23 バッドステータス
とりあえず、ナメクジには勝てたけど……。
アイツ、いつの間に瘴気なんて出してたの?
息をするかのように少しずつ瘴気をばら撒くとか、害でしかないな。
地球のナメクジは確か土をよくするとか、そんな効果があった気がするんだけど、こっちの巨大ナメクジは救いようがない害虫だな。
私は土を掘り返して、伸びる口を掴んで絶命しているナメクジを引き摺り出した。
言っては何だけど、食指が全く進まない。
早くも死後硬直で体の大きさが半分とまではいかないけど、かなり縮こまって硬くなっている。
体表の粘液だった物も白い膜みたいになっている。
いや、食べるよ?
食べるんだけどさ。
ぐぬぬぬぬ。
私はナメクジに付着する土を軽く払い、白い膜を剥がした。
ふぅ。
覚悟を決めろ、私。
大丈夫、もう大丈夫。
いただきます!
私は大口開いてお尻の方から齧り付いた。
ムギュっと食い込むお尻、生きていた時とは全く違う噛み応え。
私は目を見開き、ナメクジを見た。
そしてもう一口グチャリ。
……ぅ、うまっしゃあー!
なんだこれ、超美味しいんだけど!?
予想を裏切る美味しさ。
ぶっちぎり、というか比べるのも痴がましいレベルだよ!
貝を食べているみたい。
食感も味も良い!
目を瞑ってさえいれば、最高の獲物かもしれない!
瘴気持ちだから不味いかもって思ってたけど、これはたまらんわ。
醤油が欲しくなるけど、今まで不味い物しか食べていなかった手前、感動すら覚える味わいだわ!
泣ける、泣けてくるよ!
《告:熟練度が一定に達した為スキル【味覚Lv.1】を獲得しました》
何がスキル味覚じゃ!
そんなもんがなくとも、味を感じてきたわ!
というか、なぜ今さら。
衝撃のある不味さなら他で味わったよ?
美味しくないとダメってか。
強情な奴め。
って、そんなことより感動を共感しようよ。
うまいうまい、あーうまい。
私は森さんからの報告に文句を言いながら、ナメクジを頬張った。
そしてあっという間に、ナメクジは私の腹へと吸い込まれていった。
骨もなくて食べやすかったし、何より美味かった。
修行を始めた私へのご褒美だわ。
……ん?
ナメクジを完食し、洞窟の壁面にもたれ掛かるように座る私は、自分の手に視線を落とした。
なんか、動かしにくい。
痺れてる?
私は手足をジタバタと動かす。
イダっ。
するとビリビリと痺れが私の体内から襲ってきた。
何これ……というか息苦しい。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【麻痺耐性Lv.1】を獲得しました》
は?
麻痺!?
ナメクジ食って麻痺ったの?
ゔ、イタっ、イタタタタタタ——…
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【瘴気耐性Lv.1】が【瘴気耐性Lv.2】へとレベルアップしました》
《熟練度が一定に達した為、スキル【麻痺耐性Lv.1】が【麻痺耐性Lv.2】へとレベルアップしました》
《熟練度が一定に達した為、スキル【毒耐性Lv.3】が【毒耐性Lv.4】へとレベルアップしました》
なっ!?
何、このバッドステータスのオンパレードは!
一気に麻痺は2も上がったし、レベルの高い毒もとか。
耐性のおかげでちょっと楽にはなったけど、何故?
もしかしなくても、ナメクジ食べちゃダメなやつだった?
酷い、酷いぞ!
ご褒美違ったんかい。
美味いけど食べたらバッドステータス喰らうとか、本当に
これも生存競争を生き抜くための能力なんだろうけど、死んだ後にまでこんなに相手を苦しめなくても良いじゃんか!
やっとまともな獲物を見つけたと思ったのに。
まだ完治していない、というか少しお腹も痛いし痺れも残ってるし。
うがーっ!
美味しいご飯を食べたいって思うのは、そんなに悪いことなのか!
絶対にもっと悪いことしている人はいるのに、なんで!
質素に慎ましやかに生きている私に対してする仕打ちじゃないよ。
なんでよ、なんでなんだよ。
あれ、涙が……。
この仕打ちはないわー。
《告:条件を満たした為、称号【
《称号【
うるさいやい!
称号与えれば喜ぶとでも思っているのか!
使えない称号、意味不明な用途不明なEx.スキルなんて無いに等しいんだよ!
そんなことより飯をくれ。
美味い飯を、食べても無害な飯をくれ!
というか、何が悪食だ。
というか、条件ってなんだよ!
というか、誰も好き好んでこんなもん食べないやい!!
なんか腹が立ってきた。
悪食だの日陰者だの無慈悲だの外道だの、好き勝手言いやがって……。
私は、好きで、こんな生活をしているんじゃないんだよーっ!
生きていく上に必要な食事を、何だと思っているんだ!
神、もしくはそれに類似する存在X。
私は今日の恨みを忘れないからな。
食べ物の恨み、いつか思い知らせてやる。
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