第29話 委員長と水族館に来たんだけど

 水族館に入場した俺達は順路に従って進むとリング状になっている水槽についた。上下全範囲魚がみれるので中々圧巻である。



「うわー、水族館って久々に来たけど魚がすごいねぇ、なんかお寿司食べたくなるよね」

「水族館に来て第一声がそれはどうかと思うわ、刹那」

「でもさ、人間って食べ物を食べないと生きてけないからね。あー、でも俺も泳ぐだけで餌をもらって生きていきたいなぁ」

「あなたは将来下手したらヒモになりそうね、養ってくれる人もいるでしょうし……」



 委員長があきれたように言った。うわぁ、すごい軽蔑の目でみられちゃった。俺を養ってくれる人って誰だろ。もしや委員長? 確かに、しっかりした女の人の方がそういうダメ男に惹かれやすいからね。



「何か不愉快な事を考えてないかしら」

「俺が家事は頑張るから、委員長は安心して働いてきてね」

「あなたを養うくらいなら、魚でも飼うわよ。餌代もあなたよりかからないでしょうしね」

「うわー、魚に負けた!! 確かに俺は非常食にはならないしね。それよりあのサメ大きくない? すごいよね。襲われたらすぐ食べられちゃいそうだし餌代むっちゃかかりそう」

「安心しなさい、人食いサメのイメージは映画でそんなに種類は多くないし、水族館のサメは満腹だから私たちを襲うことはないわ」

「そうなんだ、でも、万が一襲ってきたら守るから安心してね」

「ええ、ありがとう、私はあなたを生贄に生き延びるわ。一週間くらいは感謝を忘れないでおくからね」

「ひどっ、せめて一年に一度くらいは思い出してほしいんだけど。例えるならば、戦争映画で形見をみながらお酒を飲んで戦友を思い出す気分で!!」

「あなた最近そのフレーズ好きね、そうね……頭はおかしいけどいいやつだったわって覚えておくわね」



 俺の言葉に委員長は意地の悪い笑みを浮かべた。ふふ、いいやつって褒められちゃったよ、嬉しいね。

 俺達は水族館をどんどん進む。水槽のゾーンから少し歩いた先のペンギンのコーナーで委員長は立ち止った。一見興味のなさそうな顔をしているが、チラチラと目線でペンギンを追っている。

 カフェの時も猫やパンダのパンケーキをみてにやにやしていたし、委員長ってクールなくせに可愛いもの好きだよね。でもそれを言ったらすごい不機嫌そうになるんだよなぁ。さっきから手がわなわな動いているし、スマホで写真を撮りたいのに我慢しているのかな?

 特にお気に入りがいたらしく、グループから離れて餌を食べている一匹のペンギンをじっと見つめ始めた。



「委員長せっかくだし、写真とろっか? スマホ貸して」

「ちょっと、やめなさい。別に大丈夫よ、それにフラッシュの光とかペンペンが可哀そうでしょう」



 名前も付けていた!! この一瞬でそこまで愛着がわくってすごいよね。俺は委員長の言葉を無視して彼女の手からスマホを拝借してカメラを自撮りモードにする。



「せっかく、来たんだし写真くらいとりたいんだよね。俺がとりたいだけなんだけどだめかな? フラッシュは焚かないからさ」

「仕方ないわね……あなたがどうしてもっていうのならいいわよ」



 そう言って委員長は必死に笑みを隠しながら俺と委員長の間にペンペンが映るようにならんだ。パシャリとスマホから音がして、撮影が終わったので委員長にスマホを返す。



「どうかな、こんな感じでいい?」

「そうね、右の人が邪魔だから後で消すけど合格点かしら」

「待って、俺の存在消されるの!? 一緒に撮った意味なくない?」

「安心して、ちゃんと撮影者は刹那って書いておくから。自分の写真を撮るなんていつぶりかしら……」

「よかったら遺影に使ってね、いえーい!! なんちゃって」

「……」

「無反応が一番傷つくんだけど」

「ごめんなさい、一瞬頭がフリーズして何て言ったか聞き取れなかったらもう一度言ってくれないかしら?」

「滑ったギャグをもう一回言わせるなんて鬼畜すぎない?」



 頑張って写真を撮ったのに扱いがひどいよね……でもまあ、委員長の嬉しそうな顔がみれたからいっかー、そして俺達は水族館を楽しむ。触れ合いコーナーがあったり、クラゲがたくさんいたりしてすっごい楽しめたな。委員長はなんか懐かしそうな顔をしていた。




「刹那、歩き疲れたし、少し休憩しましょうか……それにちょっと話したいこともあるし」

「いいよ、じゃあやすもっか」



 あらかた目ぼしいブースは回った所で委員長が言った。俺は素直にうなずく、委員長ってやはり読書家だからか体力は無いのかな。だったら気が利かなかったなぁと反省する。



「私の顔に何かついているかしら」

「いや、疲れたでしょ、もっと早く休憩を提案すればよかったなって思って。でも話してくれるのは嬉しいな」

「大丈夫よ、刹那にそこらへんのエスコートは期待してないから……あと私の話なんて別に楽しい話じゃないわよ」

「うん、でも聞きたいんだ、委員長の話」

「ありがとう」



 そうして俺達は水族館内の売店で適当に飲み物を購入してベンチへと向かった。ちょっと寒いけど潮風が気持ちいいね。





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