ込んで聞いてくださいよ!? もう、本当に感謝してるんですからね……例えるならばその……あの……恋愛映画で言う主人公に恋したヒロインみたいな気分です。ちなみにそのモンブランはお父さんが一条先輩のために特別につくったやつですよ!! 例えるならばガンダムで言う専用機を入手した気分ですね」

「二連続で来た!! ちなみにガンダムは00が好きだよ。主人公と同じ名前なんだよね、親近感湧いちゃう!!」

「そっちを拾った!? できればもう片方の方を拾って欲し……いや、拾われても恥ずかしいですね」



 双葉ちゃんはなぜか顔を赤らめてもじもじしながら言った。大丈夫かな。トイレ我慢してない? 俺はちょっと漏れそう。コーヒー飲みすぎたかな。



「ちょっと聞きたいんですけど、あの目から感情が消える怖い人とはどういう関係なんですか?」

「うーん、なんだろ……幼馴染であり家族のような感じかな。FGOで例えるならばイアソンとメディアみたいな感じかな」

「だいさんじぃぃぃぃーー!! ロクな未来が待ってませんよ!! でも恋人ではないんですね」

「そうですね、今は違いますが、未来なんてどうなるかわかりませんよね。あとギリシャ神話のイアソンとメディアは夫婦ですよ」

「ひぃぃぃぃ!!」

「あれ、桔梗じゃん。偶然だね」



 俺はこちらに声をかけてきた桔梗に挨拶をする。まあ、桔梗もここの常連だし、いてもおかしくないよね。そして彼女は自然と俺の隣の席にすわった。その行動をみて双葉ちゃんが何故かまじかよって顔をしている。どうしたんだろうね?



「その……あなたもありがとうございました……」

「気にしないでください、双葉ちゃんは刹那にとって妹みたいなものらしいですからね。あなたなんて他人行儀ではなく、私の事はお姉ちゃんって呼んでくれていいんですよ」

「え、何を言ってるんですか、この人!? 私達話すの初めてですよね!?」

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね。桔梗さ、よかったらモンブラン食べていていいよ。無茶苦茶美味しいよ」

「いやいや、待ってください、私を一人にしないでください。いやマジで!! 八つ裂きにされちゃいます!!」

「私がいるじゃないですか、一人ではないですよ。じっくりお話をしましょう、私も双葉ちゃんって呼んでいいですか?」



 一人にしては申し訳ないかなって我慢していたけど桔梗がきたので席を立つ。まあ、桔梗も双葉ちゃんもコミュ力高いから大丈夫でしょ。

 俺がトイレから出るとたまたま委員長がカフェにいるのが見えた。珍しく、一人ではなく、大人二人と一緒だ。昔授業参観でみたことがあるから覚えているんだけど、多分、委員長のお母さんと、もう一人は誰だろう。謎のおっさんがいる。

 謎のおっさんと委員長のお母さんが楽しそうにしゃべって、時々会話を振られる委員長は愛想笑いをしているようだ。会話が途切れた一瞬彼女が窓をみた。その時の顔はとても儚げで、とても美しいと思ったんだ。俺はあの表情をみたことがあった。いつだっけな。しかし俺の思考は店内に響く悲鳴に遮断される。



「一条先輩はやくきてください、例えるならば歴史映画で処刑台に連れていかれる死刑囚になった気分なんですぅぅ」

「面白い事をいいますね、双葉ちゃん。あ、このモンブラン美味しいですね。ふふふ、刹那と間接キスですね。もう、彼ったら積極的ですよね。これはいわば、結婚式での誓いのキスみたいなものと思いませんか?」

「やっぱりこの人もキャッチボールしてくれないぃぃ」



 さっきみた委員長は幻覚だったのか、また、委員長は愛想笑いをうかべていた。まあ、声をかけれる雰囲気でもないしね。俺は自分の席に戻ることにした。

 でもあの一瞬みせた委員長の顔は何か印象的だった。ああ、思い出した。あの顔は昔に、委員長が一週間休んで学校に出てきた直後もあんな顔をしていた。つらい事が会った時の顔だ。もし、彼女が助けを求めてきたら絶対に力になろうと思う。そして助けを求めなくても声をかけようと思う。俺はそう決めて双葉ちゃんと桔梗のいる席に戻った。席に戻って飲んだコーヒーは少し苦かった。




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