06  進化しました

 うん、進化はする。

 それは決定事項として、ちょっと疲れてきたから座らせて。


 まず私は植物で、成長には水と土と日光が必要。

 こんなのは小学生でも知っている。

 土はなんとかなるとしても、水は今のところ無い。

 というかあるかもしれないけど見えないし、場所がわかんない。

 日光なんてもっと絶望的だ。

 これ、大丈夫かな。




《告:パラスティックプラントの種の進化先の候補が複数存在します》

《パラスティックプラント》

《バグイータードロセラ》

《プチマンドラン》




 ちょっと、ちょーっと待ってね。

 まだその段階じゃない気がしなくもないから。

 今、この環境で私は生きていけるのかどうかを考えている段階だから。

 ……ごめん、もう一回言ってくれない?




《是:パラスティックプラントの種の進化先の候補が複数存在します》

《パラスティックプラント》

《バグイータードロセラ》

《プチマンドラン》




 お、おー!

 この世界、本当にゲームみたいだな。

 なんか、楽しくなってきたかもしれない。

 もう、この環境で生きていけるかどうかなんて今考えても仕方ない気がする。

 生きていけるかどうかじゃなくて、生きていくんだよ。


 強く生きるんだよ!


 さぁ、切り替えて進化のこと考えて行きましょーっ!

 この選択は今後の人生じゃなくて、植物生を左右する大事なターニングポイントだ。

 ここで、安易に適当に決めたら絶対ダメだ。

 後悔してもしきれない。

 どうするんだ、私よ。

 進化先複数あるとなると、優柔不断な私が決められるかどうか不安なところがあるんだけど。

 まず、森さん。パラスティックプラントについて教えて。




《解:草です》




 あ、はい。

 ちなみに他二つは?




《解:バグイータードロセラは苔、プチマンドランは根になります》




 わかった、自分で考えよう。

 基本的に森さんはポンコツだ。

 まだLv.1だし、その辺はわかってあげよう、うん。


 まずパラスティックプラントについてだけど、今の私がそれの種なんだよね。

 発芽済みだけど……。


 要するに、私の成長系がパラスティックプラントになるんだよね。

 今までの私の特徴、名前のパラス〜から予測すると、寄生系統の植物なのかな。

 寄生はなんか嫌だけど、今みたいに操れる体が手に入ると考えると悪くないかもしれない。


 で、バグイータードロセラは苔?

 バグ、イーター、ってことは食虫植物?

 それとも、宿主のバグタトルを食べたから?

 うーん、これは前者の方が可能性あるから、多分バグイータードロセラは食虫苔植物ってことかな。

 分かんないけど、食虫ってことは捕獲した虫から栄養分もらえるってことだよね。

 そう考えると、三つの中ならイージーモードに部類するかな。

 洞穴で生きるってことを考えると、ね。

 虫なんてたべたことないけど。


 で、最後がプチマンドランか。

 これも予想だけど名前的にマンドレイク、マンドラゴラに似ているから、そういうものなのかなって。

 森さんも”根”って言っていたし。

 そう考えるのであれば、プチマンドランには必ずもう一度進化の機会が訪れる、か。

 私自身、当たり前だけど前世を含めて進化なんてしたことがない。

 けど、進化の回数が多ければ多いほど強いってイメージがあるから、これも悪くはないと思う。



 うーん。


 どれも良い気がする、けどパラスティックプラントは無しだな。


 種の私でこの大きさの亀に寄生しているんだ。

 この洞穴でそれ以上の生物に寄生できるかどうか、わかったもんじゃない。

 植物生をかけてまで、そんな博打は打てない。


 バグイータードロセラか、プチマンドラン……。

 ナチュラルに食虫植物かとか言ってるけど、虫食べるの私なんだよなぁ。

 生きるためとはいえ、抵抗がある。

 でも、それさえクリアできれば生き残れる可能性一番大きいんだよね。


 プチマンドランの方は進化が確約された、動く根。

 歩けるのかな?

 あと、もし私が知っているマンドラゴラみたいな存在なら発声器官があるはずだよね。


 うーん。

 よし、決めた。


 プチマンドランに進化します!




《解:進化するには土に埋まってください》




 あ、はい。

 そうでしたね。


 私は宿主の手足を操り、穴を掘った。

 数十分、掘って掘って掘りまくった。




《告:熟練度が一定に達した為、スキル【穴掘りLv.1】を獲得しました》




 宿主の体全体が埋まる大きな穴を掘った副産物として、そんなスキルがもらえた。

 うまし!


 宿主がすっぽり埋まり、本体の甲羅の上に寄生している私はほんの少しだけ地面から出るくらいの深さ大きさの穴に体を収め、上から土をかける。


 森さん、これでいい?




《解:パラスティックプラントの種がプチマンドランへの進化を開始します》




 お、おう。

 なんか、もっとあると思ったけど、結構急なんっすね。

 せっかく、初めての進化だし、植物生の大事なポ……イン…ト………なの………………




        ※




《進化の成功をお知らせします》

《種族プチマンドランになりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《宿主レッサーリトルバグタトルの生命活動停止と同時に感覚遮断を確認しました》

《感覚共有によってスキル【視覚Lv.1】から【視覚Lv.3】へのレベルアップを確認しました》

《同時に派生スキル【暗視Lv.1】を獲得しました》

《進化によりスキル【身体操作Lv.1】を獲得しました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【生命吸収Lv.1】を獲得しました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【寄生Lv.2】が【寄生Lv.3】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【地属性魔法Lv.1】が【地属性魔法Lv.2】へとレベルアップしました》

《熟練度が一定に達した為、ユニークスキル【森羅万象Lv.1】が【森羅万象Lv.2】へとレベルアップしました》

《スキルポイントを入手しました》




 ん……………………へ?


 えっえっ?

 寝ちゃってた?


 急に糸が切れちゃったみたいな、抗うことができない睡魔と倦怠感に襲われたんだっけ?

 進化毎にこんなことになるの?

 結構、命懸けだな。

 そういうことはできれば先に言って欲しかったよね。

 場所が場所なら死にかねなかったよ。


 じゃ、そろそろ。


 私は地面から這い出てきた。

 は、這い出てきた?

 あのぉ、森さん? 私の姿とかって見ることできる?




《解:可能です》




 あ、できるの——…うん?

 これって。


 脳内に映る私の姿は、前世でも見たことのある物だった。

 三つの点が目と口に見えるのと、手足のように動く枝分かれした根。

 それ以外は、まんまワサビだった。

 鼻がツーンとするやつだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る