第15話 桔梗と話し合ったんだけど

「やっと見つけたよ、桔梗」

「いやです、離してください」



 俺はとっさに逃げようとした桔梗の手をつかんだ。ここでのがすわけにはいかない。彼女は頭と手をふって俺を拒絶しようとする。でも彼女のそれが本気でない事はわかる。悲しいけど彼女のほうが体力はあるからな。本気で振り払おうと思えば振り払えるはずなんだよね。俺は彼女がどこかにいかないように引き寄せる。体がすっかり冷えてる、このままじゃ風邪ひいちゃうよ?



「なんで追っかけてきたんですか!! 私のことをわざわざ嫌いって!! 気持ち悪いって!! 言いに来たんですか」

「違うよ、桔梗……俺がお前を嫌った事も気持ち悪いって思ったことも一度もないよ」

「そんなの嘘ですよ!!」



 彼女は顔を歪ませながら叫んだ。その表情は本当に苦しそうで今にも泣きだしそうだった。



「だって、普通に考えてストーカーなんてされたら気持ち悪いじゃないですか、盗聴もGPSも私がやったって気づいたんでしょう? 私だって馬鹿な事やったなってわかってるんですよ、でも自分を止められなかったし、止まらなかったんですよ。だって刹那の事を知りたかったんです。あなたがどんな人が好きでどんなことが好きで、どんなふうに普段過ごしていて、どんなことを考えているか知りたかったんです。ばれたら嫌われるってわかっていても……でも、全部ばれちゃったんですよね……だから私の事はもう放っておいてください」

「あの、勘違いしてるみたいだけど、俺は桔梗の事を本当に嫌いになってないって」

「え?」



 彼女はきょとんとした顔で聞き返してきた。同時に手の抵抗も弱まったので雨に当たらないように傘に入れる。なんで俺が嫌いになるなんて思うんだろうね? こんなにかわいらしくて素敵な幼馴染をさ。



「だって、盗聴とか色々してたんですよ。普通の人は嫌がりますよね」

「別にいいんじゃない、まあ、それを悪用とかされたらいやだけど、桔梗はそんなつもりないんでしょ」

「そうですが……」



 まだ納得していない桔梗に俺は伝える。さっきのカフェでは伝えれなかった言葉を。



「誰にだって欠点はあるんだからいいんだよ。それに桔梗って優しいやつじゃん。俺は知ってるよ。俺が寂しい時一緒にいてくれたり、ご飯を作るときも栄養偏らないように色々工夫してくれたりしてるし、勉強だってみてくたりしてるじゃん。幼馴染なんだからさ色々知ってるんだぜ。悪いところもいいところも知ったうえで、俺は本当にお前が幼馴染でよかったなって思ってるんだよ。だからこれからもずっと一緒にいてよ。ってあれ、俺なんか変なこといっちゃった」



 俺の言葉になぜか彼女はさらに泣いてしまった。俺は泣いてしまった彼女を黙って抱きしめながら頭を撫でてやる。泣いている彼女の心が安らぐように、すっかり冷え切った彼女の身体が暖まるようにしっかりと抱きしめる。昔は桔梗が泣いたときはよくこうしていたなぁ。小学校の時を思い出して少し、懐かしくなった。

 彼女が落ち着いたのを見計らい、俺は彼女から手を放して、ハンカチを渡した。



「寒いでしょ、これ使いなよ」

「ありがとうございます……でももう少しこうさせてください」



 そう言って彼女は体をハンカチで拭くと再び抱き着いてきた。さっきよりは暖かくなったな……でもそのそんな正面から抱き着かれるとそのね……胸が……



「刹那……これからも一緒にいていいんですか?」



 うるんだ目で彼女は当たり前のことを聞いてきた。それに対する答えはもちろん一つしかない。



「だからいいって言ってるじゃん。今日も親いないんだよね、よかったらごはん作ってよ」

「わかりました。とびっきりのやつを作りますね!! えへへ、やっぱり私は刹那の隣にいないとダメみたいです」



 そう言って泣き止んだ桔梗はとびっきりの笑顔を浮かべてくれた。ああ、可愛いなぁと思う。俺は彼女と一緒の傘に入り帰路についた。

 帰ってから冷えた身体を温めるためにお風呂を沸かしたら、俺が入っている時に乱入しようとしてきたり、桔梗がうちに泊まろうとしたり色々騒がしかったけど、美味しいごはんも食べれたしよかったと思う。一緒にお風呂ってさ、小学生じゃないんだからまずいと思うんだよね、いくら幼馴染でも。

 でも、彼女といる時間はとても楽しいし大事な時間だなぁと改めて実感した。俺は彼女との関係が改めて大事だなと実感するのであった。



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次の話で一区切りです。



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