32 養分不足
《マンドラン》
《レッサーマンドレイク》
《ディオナエア》
《ドクノコカズラ》
《
半分以上も分かんないんだけど。
今の私がプチマンドランだから、”プチ”の外れたマンドランってやつは大ワサビになるんだと思うのよ。
次のも知ってるか知っていないかで聞かれると知らない。
だけど、レッサーなマンドレイクなら想像も容易。
私の、プチマンドランの親戚みたいなもんでしょう。
でだ、問題は残り三つ。
説明求めます!
《解:ディオナエアは草です》
うんうん。
草なんだね〜。
どんな草なのかな〜。
イメージできないからしりたいなー。
《解:不明です》
だよね、知ってた。
で、次は?
《ドクノコカズラは蔦です》
そうか、ツタか。
確かに〇〇カズラってついてるし、毒のツタってとこかな。
《
……菌かぁ。
多分、字面的にはキノコなんだろうけど。
疫病の”疫”にシンプルな”苦”の文字からして、危険極まりない生物なんでしょう。
なるのは私自身だから、あまり関係ないけど。
むしろ強くなれるなら大歓迎!
そういえば、キノコは植物じゃなかったような。
さてさて、どうしたものかね。
森さんのレベルが上がれば、もう少し細かな情報も入るんだろうけど、現状ディオナエアは全くこれっぽっちも想像ができないわ。
うーん。
消去法でマンドランかレッサーマンドレイクかな。
ディオナエアはそもそも分からないし。
ドクノコカズラと
やっぱり、動き回れるっていうのは捨てられない。
じゃあどっちにするか?
それは非常に悩ましい問題である。
なぜなら、さっき森さんに二つの特徴を聞いた時どちらも『根です』としか答えてもらえなかったのだ。
マンドランか劣化版マンドレイクか。
……マンドランかな。
特に理由はないけど。
前回進化する時、プチマンドランを選んだ理由は確実にもう一回は進化できるだろうと見込んでだった。
それを考慮するならレッサーが外れる可能性のあるマンドレイクなんだろうけど、何を選ぼうと進化の上限はまだまだ来ないだろう。
それなら、レッサーが付いているやつよりもただのマンドランの方が良いかなって思ったんだけど。
森さんはどう思う?
《解:進化に要する養分が不足しています》
あっ、はい。
そういえば、前に進化した時は宿主を丸々養分にしたんだっけ。
森さんにどっちが良いか聞いたつもりだったのに、養分不足という新たな問題に直面するとは。
ぐぬぬ……。
前回は種から進化するだけで宿主だった大きな亀の甲羅以外全て消費した。
となると、今の私に必要な養分ってどのくらいだろう。
そうこう考えながら歩く私の耳に、地面を擦り這う様な音が聞こえてきた。
なんだろう、この音。
周囲を確認するも、何も姿は見えない。
視認範囲内の使えない気配察知にも引っかからないし、ミギーから貰った空振探知にも引っかからない。
でも、音だけはしっかりと聞こえる。
とりあえず、隠密を使って音の元を辿るか。
それから程なくして、私は音の元凶となる存在を視界に収めた。
体長は10メートルあるかないかくらい。
体色は濃い茶色で、手足のない蛇のようなフォルム。
首元だけマフラーを巻いたかのように少し位膨らんでいるその生物は、異常に巨大でヌメヌメの”ミミズ”だ。
更にそのミミズは、なんとあの石化チートの最強生物(主観)である怪獣ちゃんを食べているではないですか!
顔には口しかなくて、その口には剣山のように鋭い牙が無数に見える。
そんな幾千本もの牙が怪獣ちゃんに食い込んでいる。
ミミズの体には傷は疎か、石化した様子もない。
圧倒的な強者だったと思っていた怪獣ちゃんは、巨大ミミズにとってはただの餌でしかなかったとは。
私は息を殺して怪獣ちゃんが食べられていくのをただただ見ていた。
そしてミミズは綺麗に平らげると大きく長い体を動かして、にゅるにゅると奥の道へと姿を消していった。
世界は広いわー。
あの必殺石化ビームのチート持ちをご飯にするとか。
というか、多分だけど私にあのミミズ気付いていたと思う。
餌とすら認識されない哀れな道端の石ころって感じ?
いや、幸いと捉えるべきだな。
そんなことはどうでもいいか。
そういえばってほどでもないんだけど、ミミズは土壌を良くしてくれるっていうのは有名な話だろう。
ミミズの糞で良い土が作れるとかなんとか。
授業でやった気がする。
そして目の前には怪獣ちゃんを食べながら、ところてん形式でミミズのお尻から排出された物体Xの小山が。
ゴクン。
森さん!
《解:糞です》
……。
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