22  私を食べた不快な魔物

《告:ラーロルドラットピードの生命活動の停止を確認しました》

《プチマンドランはLv.3からLv.4へとレベルアップしました》




 レベルアーップ!

 よっしゃオラー!

 久々のレベルアップ、キタコレ。


 ネズミよ、唾液の件はレベルアップに免じて許してやろう。

 安らかに眠れ。


 毒耐性のレベルも上がったし、新スキルの逃亡のレベルも上がったし、出出しは上々!

 さてと、じゃいただくとしようかな。


 グチャリ——…


 私は仕留めたネズミを頬張った。

 相変わらず酷い味だわ。

 ジャンクフードが食べたいなぁ。


 グシャリ——…


 まぁ初戦はなんとか勝てたけど、こんな戦闘を続けるとか命がいくつあっても足りないよな。

 正規ルート、正面からの戦闘を今後は避けていく方針でいこう。

 いや、ずっとじゃないよ?

 やっぱり私は弱い存在だから、今のままではやっていけないってだけ。

 修行して、強くなったら勿論正面から一発決めて見せるから。


 ムシャリ——…


 ぶっちゃけ、ここまでスキル頼りな生体はいないんじゃないかな?

 私が元人間だから何とかなっている節があるけど、そうじゃなかったらステータスでゴリ押しされて、私の種族が淘汰されかねないのに。

 よく絶滅しなかったな。


 はぁ、この戦いで罠とミギー達の偉大さが分かったよ。

 遠距離攻撃手段があればもう少し楽なのかもだけど、私の唯一にしてまともな攻撃手段は噛みつくっていう最初の草原のポケ○ンレベルだし。

 そして生命吸収のコンボ。

 これ以外で倒すとなると、罠しかない。


 私は典型的な近接型のくせにHP少ない、防御力は紙、攻撃力はカス。

 マジで生きてるの奇跡だな。




《告:防御力はスキル【硬化Lv.2】で多少は補えます》




 え、あ、そう?

 完全に忘れてたわ。

 宿主のスキルだったっけ?




《解:是》




 そっか。

 まぁどっちみち課題が山積みなのには変わらないんだけどね。

 最近、森さんの返答率が高くなったような……。

 気のせい?






 …——ふぅ、ごちそうさまでした。


 私はネズミを平らげた。

 目の前には骨だけになったネズミがいる。


 じゃあ早速だけど修行再開といこうかな。

 と言っても、闇雲に動いたらさっきみたいに接近されるまで気づかないなんてこともあり得るから、目標を決めよう!

 まず、私は進化したい!

 でもレベルがどのくらいになったら進化するかわからない今、慎重にレベル上げをしよう。


 私は腰を低くして、気配察知と隠密を常時発動状態にした。

 今はレベルが低くても熟練度が上がれば、後々私を助けてくれる可能性が高いスキルだし。


 それからすぐのこと、私は単体でいる魔物を発見した。

 それも私の中では因縁の相手。




《解:ナメクジです》




 あれは忘れもしない、私がこの世界で目を覚ましてレッサーリトルバグタトルに寄生してすぐの時だった。

 あいつ、宿主じゃなくてまだベビーだった私の方へ一直線にきたと思ったら、捕食しやがったのだ。

 私を食べた数少ない魔物の一体、ナメクジめ。


 別個体だろうけど、あの時の恨み。

 お前で晴らしてやる!


 ここに雑魚vs雑魚ナメクジの戦の火蓋が切られた。


 奴はまだ私に気付いていない様子で、背を向けている。

 それに動きは見るからにトロい。

 慢心はしているつもりはないが、これは勝ったな!


 私はネズミ同様ナメクジの背後から噛み付いた。

 ——が。

 その弾力とネバネバの粘液に阻まれて、無に終わった。


 ウゲェ。

 気持ち悪い、気持ち悪い。

 口の中ネチョネチョだし、噛み応えも最悪。

 とにかく不快!


 私がナメクジから離れると、流石に私の存在に気付いたのか目線がギョロっと私を捉えた。


 何こいつ。

 噛みつくの効かないの?

 というか、ナメクジの髭? が触手みたいにウネウネ伸び始めてんだけど?

 動き遅いけど、ちょっとマジ無理。

 喧嘩売る相手間違えた!




《告:熟練度が一定に達した為、スキル【精神苦痛耐性Lv.1】を獲得しました》




 精神汚染の次は精神苦痛耐性ですか。

 ってか、そんなことどうでもいいから何か使えるスキル知らない?

 ジリジリと迫ってくるナメクジに対して、【精神苦痛耐性Lv.1】じゃ嫌悪感が消えない。




《解:スキル【寄生Lv.3】の——…》




 却下!

 大却下だ!

 あんなのに寄生したくないわ!

 他は?




《解:……不明です》




 え、拗ねた!?

 なんでよっ!

 ちょっと、森さん!

 あー、本当無理だって!

 これはある意味でピンチだよ。

 メンタルクラッシャーだよ、ナメクジのクセに。

 だからって、コイツから逃げるのも私の尊厳が。


 んにゃろう。

 焼けくそだ!


 私は穴を掘った。掘りまくった。

 掘っては這い出て、掘っては這い出て。

 そして穴へとナメクジを誘導するために私自らが穴へと飛び込んだ。

 案の定、ナメクジは私に釣られて穴に落ち——…


 ってコイツ、壁這えるのかよ!


 いや、関係ない。

 このスピードなら、這い上がるよりも生き埋めの方が早い。

 視界にさえ入らなければ、ナメクジなんかどうってことない!


 私は全力で穴の中にいるナメクジに土を被せまくった。

 ナメクジは土を被せられて苦しくなったのか、呼吸の為に口だけ伸ばす。


 地面から細長いヌメヌメの口が出ているっていう、かなりシュールで気持ちが悪い光景だけど、都合がいい。

 私は口の中目掛けて手を突っ込んだ。


 キッツい。

 ヌメヌメレロレロで不快でしかないんだが。


 だが、私は更に手を奥へと突っ込んでスキルを行使した。

 生命吸収! 生命吸収! 生命吸収ーっ!




《告:マイアズマスラッグの生命活動の停止を確認しました》

《熟練度が一定に達した為、スキル【瘴気耐性Lv.1】を獲得しました》




 瘴気って……。

 マジですか。

 

 はぁ。

 とりあえず、我勝利なり。

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