第16話 ヤンデレになった彼女と俺の日常
「刹那ー、朝ですよ。私としてはこのままでもいいんですが遅刻してしまいますよ」
うーん、俺は甘い香りとやわらかい感触に包まれながら目を覚ました。目の前には制服姿の桔梗が抱きついる。いや、明日もよろしくとは言ったけど部屋に入っていいとは言ってないよね? まあ、おっぱいきもち良いしいっかー。
「今日はオムレツを作ったんです、早く食べないと冷めてしまいますよ」
なんで当たり前のようにごはんを作っているっていう突込みはもうあきらめた。俺は桔梗を追い出して着替え始める。あれ、今度はお気に入りの靴下がなくなっている。母さん捨てちゃったのかなぁ。
「暖かいのと冷たいのどちらがいいですか? あとお弁当も作ってきてますからね、お昼は一緒に食べましょう」
「ありがとー、うーん暖かいので」
彼女はあたりまえのように暖かいコーヒーを俺にくれた。なんか家族みたいでこそばゆいよね。彼女が作ってくれた真っ赤なケチャップがのったオムレツとコーヒーをたいらげ、俺達は一緒に登校した。寒いからかな、いつもより桔梗がくっついてくるんだけど……これだと恋人みたいって誤解されないかな? でもまあ、柔らかい感触が気持ちいいからいっかー。
いつも通り教室へ入り、小説を読んでいる委員長へ挨拶をする。彼女には昨日のうちに無事桔梗と合流をしたことは伝えてあるので心配はしていないようだ。
「おはよー」
「おはよう一条君、その調子ならうまくいったみたいね」
「ああ、ありがとうね」
「良かったわ……さすがに同級生から死人が出たら笑えないもの。あ、昨日のケーキ代だけど2000円でいいわよ」
「え、たかくない? ケーキとコーヒーのセットで1000円だよね」
「この世には利息って言葉があるの知ってるかしら、あ、今2100円に値上がりしたわよ。早く返さないとどんどん増えるわ。いまならケーキをおごるだけで利息がとまるわよ」
「払うから!! 払うから!! これ以上値上げしないで。ケーキもおごるから!!」
「刹那……私が困った時も助けてね」
「えっ?」
慌てて聞き返すが委員長はもう小説に集中していた。こうなるとダメなんだよなぁ。こちらの話を聞いてくれないだろう。俺は諦めて持ってきた小説を読むことにする。てかさ、そんなこと改めて言わなくても助けるに決まってるでしょ。
授業が終わり放課後になったので俺と桔梗はカフェの前で待ち合わせて向かった。桔梗は俺をみると満面の笑みを浮かべた。学校から直接行けばいいと思ったんだけど、どうしても桔梗が一回帰ってから行きたいっていったんだよね。
「ごめん、待ったー? あ、その髪飾り懐かしいね、似合ってるよ。服も新しいやつでしょ、いいなぁ」
「えへへ、今日は刹那とのデートだから少しでもお洒落しようと思って」
私服に着替えた桔梗は俺の言葉に照れ臭そうに笑う。髪飾りは俺が誕生日にあげたやつじゃん。自分がプレゼントしたものをつけてくれると嬉しいよね。そして桔梗の服装どこかで見たことあると思ったんだけどあれだ、俺が読んでる小説のヒロインの格好に似ているんだ。すごい偶然だよね。運命感じちゃう。
そうして、俺たちは雑談をしながらカフェに入った。
「で、なんであなたがここにいるんですか?」
「知らないのかしら、ここはケーキ屋さんなのよ。ケーキを食べるためにきまっているでしょう」
「そういう意味じゃないです!! なんで私たちの近くのテーブルに座っているのかって聞いてるんです」
「それはそこのポジティブサイコパスに言ってくれるかしら……まあ。ちょうどよかったわ。例の約束を守ってくれるかしら?」
桔梗と委員長のやり取りが店内に響く。あ、また俺達の周りから客が消えたんだけどなんなんだろうね。俺たち防虫剤みたいだね。委員長がいたから声を掛けたら、店員さんが気を利かせてくれてその隣の席に案内されたんだよね。
「例の約束って何ですか? 私の刹那とどんな約束をしたんですか?」
「一条君……じゃなかった刹那が、ケーキをおごってくれるって言ったのよ」
「どういうことですか、刹那、委員長とまたカフェデートをするつもりだったんですか? っていうか何であなたも刹那って呼んでるんですか、刹那って呼んでいいのは私だけなんですよ」
「そんなことないでしょう、刹那の両親も呼んでると思うわよ」
おお、桔梗がまた昆虫みたいな目をしている。器用だなぁ。確かに委員長にケーキおごる約束したもんな。桔梗とのデートも委員長との約束もこなせて一石二鳥だね。俺は店員さんを呼ぶ。
「あ、今日はショートケーキで、委員長はパンケーキでいいかな? 桔梗はどうするの」
「私の話は終わってませんよ!! まあ、今回お世話になったから特別に許しますが……刹那と同じので」
「お客様お願いですからもう来ないでくれませんか!! 痴話げんかをやるなら余所でやってください!!」
昨日と同じ店員さんが涙目になりながらの絶叫が店内に響く。痴話げんかって何言ってんだろね。友達とケーキ食べてるだけなのに。
わいわいと騒ぎながら俺は高校生活は楽しいなぁと実感する。これで『「口は悪いが巨乳で美人な幼馴染に「別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!!」って言われたから「俺もだよ」って答えたらヤンデレになってしまった』物語は終わりである。
でもさ。結局ヤンデレってなんなんだろうね、まあ今の桔梗も可愛いからいっかー。
------------------------------------------------------------------------------------------------
というわけでこれでひと段落です。
ヤンデレ幼馴染とそれを気にしないポジティブサイコパスの話はいかがだったでしょうか?
面白いなって思ったら、是非作品フォロー、レビュー、コメント、応援の方をいただけると大変モチベがあがるのでしていただけると嬉しいです
次回から刹那バイトをするがはじまります。コメディ多めのラブコメですが楽しんでもらえると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます