25 キノコ狩り
逃げ切れたけど、コレどうしよう。
私は感覚が死滅している石化した右手と右足を振った。
硬くなっているとか、そういう比喩じゃなくてまんま石になったみたいだしな。
……あ、れ?
これ、考えようによっては強化されたのでは?
流石に怪獣ちゃんみたいな、純粋なチートを前にしちゃったら意味ないけど、ネズミとかナメクジ程度ならこの石化した手で脳天ぶっ叩いたら悪くないのかもしれない。
有り体に言うなれば、武器を手に入れたってとこかな。
早速、試してみたいところなんだけど、手ごろな相手はいないかな。
うーんと、前方には敵機なし。
左右後方異常なし!
《応:言っている意味が理解できません》
そんなこと言わないでよ森さん。
こう見えて、私だってテンション高めを維持していないとやっていけないんだよ。
こんな過酷な命をチップにしたサバイバルゲームなんて。
ていうか、さっきから聞こえてくるこの陽気なリズムは何だろう?
シャカシャカとマラカスを振るような音、そして甘い匂い。
もしかして、人間?
人間が夜営か何かしてる?
最初に出会った人間には攻撃されたけど、こんだけ陽気な人間ならあるいは。
私は音のする方へと足を運んだ。
そしてそこで目にしたものは——
《解:キノコです》
ですよねー。
こんな所に人間がいるかもなんて、端から考えちゃおらんのですよ。
視線の先には大きな傘を頭部に持ち、両手からも傘と同色のキノコを生やしマラカスの様に振って踊るキノコが複数体いた。
同色とは言っても、赤や黄や紫など色んなキノコがいるけども。
数はあっちの方が明らかに上だけども、正直キノコに負ける気がしないんだが。
実際ネズミの方が怖いし。
多分、状態異常関連の何かしらはやってくるだろうけど、それなりに耐性はあるし、気をつけてさえいれば奇襲ができる。
そして、何より私の右手右足は石化したおかげで先端がそこそこ鋭い。
ということで、いくよ森さん。
《応:是》
私は隠密で馬鹿騒ぎするキノコの背後へとこっそり回り込んだ。
そして、全ての食材に感謝していただきます!
釘パンチ!
私は背後から石化した右手をキノコの背にブッ刺した。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【隠密Lv.1】が【隠密Lv.2】へとレベルアップしました》
っしゃオラ!
キノコ狩りじゃーっ!
グシャッ——…よこせ経験値っ!
ザシュッ——…かせげ熟練度っ!
ザックシ——…これぞ修行じゃ!
私は8匹のキノコを瞬殺にした。
ワンサイドゲームは気持ちがいい。
キノコの反撃がなかったわけじゃないけど、なんか粉飛ばしてきたくらいだった。
あとはー、歌ってた?
アレ何してたんだろう。
まぁいっか。
こんな私が言うのもアレだけど、キノコ達も十分紙防御でした。
あとキノコを刺している最中に、麻痺耐性のレベルが1上がりました。
《告:プチマンドランはLv.4からLv.5へとレベルアップしました》
おっ?
狩りが終わってしばらく経ってのこのタイミングってことは。
フッ、まだ息があった奴がいたのか。
やったー、やったよ森さん!
私レベルアーップ!
さてさて、早速もぐもぐタイムと洒落込もうじゃないか。
私は仕留めたダンシングキノコを一ヶ所へと集め、そして赤い傘の個体に齧り付いた。
んー。
しっくりした食感はまんまキノコ。
味は言うまでもなく美味しくはない。
というか、毒キノコだし。
……そもそも私、キノコ自体あんまり好きじゃなかったの忘れてた。
結果としてはレベルアップしたし、食料ゲットしたし、石化も使い方によってはだったし悪くなかった感じかな。
いや、本当に石化した手は強いよ。
この背後に回って一刺しは今後も積極的に使えるかな。
ぐへへ。
《告:熟練度が一定に達した為、Ex.スキル【外道Lv.1】が【外道Lv.2】へとレベルアップしました》
……へ? なんで?
げ、外道? 私が?
というか、私Ex.スキルなんて使った覚えないよ?
え、私そんな酷いことした?
ねぇ、森さん!
ちょっと!
《……》
ちょっとショックだわ。
そんなふうに思っていたなんて。
私は少しセンチな気分になった。
…——食後。
私は簡易マイホームを建設していた。
というのも、流石に眠たくなってきたからである。
あ、それじゃあ少し語弊があるな。
この体になってから私には睡眠がどうやら不要みたい。
半起半眠状態を維持している感じで、要するに睡眠が必須というわけじゃない。
ただ、元
というか、寝たい。
ま、”眠い”というのは願望ってことであって。
修行は勿論するけど、ずっとは嫌なのです。
土にさえ埋まれば私は寝れる。
だが、野晒しで寝るには安全性に心許ない。
だから私は堀を掘った。
二重構造の堀、その中心地で私は眠る。
堀の形状は以前落とし穴を作った時同様で、上部には返しがある。
だからそう簡単に這い上がることはできないはず。
せっかく穴掘りスキルがあるのに、使わないのはもったいないじゃん?
これは後付けとかじゃなくて、修行の一環なのだ。
穴掘りスキルのレベルは上がらなかったけど、こういう”ちりつも”が大事なんだよ。
ということで、おやすみ〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます