第34話 元の鞘
──と、いうことで。
マルガリータとフェゼリーゴが、めでたく元の鞘に戻りました。
元の鞘……。
日本刀の鞘は、鞘師が刀身の厚みや反りをもとに、鞘と刀身が触れずにいながらも抜き差しの動きが滑らかであるよう彫っていくため、他のものではきちんと納刀できないということで。無二の組み合わせという意味で、大変、便利な言葉ですね。
誰とでも上手いこと親しくできそうに見えてもパーソナルスペースの管理には細かくて、結果的に相手を脱落させてしまうマルガリータ。
気持ちを伝える言葉を編むのに事前に熟考を必要とするタイプで大抵の相手にはタイムアウトを起こすフェゼリーゴ。
唯一無二です。
フェゼリーゴは以前から少しずつ少しずつ慎重に慎重を期して関係改善回復に向けて動いていたのですが、難攻不落のマルガリータに手こずることばかりで。
集一が持ってきた、あの例の飾り時計を見て、そらもう希望が一気に高まった(笑)
因みに彼の母ですが、自分が管理を徹底できなかったせいで上の息子に飾り時計を持ち出す機会を与えてしまったことを、フェゼリーゴとマルガリータの破局を目の当たりにして、深ぁ~く後悔しております。その当時、おおらかなマルガリータが、あれほど怒りを爆発させるとは思ってなかったのですね。そのへん勝手に気持ちを決めつけてしまったことも悔やんでおりまして。残されていた別の飾り時計も全てフェゼリーゴに押し付けてしまいました。
そうじゃないんだ、マンマ・ミーア!
とも言えず、フェゼリーゴの家には飾り時計が並んでおります。兄が更に持ち出すことの無いように。
マルガリータは吃驚仰天することでしょう、ふふふ……。いくつ並んでいるのかは内緒♪っていうか決めてません☆★☆
でも、どれも宝石やら金細工やら使われていて高価なんですよ。イイ楽弓が買えそうですな。ヴァイオリンの楽弓、それなりのお値段がつくものでありまして。
と、いうことで。
「ねぇ、これ、どれかシューイチに選んでもらって、換わりといっちゃなんだけど、ひとつ持っていってもらいましょうよ」
「それもそうだね」
なんて会話が交わされるのであります。
話を聞いた集一は「母が所有してたものだからなぁ」と、弦子さんに報告と相談。
そしたら「あら、嬉しい♪」なんて言って浮き浮きいらした手土産が、老舗の菓子司こだわりの製作で有名な干菓子、和三盆。これがフェゼリーゴとマルガリータの舌にジャストフィットして、ふたりは新婚旅行を日本に決定。日本通のペーソン夫妻を巻き込んで大騒ぎ!
という話を、いま、思いつきましたよ~うわははは!
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