第45話 ベヒシュタインとドビュッシーとプロポーズ
はい、少々遡りますが。プロポーズでございました。
つい。
はい、ついです。つい。いや、ついに?
──っていうかですね。初稿のときは、プロポーズらしいプロポーズって書いてない気がするんですよね……。
どうだったっけ……。
まあ、思い出せないので、横に置いて。
ベヒシュタインです。
第26話で少し書きましたが。
動画で色々と、ベヒシュタインの演奏を聴いて気分を盛り上げまして書きました。ありがとう奏者の皆さま。このシロップのような濃い甘味でありながら爽やかさをも感じさせる
そういえば、この練習時に結架が弾いた曲には、実は水が共通していました。
ドビュッシーの『水の反映』は、題名からして、まんまですね。
もうひとつ、『アラベスク第1番』。こちら、リズムの異なる声部を同時に奏するポリリズムという部分が、川の流れを表しているそうです。
で、『バラード第2番』。この曲はショパンなので先の二曲とは作曲家が異なりますが。ググってみたらですね。アダム・ベルナルト・ミツキェヴィチという詩人の書いた詩から着想を得て作曲されたのだという説があるそうです。でもって、その詩の内容が、〝神秘なる湖の伝承〟なんですよ。
──戦禍に飲まれ落城する寸前、乙女たちの祈りによって湖に沈んだ城と、その神秘を明かそうとした騎士の伝承です。亡国の儚い姫と、触れれば死ぬという乙女たちの化身である睡蓮の花が幻想的で耽美なのですが……そうした概要しか調べられませんでした、ネットでは。探せよ本をという声が聞こえそうですけれども、まあ、本篇とそこまで関わらせるつもりはないので、お許しください。
単に共通項として「へぇシンクロニシティっぽいなぁ」ってなことを思っただけではありますので……。
それにしても、この『バラード第2番』。献呈されたシューマン曰く「第1番ほど芸術的でない」ということですが。比較的最近では日本の誇る〝男子フィギュア界における絶対王者〟
そういえば。
ベヒシュタインへの賛辞を残している作曲家は何人もいますけど。
ドビュッシーさんの言葉は凄いですね。
「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」
ピアノ音楽にとって理想的な楽器なのでしょう。個性的でありつつも、ピアノとはこうあるべき、重厚感と軽快感を併せ持つ、どこまでも透明で輝く音。優しさは無限に、激しさは
ある動画では、「ベヒシュタインを弾くと上手くなったような気がする」という言葉があり。それだけ音そのものが生まれながらに美しい。端正なんですね。真っ正直で、だからこそ技術のある演奏家が弾くと、もう向かうところ敵なしです。うっとり聴き惚れて時間を忘れます。
特に、高音の柔らかさが夢のようなんですよね。
普通、高い音域を強い力で弾くと耳に突き刺さるような音色が多い気がするのですけど。ベヒシュタイン様はもう、甘い。丸い。軽い。それでいて、威力が高い。
ピアノの〝ストラディヴァリウス〟と呼ばれるに相応しい。
そんな名器で結架がロマンティックな曲を弾いてしまったものだから、起こったのかもしれませんね、プロポーズ。ドビュッシーのせいかも? まあ、彼の恋愛遍歴や結婚生活の話題は、非常に不愉快であるので、ご興味のある方はググってみてください。まぁー、ひっどいですよ。マジに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます