最終形態はなんですか?~生態系ピラミッド最下層な私は成長と進化を繰り返して頂点を目指す~
アユム
序章
00 プロローグ
魔物を統べる者を”魔王”と呼び、人族の希望として魔を打ち滅ぼすものを”勇者”と呼ぶ。
両者の戦いは太古の時代から現代まで、時代を超えて幾度となく繰り返されてきた。
それが、この世界の摂理であり運命でもある。
それらは物語や伝説の存在ではなく、もっと現実的な話で、二つの存在は一つの時代に必ず存在してきたのだ。
魔王がいなくなった時、その代で最も強力な力を持った魔物もしくは魔族が次代の魔王として君臨する。
魔王は滅ぼしても、居なくなることはない。
故に、魔王の性質は多種多様で千差万別だ。
魔導を極め、天変地異を操る魔王もいれば、物理ゴリ押しの筋肉達磨のような魔王もいるし、魔王本人の力と言うよりは統率力に秀でた知謀と物量を力とする魔王もいた。
力も性格も種族も違うそんな歴代の魔王達だが、一つだけ共通するものがある。
それは魔族の繁栄のための、人族との敵対思考だ。
そういった魔王と相対するのが人族の希望、勇者である。
勇者とは異世界から”勇者召喚の儀”でお供含めて七人、世界の均衡を崩さないためにその代の魔王の力に合わせて、女神の加護を受け女神によって召喚された人族のことだ。
しかし、人族の希望になり得るはずの”勇者召喚の儀”によって悲劇が起こってしまった。
問題だったのは、今代の魔王の力が異常だったと言うところだろう。
歴史上類を見ないまでの膨大で強大すぎる魔力と武力を持ち、それでいて智謀にも長けている最強で最恐の存在、魔王サリタン。
そんな魔王に見合う力となる勇者を、世界を渡って七人も召喚するとなるとどうなるか、誰が想像できよう。
世界と世界を繋ぐ最高位の召喚術は時空を歪め、勇者のいる世界の魂を無差別にこちらの世界へと逆流させてしまったのだ。
――皆さんこんにちは。
私はこれといった取り柄も特徴もない、しがない女子高生です。
普段ならば、今この時間は六時限目。『かがく』はかがくでも化け学こと化学の時間のはずなんです。
ウチの学校は他校と比べると、それなりに進んでいるおかげか授業のやり方も斬新だった。
今、化学の授業にて普段はできない実験をVR技術を通して体験するということをやっていたはずなんです。
お昼を食べ終え消化が始まり、一日の学校の疲れと相まって眠気が最高潮のこの時間に。
私はいつも通り机に体を預けて眠っていました。
本当だよ?
それなのに……なんで……?
甲高い警報が校舎中に響き渡り、教室内外問わずザワつき慌てふためいている。
窓の外、校庭を見ると体育の授業中だった隣のクラスが校庭の中心に集まっている。
「そこっ、早く机の下に入りなさい!」
「あ、はい」
VRグラス越しに先生が私に注意した。
なんてことはない、いつも通りの日常。
それは突如として現れた空間の歪みと、
この時の私は知る由もない。
校舎が崩れるほどの大地震だったというのに、ニュースや新聞に載るどころか地震そのものが起こらなかったかのように、
そうして、私の教室にいた教師一人と生徒二十八人は地球から姿を消した。
まるで元から存在しなかったかのように。
********************
……
…………
………………痛っつぅ。
ん? ここどこ?
なんか、ふわふわする。
病院のベッド、かな?
いきなり地震? が起こったかと思ったらなんか頭上に亀裂が現れて?
あれは幻覚ってやつだったのかな?
ん? あれ!?
体が動かないんだけど!?
え、待って、どゆこと。
落ち着け、いったん落ち着くんだ私。
まず、視覚はない……ということは失明?
体が動かないし、地震で落石かなんかで不随になっちゃった?
でも、一瞬だけ激痛が走ったけど、今は別に痛いところなんてないし。
というか、フワフワしている感覚はあるんだよね。
風も感じるし、外?
うん、とりあえず、状況を整理しよう。
たしか私は化学の授業を聞き流しながら、うたた寝していた。
そしたら、地震予測の警報が鳴って、地震が来たと思ったら亀裂? が現れて、かと思ったら全身引き裂かれるような、隙間なく針で刺されるような、そんな激痛が襲った――と。
いや、どんな状況だよ!
整理しても、これっぽっちも理解できんわ!
で、今は風を感じながらフワフワしている?
……あ、もしかして、死んだってことなのかな?
今、天国的なところに向かってる感じ?
要するに、今の私の状況はこう言うことになるのかー。
①地震で怪我を負い、全身不随にあい失明している。
②死んで、天国へと昇天中。
③気の向くまま風に漂う妖精さんになっている(笑)
まぁ、冗談は置いておいて、マジでどうしよ。
とか考えていたら、突然突風が吹いた。
クォーーーーッ!
うわああああぁ、飛ばされるううぅぅ…………?
って、飛ばされるってなんだよ。
いや、もう突っ込みどころが多いから、この際なんでもいいや。
なんでもよくはないけど、とにかく、今は外にいるってことだから、消去法で①は無くなったよね。
もし生きてたら瓦礫の中か、病院だし、「飛ばされる」なんて思わんでしょ。
ってことは、②の死んだ……にしては、感覚がリアルというか。
日の光も感じるし、風も感じる。
死ぬって体験したことないからわかんないけど、こうも自我がはっきりしてるもんなのかな?
実際のところは、死んだということを認めたくないだけなのかもしれないけど。
それでも死んだっていうのとはちょっと違う気がする。
なんていうの、本能? そう、本能が!
本能がそう告げているの!
③は冗談のつもりだったけど、風に体を預け飛んでいる感じがあながち間違っていないんじゃないかな?
とはいっても、何がどうなっているのか見えも聞こえもしないからなぁ。
《応:スキルポイントを100使用し、スキル【視覚Lv.1】を取得しました》
――うわっまぶっ!?
私は違和感を覚えてからずっと、ブラックアウトしたかのようなぼんやりとした感触と視界いっぱいが真っ黒な感覚だった。
それがなんてことでしょう、少しだけ視力が戻ったではありませんか。
少しずつ色づく世界、かなりぼやけているけど多分綺麗な青色の空、下に見えるは森かな?
なーんだ、本当に飛んでいただけか。
ウフフ、私、森の妖精さん。
よう……せ……い。
なわけあるかーい! ってか高い、怖い!
視力が少し戻った私は、今置かれている状況を理解した。
そう、大空をふわふわと漂っているという意味深な現状を。
こんなの、落ちたら死んじゃうじゃん!
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばーーい!
いまだに声が出せない私は、心の中で思いっきり発狂した。
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