28 vs蟻——③
逃げ道作らないで立て篭もるとか、馬鹿なの死ぬの?
自分で作った堀に自分が首しめられるとか、アホすぎでしょ!?
あーもうっ、ギシギシうるさいっ!
今かまってあげられる程余裕ないから、大人しくしてて。
私は同時に頭を出した二匹のアリを叩き落とした。
というか、まだ全然10分経っていないのに、一対一の状況が厳しくなりつつあるんだけど。
と、とととにかく、株分け!
株分けからの寄生をしよう!
今の赤ゲージなら死ぬ可能性はないし、生命吸収要員も今なら確保できるし。
できるよね?
前はできなかったけど、今だったら。
私は左手を摩るが、やはり震えが……。
うがーっ、自分で自分の腕を捥ぐとかできるかー!?
私が人外だったとしても、どんなに精神苦痛やら精神汚染やらで耐性を得ても、無理なものは無理だー!
どうしよって、悩んでばっかだな私は!
《応:是》
肯定しなくていいから、案ちょうだいよっ!
……いや違うか。
これは自分で撒いた種なんだから。
状況を見極めなきゃ!
よし、まずは内側の堀にはアリが2、4、6——…
うん、考えるのはやめよう。
内側で優に20を超えるアリだ。
外側の堀に引っかかるアリの数を考えるだけで、頭が痛い。
今は少しでも数を減らして、私自身が強くなる。
私は内側の堀にアリが増える前に数を減らす、一匹でも多く減らす。
ふぅ、覚悟はできた。
やるぞ。
私は堀への飛び降り様に一匹のアリの腹部に右手を突き刺した。
ギシィと甲高く鳴くアリに馬乗したまま、私はアリの生命力を喰らう。
まずは1。
私はそのまま仕留めたアリの頭部を胸部から引き千切り、他のアリへと投げつけた。
これに引き寄せられればいいんだけどー……お!?
アリの目の色が黒から赤へと変わったんだけど。
怒ってるな、これは。
ま、そりゃそうか。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【精神汚染耐性Lv.2】が【精神汚染耐性Lv.4】へとレベルアップしました》
おぉ、一気に2も!?
って、騙されんぞ。
流石にやっていることが鬼畜だったか。
死者への冒涜もいい所だし。
でも、なりふり構っていられないんだよ!
私は目を赤く光らせ、ギシギシと鳴き体を小刻みに震わすアリに突進を仕掛けた。
アリもタダではやられない、百も承知だ。
私の突進と共に、目の前にいる複数体のアリも突進を始める。
アリの武器は何と言っても、その強靭な顎だろう。
一度は潰せたんだから、二度も三度も変わらない。
視力で勝っている私の方が空間把握はできている、はずだ!
私は一度脳内で思い描いた行動を再び取った。
顎の間合いを見切り、タイミングよく飛ぶ。
ジャンプ力が足りないなら、二度飛べばいい。
一度目のジャンプでアリの顎を躱して頭を踏み台に二度目のジャンプ。
私は再び別個体のアリの騎乗に成功した。
こうなって仕舞えば、私の勝ちだ。
上に乗りながら脅威の顎を何度も蹴って砕き、生命吸収で全て吸い取って終了。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【生命吸収Lv.3】が【生命吸収Lv.4】へとレベルアップしました》
ハァハァ……。
たったの、二匹を仕留めただけでこの疲労って……。
私の生命力の赤ゲージはほぼ全回復したけど、体力というか気力スタミナが保つ気がしない。
でも、まだ足りない。
私は今にも私に噛みつこうとするアリ達を見据えた。
アリは顎を大きく広げて口内? をおおっぴろに広げていた。
これなら、わざわざ噛まなくても手をあそこに突っ込むだけで済むかも。
私は駆け出しの一歩を踏み込んだ。
その瞬間、アリ達は口内から霧吹き状の液体を吹き出し、私はソレをもろに浴びた。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【酸耐性Lv.1】を獲得しました》
あんぎゃああああああぁぁぁぁ!?
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
と、溶ける!?
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【酸耐性Lv.1】が【酸耐性Lv.2】へとレベルアップしました》
ぐうぅっ……。
痛い、浸みる!
私のボコボコワサビボディーが溶けていく。
《告:熟練度が一定に達した為、スキル【酸耐性Lv.2】が【酸耐性Lv.3】へとレベルアップしました》
いや、レベルアップ早っ!?
……ま、おかげで楽になったけど。
まだ痛いことには変わりないけどね。
こんだけポンポンレベルが上がったってことは、それだけ強力な酸だったってことか。
そういえば、前々から思ってたけどこういうレベルアップって森さんが申請か手続きか何かしてくれているのかな。
”スキルの熟練度が足りてますよ”的な感じで……。
それは無いか。
スキルの森さんが誰に進言するんだよって話だし。
《応:言ってる意味が理解できません》
そうですかい。
分からなくても大丈夫な話だよ。
私の独り言だから。
さて、どうする。
近接だけだと思っていたアリ共が、遠距離の酸攻撃持ちだったとは。
私の体は疲労と酸でボロボロだし。
とりあえず今は安全な上に戻ろう。
私は壁面に飛びつき、そして接着と同時に両手両足を突き刺した。
このまま上に上がって、私はどうするんだ?
分からない。
でも、ここにいても——…
…——ブチィッ
痛っ。
違和感に気づいた時にはもう遅かった。
私の左手はアリの口の中へと吸い込まれていった。
その時、私の中にあるストッパーというか。
左手と一緒に、私の僅かな罪悪感と善意のタガが外れた。
元々する予定だったし、都合がいいではないか。
私はまだ少し見える左手に株分けの意識を向け、それと同時にアーミーアントへの寄生を命じた。
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