第48話 アリスとデートのはずだったんだけど!!

 どうしてこうなった? どうしてこうなった?

 俺は自問自答する。今、俺がいるのは自分の部屋でもなく、映画館でもない。綺麗にかたずけられた部屋に、いくつもの本棚があり、俺好みのライトノベルや、コナンドイルのシャーロックホームズシリーズや、アガサクリスティのポアロを筆頭に、たくさんのシリーズが並べられている。全部順番になっているんだけど、本当に几帳面だなぁと思う。そういや、FGOのホームズピックアップの時に、無茶苦茶課金したって言ってたのを思い出す。



 綺麗に整頓されている本棚の置いてあるスペースとは対照的に、ベットの周りは猫やペンギンなど可愛らしい動物のぬいぐるみや、シーツなどで占められており、なんか彼女の秘密を知ったような気がして、少し恥ずかしいような、心を許してくれたんだなっていう、嬉しさを感じる。まるでアリスの内面みたいだよね、クールとデレみたいなさ。


 それにしても、女の子の部屋なんて桔梗以外は初めてだよ。桔梗は幼馴染だからいいんだけどさ。付き合ってもない男を入れたらだめだと思うんだよね、俺が下着で興奮するような男だったらどうするんだろうね。箪笥とかあさるかもって思わないのかな。まあ、あさるつもりなんてないし、万が一みつかったあと社会的に抹消される悲惨な未来しか見えなかったので考えるのをやめた。

 そもそも、他人の下着をあさるのは異常な行為である、桔梗は「洗濯してあげますよ」って言って俺の下着も洗ってくれることあるんだけど、恥ずかしいよね。そろそろやめてくれないかなぁ……

 俺は緊張を緩めるためにも、テーブルに出されたお茶に手を付けようとしたのだが、焦っていたのかテーブルに手をぶつけてしまい、その振動でメモ帳が落ちてしまった。申し訳ないなと思って、メモ帳を拾うとちょうど書き込みのあるページが見えた。



 『パンケーキの作り方』



 それは何回も書いたり、書き直されたり、かわいい猫の絵で一口アドバイスみたいなものも書いてある。おそらく、努力したのだろう、いや、努力をしてくれたのだろう。彼女は言った。「せっかくだからおもてなしをしようと思うの」と「絶対美味しいといわせて見せるからね」と。結果は伴わなかったけれど彼女は本当に頑張ってくれたのだなと。俺はそのことを知って笑みを浮かべる。



「あらあら、乙女の秘密を覗くなんて本当に変態さんね、もしもし、お巡りさんですか、一条刹那っていう変態が、私の部屋で私のノートをみて、ニヤニヤ笑って、はぁはぁ変な声を上げているんですが……」

「うわぁぁぁ、アリスいつの間に!?」



 ふわっと甘い匂いと共に、俺の人生終わらすかのごとき、冷たい声が耳元でささやかれる。俺はとっさにとびのく。



「何を言ってるのよ、ここは私の家でしょう、そしてここは、私の部屋よ。いて当たり前でしょう。それにしても、人のノートをみて、ニヤニヤするなんて、変わった性癖ね」

「俺がニヤニヤしたのは、ノートで興奮したわけじゃないんだけど……あ、でも、アリスがここで過ごしているって思うとなんか興奮してきたかも」

「今の録音しておいたわ。次会うときは法廷ね」

「それでも、僕はやってないぃぃぃぃ!!」



 足跡もなく後ろにいるなんてアサシンかな? 馬鹿にするように俺を見つめている彼女はいつもの制服姿と違い、レースのついたルームウェアだ。青い目と相まって何か映画のワンシーンみたいだ。あとさ、お風呂上がりだからか、白い肌が上気していて、何とも言えない色気を醸し出している。



「あらあら、どうしたの? 私を舐めまわすようにみて、セクハラでうったえるわよ」

「生足っていいよね。特にアリスはスレンダーだからモデルさんみたい」

「はいはい、どうせ、私は二宮さんみたいに胸が大きくないわよーだ」

「大丈夫、貧乳はステータスって前にアニメで言ってたよ」

「殺すわよ?」



 ひえ……自分でふっておきてそれはひどくない?ちょっと拗ねたように俺を睨んでいるアリスを見つめながら、俺は、なんで映画ではなく、アリスの家にお邪魔することになったのかを思い出す。全ては観ようと話してた映画が延期になったのが悪い。いやマジ楽しみにしてたんですけど、ライダーの活躍とかセイバーオルタとかさ。なぜ俺がアリスの家にいるのか、そしてなぜ彼女はお風呂上りになったのかを思い出すとしよう。

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