第39話 双葉ちゃんと買い物に来たんだけど

 学校の放課後に俺はカフェの近くのショッピングモールに来ていた。一回家に帰ったので、今日は私服である。制服でもいいかなって思ったんだけど双葉ちゃんが私服で行きましょうと言ったので着替えることになったのである。なんでだろうね?

 どうやら少し早くついてしまったようだ。当然ながら双葉ちゃんっぽい子はいない。まあ、いいや。アークナイツやろっと。ていうかさ、シルバーアッシュ強すぎない? なんかすべてを切り刻むんだけど……可愛い女の子を求めたはずなのにホモになっている気がする……俺がスマホをいじっていると、声をかけられた。



「一条先輩……その、待ちました?」



 灰色のニットのセーターにチェックのミニスカート、そして両足を守るニーソと絶対領域がまぶしい。可愛らしい姿の双葉ちゃんがいた。彼女は少し緊張しながらも、可愛らしくこちらを上目遣いで見ている。



「全然待ってないよ、私服はじめてみたけど可愛いね」

「えへへ、そうでしょう、そうでしょう。友達に相談した甲斐がありました。もっと褒めていいんですよ、例えるならば、ラブコメで主人公への好感度を上げるためにオシャレをしているヒロインの気分です」

「うん、オタクがむっちゃ好きそう」

「前言撤回ぃぃぃぃ!! なんでお洒落をしてきたのに喧嘩を売られなきゃいけないんですか!! 一条先輩だってオタクなんだから、こういう服装好きなくせにぃぃぃ!!」

「うん、むっちゃ好きだよ、だから可愛いって言ったじゃん」

「うう、好き……可愛い……この人のことだから深い意味はないのがわかっているのに、嬉しくなってしまう自分のチョロさがにくい……例えるならば恋愛映画で好きな人に頭ポンポンされただけで惚れるチョロインになった気分です」



 双葉ちゃんがなにやらぶつぶつ言っているけど大丈夫かな? それにしても制服ではなく、私服だとなんか違うね。制服だと先輩後輩って感じなんだけど、私服だと兄妹みたい。まあ、妹なんて居ないんだけど……



「双葉ちゃん、俺の事はお兄ちゃんって呼んでもいいよ」

「いや、何を言っているんですか、この人!? いいからお店へ行きますよ」



 俺たちは雑談をしながらショッピングモールへと向かう。双葉ちゃんと何度か買い出しに来ているのだが、このお店は初めてだ。海外からの食品を主に扱っているらしく、いつものスーパーではなかなかみない食材や調味料が並んでいる。



「へえー、色々あるんだね、あ、これお店でみたことあるやつだ」

「料理は愛情も大事ですが、やはり技術と材料も大事ですからね。せっかくなんで今できる最高のパンケーキを作りましょう」



 俺が興味深そうに商品をみていたら、彼女は一つ一つ、食材や調味料を手にとって説明してくれる、その顔は本当に楽しそうで、俺もつられて嬉しくなってしまう。せっかくだからメモをしておこう。



「双葉ちゃんは料理が本当に好きなんだね」



 お会計を済ませて、俺たちは店をでながら話す。俺の言葉に彼女はしまったという顔をする。どうしたんだろうね。へんなことなんてなかったけど……



「ああ……すいません、つい夢中になってしゃべりすぎてしまいました。退屈じゃなかったですか?」

「全然、むしろ勉強になったよ。双葉ちゃんは教えるのが上手いね。これで俺のモチベも上がったよ。ホワイトデーは楽しみになってきたな」

「そうですか、それはよかったです。一条先輩は私の話をなんだかんだちゃんと、聞いてくれるから嬉しいです。ついでとはいってはなんですが、その……私の夢を聞いてくれますか?」

「うん、聞きたいな」



 そういうと彼女は「えへへ」と照れ臭そうに笑った。なんだろうね。夢かぁ……俺はなんだろう。特にないんだよなぁ……



「私はお父さんのカフェを旦那さんと一緒に継いで、カフェが休みの時は料理教室をやるのが夢なんです。お父さんのお菓子の味が家庭でも味わえて、みんなが楽しめる。そんな料理教室を開きたいんです」



 そういいながら遠くを見る彼女は俺より年下のはずなのに、なぜか大人びて見えた。現に将来が漠然としいる俺よりも彼女の方がずっと大人なのだろう。彼女は俺の視線に気づくと、恥ずかしそうに笑った。



「じゃあさ、今からうちにきて料理をおしえてよ、双葉先生」

「ええ、いいですよ……って一条先輩の家ですか?」

「うん、どうせ、親は仕事で帰るの遅いから晩御飯作らなきゃいけないしね。あ、それとも予定あった?」



 俺の言葉に彼女はなぜかもじもじと悩んでいる。トイレかなぁ……とりあえずあたりをみてコンビニを探してあげる。



「いや、でもこれは意識させるチャンスでは? でも、先輩の家に行ったなんてばれたらあの怖い人に殺されそう……あ、一条先輩練習だったらカフェでやりませんか? 今日はお休みだから誰もいませんし、機材もたくさんありますから」



 なぜか双葉ちゃんは顔を真っ赤にして答えるのであった。どうしたんだろう? 店内の暖房が暑すぎたのかなぁ_ 



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シリアス回ですね。桔梗は刹那が絡まなければまともです。



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