第12話 懐かしすぎる元ネタ番組

 第三幕、第七場、幸福な計画(1)に出てくる、集一が懐かしがっている番組は、実存します。


 1992年から1999年まで放送していたN○K教育テレビの番組で、短い時間でありながら完成度の高い編曲と、ユーモアあふれるCGアニメーションで、録画をするために急いで下校するほど、お気に入りの番組でした。現在であれば気軽に予約録画するんですけど、当時は予約ミスなんて日常茶飯事。番組表が組み込まれてなどいなかったので、ビデオデッキに登録した時刻と予約時間、チャンネルを指定して予約登録するのですが、停電で時刻が消えたり狂ったり、取り消されたりなんてことがあったので、手入力が一番だったのでした。いまの番組名による録画指定システム、最高ですよね。


 もしかしたら、私のクラシック音楽好き(というよりバロック音楽好きなんだけど)を自覚させた始まりは、この番組だったかもしれません。


 八分音符に手足と顔をつけた指揮者(旗部分を振ってメトロノームのようにもなる)、野菜や果物を楽器に見立てたオーケストラが前半部分で登場し、後半部分は曲によってキャラクターなどは違ってきます。番組の二期には、箱型をした現在では旧式のパソコンとコード式マウス、ミニコンポ、絶対に顔は出ない人間も登場しました。


 基本的に、番組前半部分のキャラクターは喋らないのですが、ひとこと発することはあります。英語で。

「Oh!」

 とか、

「Haa……」

 が多かった気がしますが、

「Hi!」

「Yeah!」

「OK!」

 もありましたし、

「Let‘s play〜♪」

 が一番長い発語だったように思います。

 なんでか英語なんですよ。番組の最後に作曲家の名前も告げるんですけど、それも発音は英語。未だに少し不思議です。


 ただし、音符指揮者だけは、日本語を話します。

 どこでって、曲名を発するときです。

 そこだけ流暢に「舞踏への勧誘〜」だの、「ヴァイオリン協奏曲、ニ長調〜」だの言われると、違和感が拭えません。

 ただ、かといって落花生ヴァイオリンやインゲン豆フルートが「どうも〜」とか「ごきげんよう!」って出てきても、それはそれで妙な気もするので、英語で正解かもしれません。西洋音楽ですし。


 基本的に、バロック時代の音楽は現代の歌謡曲やPopsと曲の作りが同じだと思うのです。骨格というか、構造機構が一緒だと思います。なので、現代の歌謡曲やPopsも、全部じゃないけど、すごく好きになるものも多くあります。ただ、一楽章に幾つも幾つも主題を詰めこんで、メイン主題を出すまでに冗長な音の羅列を勿体ぶって流す時代のクラシック音楽は嫌いなんです(独断と偏見であるとも思いつつ)。ただし、メイン主題は大好き、ということもありますが。そこにいきつくまで長いのは、辟易します。バロック期スタイルなら、「あ、第2楽章だけ飛ばそ」で済むんですけどね。まあ、映画音楽まで時代が進めば、また違ってくるんですけど、さらに進むと今度は前衛音楽になるので、もう、それ以上は進めません。


 それもあって、2〜3分に凝縮された、この番組は、私には非常に有難いものでした。

 いやぁ、ベートーヴェンとかシュトラウスも2〜3分ですからね、あなた。びっくりです。その曲の最も魅力的な部分を抜き出して濃縮させた、限りなく苦痛にならない、編曲。いやぁ、いい仕事っぷりでしたねぇ。忍○ま○太郎とか、お○ゃる丸みたいに続けて欲しかった。


 それから、アニメーションのCGが時代を経るごとに立体的に、動きも滑らかになっていくのが、とても面白いんですよ。

 ストーリー性も上がっていって、台詞なんて一切ないのに、ハラハラドキドキの展開なんてこともあって、再放送を心から願う番組10選に常連するくらい好きです。


また、放送しないかなぁ……。

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