45  初陣準備

 植物衆が仲間プチマンドラン、個体名阿形あぎょう吽行うんぎょうのレベルアップ方法は瀕死にした魔物にとどめを刺させるという、所謂介護プレイでやろうかなと思っている。

 種は寄生能力があると言ってもすぐに相手を操れるようになれるわけじゃないから、いい感じに弱っている魔物がいたらそこに植えるか、拠点の防衛に使おうかなと考えています!


 要は、今すぐ育成しなくちゃいけないのは阿吽の2本ってこと。

 私の時はネズミを使ってレベル上げしたけど、あまりお勧めはできないしな。

 あれは上級者コースで強いから。




《告:ラーロルドラッドピードの脅威度は——…》




 あ、そういうマジレスいいから。

 全て私基準だから。

 とりあえず、ハエ狩りかな。


 今までは自分から探すしかなかったけど、これからはスキル【魅惑香Lv.2】のおかげで待ち伏せして狩ることができる。

 とうとう本物の意味で食虫植物の仲間入りってわーけ。


 私達のシマは上層へとつながる穴から半径20メートルくらいある。

 これが大きいのか、はたまた小さいのか。今の私たちにはわからない。


 シマの縁に種達を均等に植えて、バリケード的な感じで根を張らせる。

 当然、自然の棘のある蔦とかも張り巡らせるけど、種達を一番危険な外側に配置したのにはちゃんとした理由がある。


 思い出されるは、あのアリ戦だ。

 気づいた時にはもう手遅れで、包囲されていた。

 あの時も種は蒔いていたけどそれは落とし穴要員で、索敵のためじゃなかった。


 だからこそのバリケードである。

 思念共有は読心術とは違って多少距離があっても使えるという点があるのだ。

 この距離は森さん曰くレベルに関係するみたいだけど、20メートル程度であれば一応聞こえる。


 だからというべきか種達の綿毛に何かが触れた場合、もしくは見つけた場合すぐに私に知らされるというわけだ。

 これで不意をつかれるということはなくなった。


 ……まぁ、不意をつかれないってだけでその後の対処法はまだ確立されていないけど。

 でも地の利はこっちにあると思いたい。

 シマに元から生えている草木花で自分の身や落とし穴等の罠を隠しながら、対処する予定。


 で、シマの内側から魅惑香を使ってハエを誘き出す。

 安全に配慮して前線の種達は基本的には参戦させずに、私と阿吽の2本でこれを処理。


 あ、そう言えば森さん。

 阿吽の2本は私のスキルって使えるの?

 元々は私だったわけだし。




《解:マスターの所持スキルの一部は行使可能です》




 うーん。

 その一部の中に硬化か咬合力か毒根はある?

 ってかそれ使えなかったら攻撃スキルなしでやらなきゃいけないから厳しいんだけど。




《解:毒根はマスターがしもべのプラスティックプラントが所持しています》

《スキル【硬化】及びスキル【咬合力】を個体名『阿形』『吽行』が所持しています》




 お、おう。

 種達毒根持ちだったのか。

 毒のある寄生植物とか、なんかいいなぁ。

 私なんて希少な薬材料となる植物の変異種、歩く大根やで?

 阿吽は歩くワサビだけど。


 よくわかんないんだけど、そういったスキルって完全にランダムで共有されるの?




《解:否》

《マスターによる思いと願い、それに答える分体の器によって反映されます》

《これはEx.スキル【食物連鎖Lv.1】の効果の一部です》




 でたよ、意味不明のEx.スキル。

 効果の一部ってことは他にもあるってことかな。

 よくわからないけど、私がイメージさせながら株分けすれば、それが子供達に反映されるってわけ?




《解:是》




 そんじゃ、種達も参戦させていいかな。

 毒根で弱毒でもいいからバッドステータスを相手に与えてくれれば、こっちも対処しやすくなるだろうし。


 私は思念を種達に飛ばし、その後作業をさせていた阿吽達を呼び寄せた。


 準備はできたかな?

 私の思念にコクコクと頷く2本。


 うん、やる気を感じさせる凛々しい顔立ちだ。

 これは私にしかわからないだろうけどね、点三つしか顔のパーツはないから。

 親心ってやつ?

 いい顔してきているよ。


 この子達にとって、初の戦闘だからね。

 ま、今回は相手がハエだし、私の時と違って仲間と協力だからそんなに危険にはならないとは思うけどね




 …——ピコン




 ん?

 なんか今フラグが……。


 待てよ、なんか盛大なミスをやらかしていないか?

 阿吽の2本に落とし穴を掘らせて、罠も設置させた。

 バリケードも張った。

 今までの私はこういった慢心しきった時に限って何かやらかしてきているんだ。

 考えろよ。


 大量の数が来たら?

 大丈夫、相手がハエなら何体いようと対処できた。


 相手がハエじゃなかったら?

 ……魅惑香をすぐに止めて身を隠して様子見。

 私たちは植物だし、どこにいてもこの樹海内ならおかしくないはずだから。

 たぶんきっと大丈夫。


 私は私のスキル実行を待つ阿吽の2本に視線を移した。


 これ、この子達に相談してもいい感じかな。

 カシラとしての威厳みたいなもの失われたりしないかな。

 というか、そもそも理解してくれなさそう。

 報連相は大事だけど、今は自分一人でなんとかするっきゃないな。


 いや、森さん!

 何か、この作戦に落とし穴はない?




《解:敵を蠅に絞るのであれば、レベル上げの成功率は8割あります》




 結構高い。

 残りの2割は何かしらのイレギュラーか何かだろうし。

 大丈夫かな


 私は阿吽達に再び視線を移し、そして思念共有で戦闘を始めることを伝えた。


 やる気は十分、準備も万端。

 植物衆にとっての初陣、開始!




《告:スキル【魅惑香Lv.2】を実行しました》

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