第六十五話 覚悟
「レン様、大事なお話があります」
現実世界から異世界に戻った俺に対し、レナが神妙な面持ちで声をかけてきた。
「あ、朝からどうしたんだ。 そんな真面目な顔して」
「そろそろ私が口を出す時が来たかなと思いまして」
「口を出すって……一体何にだ……?」
俺が問うとレナははぁとため息をついてこちらを見た。
「相当な鈍感ですね、レン様は……」
「待て待て、一体何のことだよ」
「玲奈の気持ちに本当に気付いてないんですか?」
「玲奈の気持ち……? 大分高圧的な奴だけど仲良くやってるとは思うぞ、一応幼馴染だしな」
レナは再度大きなため息をつく。
「これは私が口を出していなかったらどうなっていたんでしょう……」
「さっきから一体何なんだ?」
「あのですね、玲奈はレン様のことが好きなんですよ。 幼馴染みとして、友達としてではなく恋愛的な意味で」
「……え?」
恋愛的な意味? 幼馴染みとしてじゃなくてか……?
「じゃなきゃ夜遅くまで廊下でレン様の帰りを待ったりしないでしょう……」
「あれは星を見てたって…… そりゃあんな明るい中本当に見えてるのかとは思ったけど……」
「とにかく、私が言った事を踏まえてもう少し玲奈の言動に注目してみてください。 いくら鈍感でも流石に気付きますよ」
「あ、ああ」
玲奈と同じ顔でそんなこと言われると何だかレナの顔を見るのも恥ずかしくなってきた。 あんな女王様的な発言をしておいて俺の事を好きだなんて想像もしていなかった。 好きっていうのもう少しお
「あ、それと今の会話の最中、玲奈の意識がこちらにブロックしておきましたので、玲奈は今の話は聞いていません」
そう言うとレナは俺から離れて小屋の掃除を再開した。
朝から頭がこんがらがるが、王都に再度攻め入る準備をしなくては。
そう考えるとセリカがムクっと起き上がる。
「れ、レンさんお早うございます」
朝の挨拶をするセリカの顔は目線がグルグルしていて全然合わない。 寝起きでこんなにキョロキョロするだろうか。
「もしかしてだけど、今の話聞いてないよな?」
「は、はい聞いてないですよ! 寝てましたから!」
そう言っている間もセリカの目線はグルグルしている。 怪しいが聞いていたと言う証拠もないし、聞かれてまずい話でもないのでそっとしておく事にした。
間も無くして全員が起床すると、俺たちは早速王都への再侵入について相談する事にした。
「よし、じゃあ状況を整理しよう。 まずは俺の話だ。 俺は前回の潜入で四聖剣二人と対峙した、結果としては一勝一分と言ったところだ。 この二人については次回の潜入の時には俺を感知しないでいてくれるらしい。 既に四聖剣一人には重傷を負わせているし、王に挑むには後四聖剣一人倒せばいけるってところだ」
俺が状況を報告すると、セリカが物憂げな表情をしているのが目に入る。
「どうしたんだセリカ、そんな顔して」
「いや、私たちの目的ってレンさんの世界への侵略を防ぐ事と囚われている人を助け出すって事でしたよね? それなら目標は達成されてますし、もうレンさんが危険を冒さなくてもいいのでは……?」
言われてみると確かにそうだ。 王宮にはもう捉えていた人々はいないし、次元超越持ちの玲奈の母親もいないらしい。 それなら現実世界に侵攻する手段が尽きているのではないか。 ……だがそれは一時的なものだ。
「話に聞く限り相当傲慢で執念深そうな王だ。 たとえ手段が尽きてもまた王国中から人を集めて同じ事を企むと思う。 そうなるとレナやセリカが狙われるかもしれない、王の野望を打ち砕くには、王を倒すしかないと思う」
「そうですか…… 相手はこの王国の王です、本当に気をつけて下さいね」
セリカが心配そうな表情でこちらを見つめる。
「大丈夫、こんなチート能力を授かってるんだ、そう簡単に負けやしないさ」
俺の言葉を聞いたセリカは静かに頷いた。
こんなビッグマウスを叩いておきながら正直自信がない。
ただここで叩かないとまた四聖剣の一人目からやり直しだ。 また侵略が始まって多くの人が悲しい思いをするかもしれない。 セリカやレナにも危害が及ぶ可能性があるんだ、ここで出来る限りのことをしておかねばならない。
俺は覚悟を決めた、俺は次の潜入で王を倒す。
そんな事を考えていると、レナが潜入時の情報を報告し始めた。
「私たちの報告は前回お伝えした通りです、囚われている人を逃すのに必死でしたので」
「レナの母親の話だな、他には何か気づいたことはないか?」
「基本的には牢獄の中にずっといましたので…… そうですね、気づいたこととすれば…… 牢獄の中が滑りやすかったのと、
「その情報でも有益だ、活かせる物は全部活かそう。 些細なことでもいいから、他にも気づきがあったらもっと教えてくれ」
俺はレナ、セリカ、シエラの3人から王宮に潜入した時の情報を聞いた。
それに囚われていた人々の証言も加え、俺たちは丸一日潜入時の作戦を練った。
——作戦を練っている間にもう一日の終わりも近づいてきた。
「これなら何とかいけそうだな、後は俺がどう王に対処するかだな」
「そうですね、王に接近することは出来ると思います」
立てた作戦にレナも納得している様で手を顎に当てて頷いている。
「ハウエルさんから王の能力のヒントは聞いてるから、何とかしてみる。 今日はもう休んで、明日作戦決行にしよう」
「分かりました!」
ついに明日が運命の日だ。
俺は決戦に備えて体力を回復させるべく、早めに寝る事にした。
チートスキル "スキルドレイン"をもってすれば、陰キャでも世界を救えます! もずくさん @modu1230
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