第6話 手紙を探すことにしたんだけど
放課後になり俺と桔梗は俺の下駄箱を一緒にみにいく事にした。まずは少し離れたところから観察をして俺の下駄箱に近づく人を探す。うーん、誰も手紙をいれようとはしないな……すでに一度、下駄箱の中身は確認して今日はまだ入っていない事を確認した。そもそも手紙の意図がわからないんだよな。だって告白場所も差出人も書いてないんだもん。
「なんかこうしていると小学生のときを思い出しますね」
「あー、缶けりとかやったよな、懐かしいなぁ」
「ええ、あの時刹那が声をかけて誘ってくれたんですよね、すっごい嬉しかったです」
そう言って桔梗は俺に満面の笑みを浮かべた。改めてみるとこいつ可愛いなぁと思う。昔は引っ込み思案だったんだよな。それでいつもつまらなそうにしていたので遊びに誘ったのだ。覚えてもらえているとは嬉しいな。あれ、これってもしかしてフラグ立ってた? と思うが幼馴染だしそんなことはないんだろうなぁ。距離感がやたら近いのも家族みたいなものだからだろうしね。でも……今もちょっと近くない? 具体的に言うと胸が当たっててやばいんだけど……
「あ、二宮さんと一条だー、二人でなにやってるの?」
振り向くと同級生の四木君がいた。小中同じ学校で高校も一年の時は同じクラスだったんだよね。茶色い短髪に引き締まった長身の体、しかも顔もいい。バスケット部のエースである。バレンタインを去年うちの学校の誰よりももらっていたというのに彼女はいないらしい。ちょっと俺とのステータスの違いがやばくない?
ちなみに俺は桔梗と委員長と母さんの三つだったな。別に全部義理だったけど悔しくないし。桔梗とか自分の顔のチョコを渡してきてこいつ何考えてんだ? って思って、冗談半分で「むっちゃ凝ってるかけど本命?」って聞いたら「か、かんちがいしないでよね、こんなの余りでつくっただけなんだから」って言われたので本命ではないのだろう。しかし、余りって事は桔梗の顔のチョコが彼女の家には大量にあったって事かな。黒魔術の儀式みたいだよね。
「ちょっと二人で調べ物です、四木君はこれから部活ですか、がんばってくださいね」
「ありがとー、二宮さん、茶髪から黒髪に変えて可愛くなったね、いきなりイメチェンしたときはどうしたのかなって思ったけど似合ってるよ」
「ありがとうございます。四木君はお世辞がうまいですね」
笑顔の桔梗と話していて、四木君は嬉しそうだ。確か二年生でも二人は同じクラスになってるんだよな。ひょっとしたら四木君は桔梗の事が好きなのかもしれない。でもあの笑顔は違うんだよなぁ。付き合いの長い俺にはわかる。今の桔梗は目が笑っていない。社交辞令の笑顔だ。俺の知る限り、彼女が感情を見せるのは家族と俺、委員長くらいじゃないかな。ちなみに昔から口調は俺にだけツンデレ口調で普段からみんなには敬語でした。
「あの……気になっていたんだけどさ、二宮さんと一条ってやっぱり付き合ってるの?」
「え、それはその……えへへ、やっぱりそうみえますか? どうなんでしょうね、刹那」
四木君の言葉にはじめて桔梗の感情が動いた、そして助けを求めるかのように俺をみつめた。ああ、わかっているって、昔からそういわれるたびに「な、なんでみんなそんな風に言うのかしらね、ばっかじゃないの?」って怒ってたもんな。
「ただの幼馴染だよ、なんていうか家族みたいなもんだしな」
「そうですね……まあ、でも家族なら嫌われてはいないですよね……」
「二宮さん、何かごめん……」
俺が答えると桔梗も同意をする。その姿になぜか四木君は桔梗に謝った。え、なんで謝るの? 四木君なんか悪い事いってた?
「一条……君は鈍感ラブコメ主人公かな?」
「ん、よくわからないけどありがとうな」
「君って本当にすごいよね。でもなんか昔とちょっと変わったなぁ」
四木君は俺の肩を叩いてため息をついた後、体育館の方へと去っていった。なんか主人公とかすごいとかやたら褒められたんだけどどうしたんだろう。俺またなんかやっちゃいましたとかいったほうがいいんだろうか? それに昔の俺は青かったんだよ。人は常に変化すべきだと思うんだよね。
「むー……」
「どうしたんだ、桔梗? 親の敵でもみかけたの? 復讐とかなら俺もつきあうよ」
「なんでもありません、ちなみに刹那は血のつながってない家族との恋愛とかありだと思います?」
「まあ、血がつながってないならいいんじゃないか」
俺の回答に彼女はえへへとうれしそうに笑った。義理の妹とか萌えるよね。わかるよ。俺も好き。お兄ちゃんが好きなんだけど家族だから……でも血はつながってないから……とかもやもやするの萌えるよな。
おっと、そんなことを話している場合ではなかった。雑談をしていたらだいぶ時間が過ぎてしまった。もう帰宅の時間ラッシュはすぎて下駄箱も人はまばらだ。一応あけてみるが手紙はない。
「やはり、今日は出なかったな」
「そ、そうですね、一体どこのどなたでしょうか?」
「あれ、鞄からなんか落ちたよ」
「あっ」
俺が鞄から落ちた紙切れを拾う。あれ、これの封筒見覚えがある……
「あれ……その手紙俺が前にもらったやつと一緒じゃ……」
「え……これはその……」
「もしかして俺が気に病まないように事前に回収してくれてたのか、桔梗気を使ってくれてありがとう。いってくれたらよかったのに」
「えへへ、刹那に褒められた」
「とりあえず中身を見てみよう」
「えっ」
なぜか止めようとする桔梗を無視して俺は手紙の中身をみた。前回と同様に真っ赤な文字で『やはり怒ってますよね、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』と書いてある。そんなに謝らなくていいのにね、俺別に何も怒ってないんだけど、この人は俺になんかやべえことしたのかな。もしかして前世で俺の村でも焼いたかな。
「その……ごめんなさい」
「え、なんで謝ったの?」
「いえ……その手紙を読んだんですよ、深い意味はないので気にしないでください」
俺は再度手紙を鞄にしまった。今は視線は感じないのでストーカーはいないようだし、どうしよう。
「とりあえず、うちに行くか。委員長がいないのは痛いけど作戦会議をしよう」
「刹那の部屋……これは既成事実を作るチャンス……」
俺の言葉になにやら桔梗がぶつぶつ言っているがきにしないでおこう。やっぱり昨日休んだから体調悪いのかな?
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