K2 目覚めたら人外、そして魔王が?
教卓で亀裂を見て気を失い、目を覚ましたらワタシはワタシではなくなっていた。
……というか、人間ですらなくなっていた。
何これ?
悪い夢か何か?
ワタシは視線を自分の手に落とすと、そこにはやっぱり見慣れたいつもの手ではなくモサモサふわふわな鳥の手があった。
片翼だけ大きく、片翼だけ小さい天使のように真っ白な翼が腕があるはずの場所に生えていた。
額には翡翠色の宝石みたいな物が埋まっている。
整った顔立ちだけど、中性的。
一応女のままみたいだけど。
髪の毛は染められたのか何なのか、柔らかく薄い黄緑色だ。
足は猛禽類のそれだ。
隣にはワタシと瓜二つな子が眠っている。
違いといえば、翼の大きさがワタシとは真逆ってことくらい。
夢にしては出来過ぎだし、ワタシは人体実験でもされたのだろうか?
何これ、本当にどう言うこと?
しかも、ここはどこなの?
空に浮かぶはずの雲と目線の高さが一緒。
いや、少し下に雲があるくらい高度は高い。
それでいて、巨大な鳥の巣みたいな物がいくつも雲の上に乗っている。
乗っているように浮いているんじゃなくて、本当に乗っているのだ。
雲は水、水蒸気の塊のような物。
触ることなんて、まずあり得ない。
それなのに、私の目の前にはその雲と巨大な鳥の巣でできた街のような物が広がっていた。
「まぁ、目が覚めたのね? おはよう」
声のする方を振り返ると、空から大人の色気のある長髪な美人、だけどワタシ同様に人外な人が舞い降りた。
翼は左右対称で、ワタシや隣で眠っている子みたいにアンバランスじゃない。
彼女はワタシの横に降り立つと、翼を折り畳み翼の中間部分にある手のような部分でワタシを抱き抱えた。
「おはよう、ピリア」
ピ、ピリア?
ワタシのこと?
「ピリムはまだ眠っているの? そろそろ起きなさいよ」
「ムゥ……」
「お姉ちゃんも何か言ってあげて」
「……は?」
ちょいまち。
これは本当にどう言うことなんだ?
ピリア、ピリム?
お姉ちゃん?
……。
ふと、ワタシに思い当たることが浮かび上がった。
それはこの夢を見る前の倉田先生との会話。
これは、もしかして異世界……なの?
「どうしたの?」
ワタシを抱き抱える女の人が、心配そうにワタシの顔を覗き込んできた。
「い、いや。なんでもない」
「そう?」
「うん」
やっぱ、ワタシがピリアでお姉ちゃんってことか。
ワタシは本当に生まれ変わってしまったの?
ワタシは何に生まれ変わったの?
天使?
キメラ?
「……おはよ」
ワタシが悩む中、目を擦りながら弟? のピリムが目を覚ました。
「そろそろお父さんが帰ってくるから、お祝いの準備の手伝いしてね」
そう言うと、ワタシを抱き抱えている女性はワタシを降ろして飛び立っていった。
なんとなくだけど、彼女はワタシのお母さんなのだろう。
ワタシはピリムへと視線を移した。
「……また寝てる」
何この子。
さっき起きたのに、まだ寝るの?
ワタシは屈んで、ピリムの頰を突いてみた。
一瞬眉をしかめるが、特に起きる気配はない。
そんな時だった。
ワタシの目に熱が集まったかと思ったら、急に何か出てきたのだ。
《種族:ハーピーLv.2》
《名前:ピリム》
《状態:睡眠》
《称号:【
な、何これ!?
目の前に表記されている、ピリムの情報板は触れることはできない。
現実味のないゲームのようなステータス。
レベルの概念があるなんて……。
ち、ちなみにワタシの情報とかもわかるんじゃ?
《種族:ハーピーLv.2》
《名前:ピリア》
《称号:【
ワタシを見ようとしただけで、似たような物が出てきた。
でも、やりすぎると目が熱くて痛い。
それにしても、これは非現実的だわ。
ワタシはハーピーでしかも、称号に外界者ってのがあるってことは、そう言うことなのだろう。
ヨソモノってルビがなんか引っかかるけど。
それに、ワタシにもピリムにも同じ称号の【
お母さんと違って、非対称の翼を持ってるから、とか?
称号をワタシはまた
《
《魂の片割れ。一人で半人前、二人で※■※▲》
またなんか出た。
見えない所もあるけど、要はピリムと一緒に居れば大丈夫ってことかな?
はぁ。
整理しようか。
まずワタシは亀裂に巻き込まれて死んで、気付いたら神話の化け物のハーピーに転生したと。
ワタシはピリムを再び突く。
ちょっと眉が反応を示すけど、やっぱり起きる気配はない。
なんか可愛い。
混乱していても、癒しがあるとなんだか心が落ち着く。
「今帰ったぞ!」
次にお母さんとは違う声が聞こえたと思ったら、ワタシとピリムに影が落ちた。
振り返ると再び目が熱くなる。
《種族:ハーピーロード》
《名前:ピュロリアス》
《状態:※■■※■※▲》
《称号:【
ほとんど見えなかったけど、見えた部分だけでも分かる。
ただの化け物だ。
統治者で魔王種でロードって。
《統治者:領域を統治するのに値する器を所持する証》
《魔王種:魔王へと進化可能な存在》
《統治者階級を持つ者が所持する称号》
いったい何者?
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