19 脳筋発動! えっ、筋肉付かないの?
……。
私
称号【
はぁ。
振り返ればもう、そこには見知った洞窟の面影はない。
かなり遠くまで走ってきたんだから、当然だ。
でも、やっぱり。
ぐやぢぃっ!
なんで、なんでこんな目に合わなきゃならんのじゃ!
私何かした?
いや、蟻からしたら確かに何かしたかも知れないけどさ。
生き埋めにしたり、仲間を食べたりとか。
でもそれはそれ、これはこれじゃん!
私から生まれたミギー達も、この世界で今までお世話になった宿主の形見の甲羅も全てを失ったんだよ?
ショックなんて、そんな一言じゃ語れないくらい悔しいよ。
私は分体との繋がりが切れるその瞬間の感覚を思い出した。
それを精神汚染と判断されたのも腹立たしいけど、そのスキルのレベルが上がった事で気が楽になった自分にも嫌気がさす。
でも、私は生きている。
全てを捨てて、その結果なんとか生きている。
正直、惨めだ。
そりゃ【
もう、こんな思いはしたくない。
逃げたくない……奪われたくない……。
私は、もう!! 二度と負けねェから!!!!
あいつらに勝って世界最強の植物になるその日まで、絶対にもう、私は負けねェ!!!!
文句あるか、森羅万象!!
《応:言っている意味が理解できません》
即答かよ。
そこは、笑って一言『ない!』って言えばいいんだよ!
分かってないな、森さんは。
雰囲気で伝わんないかな。
海賊の代名詞でもあるあの作品の名シーンが。
というか、理解できなくはないだろ!
《応:言っている意味が理解できません》
あ、そ。
まぁいいよ。
いつまでもクヨクヨしていたって、先には進めない。
これも、精神汚染耐性のレベルが上がった結果だからなのか、あまり絶望とか悲しみのようなものは感じていないし。
ちょっとだけ、ほんのちょーっとだけ。
爪の先の5億倍くらいの大きさの悔しさはあるけど。
いや、むしろ逃げることしか選択肢がなかったことに対して腹が立つくらいだ。
はっきり言って、そんなことをこれからも我慢できるほど、私は達観していない。
私が丹精込めて築き上げてきたものに横槍が入って、黙って奪われ壊されていくのを指を咥えて見ているなんて。
これからも、私は弱いからってその弱さを理由に逃げる一択なんて。
そんなことを続けていたら私が私自身を嫌いになりかねない。
それじゃあダメなんだよ。
私に必要なのは強さだ。
単純な力、今はそれが必要だ。
脳筋発動!
力こそ最大の防御なのだ。
まず筋肉、そして筋肉、最後に筋肉だ。
筋トレでもしてみようかな!
《告:マスターに筋繊維は存在しません》
無駄ですかー、そうですかー。
じゃあ、普通に私の最弱種族なりの戦闘でも考える?
それなら実戦を積むのが一番効率がいいよね。
落とし穴も立派な策だけど、それじゃあ今までと何も変わらないし。
それを突破できる相手や数で押し寄せてこられたら、私はまた逃げることしかできないのだから。
要するに一点に留まって倒せる獲物だけを退治するんじゃなくて、自分から行動を起こさなきゃいけないってこと。
もちろん、それにはリスクがあるけど。
でもそうでもしなきゃ、私は多分強くなれない。
森さん、分かってる?
私、強くならなきゃいけないんだよ。
《応:理解できます》
……ホント?
まぁ、分かってるならいいや。
とりあえず目先の目標は進化をする。
前目標だった衣食住は強くなってから。
文化的な異世界スローライフのことを考えることすら、現状の私には痴がましいんだから。
だから必要に応じて、その辺は考えよう!
でだ、有耶無耶にしていたけど、私はどうやらまた新しいスキルを獲得したみたい。
新たな称号【
確か、逃亡と隠密と気配察知と絶体絶命だっけか。
戦う事を心に決めた手前、なんというか、うん。
逃げ隠れするのに最適すぎるスキルを獲得したような気がする。
まぁ、生きてこその強さだから。
多少は逃げ隠れしても問題ないかな。
意思弱っとか、そんな事は言わせないよ!
逃亡、隠密、気配察知はなんとなく字面でわかるけど、Ex.スキルの絶体絶命が謎だわ。
いや、そもそも私が持っているEx.スキル陰合成も外道も含めて三つともよく分からん。
やっぱエクストラなんだし、手っ取り早く強くなるにはこの辺を使いこなせるようになりたいんだけどな。
でも、森さんは教えてくれないし。
いつになったら、私は
あっ。
森さん、スキルポイントって溜まっている?
《解:不足しています》
やっぱり。
あー。
どうしよ。
私は悩み考えながらも、レベル上げも兼ねた洞窟探索へと足を動かした。
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