第46話 桔梗と解散したんだけど
「二人ともどうしたんですか、せっかくのデートなのに、喧嘩なんてしたら台無しですよ」
「なによ、あんた!! あんたには関係ないでしょ」
「はは、確かにね、でもさ、困ってる人がいたら助けなさいって学校で習わなかったな? ねえ、少年」
「え、うん……」
二人に声をかけた桔梗に少女が噛みつくようににらみつける。俺は桔梗と目を合わせてうなずいて、少年に声をかけた。
にらみつけている少女を、桔梗はほほえましいものをみるような顔をしながらで話を聞いている。そして、少女の耳元に何か囁いた。すると少女は、一瞬少年をみて、そのままトマトのように顔を真っ赤にしてうつむいてしまった・
俺は少年と一緒にその光景をみてきょとんとして、顔を合わせて首をかしげる。
「ねえ、お兄ちゃん。あの胸の大きいおねーちゃんは、何を言ったのかな?」
「さあ、よくわからないけど、エッチなことじゃない?」
「エッチなこと……」
少年はオウム返しにつぶやくと、少女と同様に顔を真っ赤にした。何を考えてるんだろうね。俺がこの年のころは、女の子のスカートの中がきになってしょうがなかったけど。
「だって、あのバカ、私の気持ちに、全然きづかないんだもん」
「いいですか、いくら恥ずかしいからって、そんな口を悪くしていると、将来後悔しますよ、少しは素直になったほうがいいです。じゃないと、よくわからないクールそうな女に奪われそうになります」
「うう……よくわからないけど、なんか無茶苦茶説得力があるわね……でも、どうすればいいのかしら……」
なにやら呻いている少女を、かがんだ桔梗が何やら励ましている。仲良くなるの早すぎじゃない? やっぱり女子はすごいなぁと思う。
「わかったわ。お姉ちゃん!! 私もがんばるから、お姉ちゃんも頑張ってね」
「ええ、お互い頑張りましょう」
何を話したのかわからないけれど、あの少女と桔梗は何やら意気投合したようだ、何を話したんだろうね。よくわからないけど、仲良くなったらないっかー。そして少女は、少年のそばにきて、頭を下げた。
「悟、さっきはごめんなさい、私一緒に水族館にこれてうれしくて……でも恥ずかしくて……」
「大丈夫だよ、僕も一緒に来れて楽しかったから。デートじゃなかった……一緒にお出かけできて楽しかったよ」
「デートよ、これはデートなの! イルカショーはじまっちゃうから早く行きましょ」
「うん!! デートだぁ。大好きだよ!!」
「え……ああ、うん。私も大好き……早く行きましょ。お姉ちゃんもうまくいくといいね」
そういうと少女は顔を真っ赤にしたまま、こちらに見つめてから、桔梗に頭をさげた。そして、少女と少年は、手をつないで仲良さそうにあるいていった。
「あの二人うまくいくといいなぁ……私も、もっと早く素直になったら変わったのかな……」
走っていく二人を見送りながら桔梗はなぜか、すがるような目で見つめていた。心配そうな彼女をみて、俺は安心させるように微笑む。
「大丈夫じゃない、言葉にすれば想いは通じると思うよ。よくわからないし、俺に言われても嬉しくないかもしれないけど、俺は今の桔梗も、昔の桔梗も好きだよ」
「刹那……ありがとうございます……例えばの話なんですが、刹那は、ずっと友達だったり、幼馴染だったりした人が、実は恋愛感情を持っているって知ったらどう思います?
「え、びっくりするんじゃない? だって、俺なんて好きになる人いないだろうし」
「刹那には、いいところはたくさんありますよ、だから俺なんかって言わないでください」
自虐的な俺の言葉に桔梗は、珍しく声を荒げた。桔梗が大きい声を出すのって珍しいんだよね、でもこれって、俺のために怒ってくれていたんだよね、ちょっと嬉しいな。
「そうだね、ありがとう、桔梗。さっきの話だけど、もし、そんな奇特な人がいたら、俺だって真剣に考えると思うよ。だって、好きになってくれたってことは、俺を認めてくれたってことだし、言葉にしてくれたってことは勇気を振り絞ってくれたってことだからね」
「そうですか……刹那、本当に申し訳ないのですが、ある人と、ちょっと話さなければいけないことができたので、今日はここで解散でいいでしょうか?」
「いいよ」
俺が即答すると彼女はなぜか、驚いた顔をした。え、だって、用事ができたんでしょ? それにさ……
「怒らないのですか? 元々は一日中の予定だったのに……」
「怒るわけないじゃん、この前うちに来たときはちょっと思い詰めていて、今日もそんな感じだったけど、今はすっきりした顔してるんだもん。なんか、悩みが解決したんでしょ。だったら、善は急げって言うし、早く行動した方がいいよ。俺と遊ぶのはいつでもできるからさ」
「刹那……ありがとうござます。私、絶対負けませんから!!」
俺の言葉に彼女は目を見開いた後、嬉しそうに笑った。その顔は太陽みたいで本当に魅力的だった。そして、出口へと向かって歩き出す。その後姿はなんかちょっとかっこよかった。
「ああ、それと私だっていつまでも幼馴染でいるつもりはないですよ」
そういって水槽を背景に、ふりかえって、微笑む彼女は、なにかいつもと違って、蠱惑的で、俺は思わずドキドキしてしまった。俺がどういうことか聞き返す前に彼女は走り去っていってしまった。
結局そのあと、俺は一人で水族館を楽しんで、お腹が空いたので、帰りに回転寿司に行った。やっぱり魚は見るより、食べるほうがいいよね。
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