第48話 そもそもなんで古楽なのか

 ええと、身も蓋もないことを述べますと。本作は、単純に多角関係の縺れる話です(正確には六人を中心に愛憎が絡まりまくる)。


 メインは三角関係です。

 結架(伴奏者)を、集一と堅人(ソリスト)が取り合うわけですな。

──と、いうわけで。


 集一と堅人は旋律楽器。

 結架は伴奏楽器としても大いにありの独奏楽器。


 結架の受け持ち楽器は、簡単にピアノ&チェンバロになりました。だって、チェンバロにラヴいんだもん。

 集一もオーボエは即決です(アルビノーニ作曲、五声の協奏曲集、作品9第2、第1楽章と出逢ったからです)。オーボエ至上のラヴです。チェンバロと双璧を成します。オーボエも鍵盤楽器でいう古楽器にあたるチェンバロのように、バロック・オーボエというものが存在します。キーが現代楽器に較べて非常に少ないです。まあ、本篇において集一は現代楽器を使用しておりますが。因みにバロック・オーボエって、めちゃくちゃ難しいんですよ。どのくらいかというと、バロック時代にアマチュア奏者が存在しなかったくらい。だそうです。生半なレッスンで身につけられる技術ではないということですね、うん。まぁリードを入手するのが大変ということもありそうですが。


 堅人がね……。迷ったんです。もともとはヴァイオリンにしようと思っていたんですけど。バッハのフルート・ソナタが、あまりにも美しかったので。まあ、木管楽器対決にしますか、と、思い直しましてフルートとなりました。

 でも、ヴァイオリンも捨てられないし。

 あ、なら、彼のコンプレックスに絡めてヴァイオリンも弾かせよう。ついでに松脂アレルギーにも触れておこう(とある指揮者の方が、このせいでヴァイオリニストから指揮に転向したという自伝を読んだ……という記憶がある)。

 あと、なんだろ。

 ランパル氏の吹かれるバッハのフルート・ソナタと、ドヴィエンヌの協奏曲が超絶に悶絶ものでして。ええわぁ、フルート。堅人さん、どっちかというとヴァイオリンを弦が切れそうなほどの勢いで掻き鳴らしてそうだけど、もしくはピアノを叩き壊しそうなタッチで弾いてそうだけど。フルートの温和で静穏なイメージを覆すかもしれない。

 そしてフルートにも古楽器はありまして、フラウト・トラヴェルソという名前が正式です。何故なら、古楽器時代のフルートとは現代でいうリコーダーを指すからです。横型のリコーダーを意味する、フラウト・トラヴェルソ。こちらも現代楽器と較べてキーが少なく、そもそも金属製ではない。ただ、フルートの管って、ガラス・セラミック・象牙など、いろいろな素材で作ることを挑戦されてるものでして。そういえばクラリネットにプラスティック管があるんですけど、やっぱり素材によって音が違ってくるんでしょうね。聴き比べたことないので、よく分からないのであります。


 そんなふうにですね。決めたわけですね。

 で、古楽なのは何故か。


 好きだからであります!


 バロック時代というのは、豊作の時代です。

 まあ、あくまで個人的にそう思ってるだけなのですが。

 芸術全般においてイタリアが全盛国な時代でもあると思ってます。


 バロック時代の曲には、惹きつけられるものが多いんです。


 構造のバランスが受け入れやすい。

 旋律が優雅であり、高級感がありつつも、親しみやすくて馴染みが良い。耳触りがとてもいいので、心地よく聴ける。

 一曲あたりの所要時間が短いうえに、A−B−A’という完璧に安定感のある構成。

 欠点が見当たらないのです。

 感覚的に〝美しい〟と思わせることを第一にされているのでしょう。


 小難しい主題がどうの、音の意味がどうの、響きの表現する本質がどうのと、非常にとっつきにくいクラシック音楽は好きになれません。

 とはいえ、バロック音楽にも当然ながら音楽の理論や楽典知識は必要です。バッハお得意の対位法なんかはそりゃもう難しい。全く分かりません。まぁ彼はドイツの人ってのもあるかも?なのですが。

 それでも。

 やはり、

 バロック音楽は心地いいんです。

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