第55話 双葉の決意1
刹那先輩に連れられて、私は紅茶を淹れるために、戦場へと向かった。心細いけど刹那先輩の願いである。断れるはずがない。ああ、惚れた弱みだなぁと思う。例えるならば初期装備で、ラストダンジョンに突っ込む気分である。
「ひぃ……!!」
虫のような感情の無い目で向かいの席を見ている桔梗先輩と、我関せずという感じで文庫本を読んでいるクールそうな女性がいた。ちなみに周りからはお客さんがすっかり消えており、新しく入店しようとしているお客さんも、こっちの席に案内すると、他の席が空くまで待たせてくれと半泣きで言う始末である。そんな地獄のような空気の中でも、一切気にしないで刹那先輩は楽しそうに向かうのであった。
「桔梗にアリスお待たせー!!」
「刹那待ってましたよ!! 刹那の手作りパンケーキ楽しみです!! あ、私の好物がたくさんありますね。さすが幼馴染ですね!!」
「フフ、どんなパンケーキが出てくるのかしら? くっ、可愛い猫ね……悔しいけどこれはあなたの腕を認めざるを得ないわね」
そういって、彼女たちのテーブルに刹那先輩はパンケーキを並べ始めた。片方はシンプルな形だけど果物がたくさんのったパンケーキ、もう片方は、猫の形をした可愛らしいパンケーキである。よく見ると両方とも焼き加減や生地などが違う。おそらく二人の好みに合わせたのだ。嬉しそうにしている二人をみて、うらやましいなぁと思ってしまう。私ももっと早く刹那先輩と出会っていれば、そちら側にいけたのだろうか? いや、でもこの席には座りたくないなぁ……
「では、私が紅茶を淹れますね」
「ありがとうございます、双葉ちゃん」
「ありがとう、あなたの淹れるお茶美味しいのよね」
刹那先輩のパンケーキによって、二人とも、機嫌が気分が良くなったのか笑顔になっている。刹那先輩が作ったからと言う事もあるけれど、料理が人の笑顔を作ったのを見るのはすごい嬉しいものだ。しかも、私の父の店で笑顔が生まれるのだ。最高ではないだろうか?
「あ、双葉もここに座ってて、桔梗とは仲が良いよね。こっちの子はアリスって言うんだ。気軽に委員長って呼んであげて。店長には許可取ってあるから大丈夫だよ」
「え……? いや、なんでですか? 刹那先輩どこに行くんですか? 例えるならば、魔物の巣に生贄として置いて行かれた気分なんですけど!?」
私の救いを求める言葉もむなしく、刹那先輩は厨房の方へと戻っていってしまった。私はどうすればいいか、わからず美味しそうにパンケーキを食べている桔梗さんと、優雅なしぐさで、紅茶を飲んでいる委員長さんを落ち着かない様子で見ることしかできなかった。私も落ち着くために水でも飲もう。ああ、そう言えば友達がそういう時は素数を数えろって言ってたっけ。
「それで、あなたも刹那の事が好きなのかしら?」
「ぶはぁっ」
いきなり何を言い出すのだろうこの人は。私は思わず、むせてしまった。恨めしそうに委員長さんを見ると目があう。彼女は綺麗な顔に笑みを浮かべて言った。
「図星のようね、どうしましょうか、二宮さん」
「口元が濡れてますよ、どうぞ」
「一体何の話でしょうか……例えるなら……ひぃ!?」
私が誤魔化そうとすると、ハンカチを差し出されたので、受け取ると虫のような目でこちらを見ている桔梗先輩と目があった。例えている場合じゃない、うかつな発言は自分を殺してしまいそうである。
「フフ、図星の様ね、じゃあ、あなたにも正妻戦争の説明をしようとかしら、ちょうど二宮さんともルールのすり合わせをしたかったし」
え? この人は真面目な顔をして何を言っているのだろう?
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口は悪いが巨乳で美人な幼馴染に「別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!!」って言われたから「俺もだよ」って答えたらヤンデレになってしまった。 高野 ケイ @zerosaki1011
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