第二十四話 ハウエルの修行
「早くハウエルさんに会いに行くぞ!」
「え、私に何か用?」
「え!?」
「そうです、この方がハウエル様です」
店の外からレナが入ってきた。
「わざわざワタシを訪ねてくるなんて、誰の差し金かしら?」
「あ、ゼラートさんに紹介いただいて……」
「あらぁ、ゼラートちゃん? 久しぶりに会いたいわぁ〜〜。 それにしてもゼラートちゃんが人を
「俺、どんな
「なるほどねぇ、確かに弱々しすぎるものねぇ…… ワタシの指導は厳しいけど、ついてこれる?」
「自信はないですけど頑張ります!!」
「そこは潔くはいって言いなさいよ! まあ良いわ、アナタの覚悟だけは見てあげる」
そう言ってハウエルは店の奥に戻って行った。
数分後、ハウエルはダンベルを持って店から出てきた。
「これがワタシの愛用ダンベル、ちょっと持ってて」
「はい……って重っ!!」
手渡されたダンベルはあまりにも重すぎてすぐ地面に落としてしまった。
ダンベルを持ったことがないため何キロなのかは分からないが、両手で持ち上げるのがギリギリだ。
「やっぱりひ弱ねぇ、これを10回持ち上げることができたら修行してあげる」
「10回!?」
全くそんなことできる気がしない。
筋トレから始めたら修行開始までに1ヶ月はかかかりそうだ。
そんな時間はない。
「じゃあワタシは店に戻るから、出来そうだったら呼んでね」
「は、はい……」
ハウエルは店に戻っていった。
「レンさんこんなの持てるんですか……?」
「いやこれは無理だろ…… 今まで筋トレなんてしたこともないしなぁ」
「じゃあどうするんですか?」
「うーん、ちょっと考えよう」
純粋な筋力で持ち上げるのは無理だ。
となると
あとは……
あれ、そういえば
ダンベルを握る。
ダンベルを持っている俺の腕を
——持ちあがった!!
どうやらこの
何気なく吸収したがなかなか便利な
「レンさん、いつからそんなにマッチョに!!」
「頭と
「はい!!」
セリカがせかせかと店内に入って行った。
店から出てきたハウエルは疑い深そうな顔をしている。
「本当に持ち上げられたの?」
「ああ、見ててくれよ?」
俺はダンベルを手に持ち、
ダンベルは無事持ち上がり、そのまま俺は10回上下運動を繰り返した。
「何よアンタ、そんな体型で何で持ち上げられるワケ!?」
「ふっふっふ、俺の隠れた筋力を舐めないでください」
「正直めんどくさいから適当にあしらおうと思って言ったのに、本当に持ち上げてるところを見せられちゃったら仕方ないわね…… やってやろうじゃない、修行!」
「ありがとうございます!!」
「じゃあ行きましょうか」
「え、行くってどこに‥‥?」
「決まってるでしょ? 修行場よ」
「でもお店が……」
「ああ、趣味でやってるお店だから気にしないで、ちょっと準備だけしてくるから待っててね」
そう言ってハウエルは店の看板をオープンからクローズにひっくり返し、店の中に入って行った。
「ちなみに、修行をお願いした後に聞くのも変だけど、あの人何者何だ?」
「
「ウソ!? 全然そんな雰囲気じゃなかったぞ!!」
「多分性に合わなかったんでしょうね、だから辞めてここに住んでらっしゃるんだと思います」
「四聖剣って一人会った事あるけど、殺人鬼みたいな奴だったからなぁ。 どうしてもそのイメージが先行してしまう」
「あの方は心優しい方です、そこはゼラート様も保証してくださるかと思います」
「なら良かった、でも元王都の人間ってことは俺たちの素性とかは言わない方が良いよな」
「そこの判断はレン様にお任せします、ちなみに私の
「了解、当分は様子見でいこう」
ハウエルが店から出てくる。
何やらリュックを背負っている様だ。
「よし、じゃあついて来て」
ハウエルの後をついて歩く。
時間は昼過ぎくらいだろうか、少しお腹が空いて来た。
7分くらい歩くと、何やら体育館の様な場所に着いた。
「ここは……?」
「ボルグランの警備兵養成所よ、ここなら思いっきり
「ハウエルさんの
「それはヒミツよ! これから模擬戦をやろうと思ってるの、種明かししたらつまらないでしょ?」
元四聖剣と模擬戦か、こりゃ否応なく実力がつきそうだ。
ハウエルと俺は養成所の中に入り、一番大きな部屋に入った。
部屋と表現したが、屋根と壁があるだけで地面は土の広い空間だ。
俺たちは隅に荷物を置いた。
「じゃあ、早速始めましょうか」
「はい、お願いします」
「さあ、どこからでもかかって来なさい、殺す気できていいわよ」
「でも……」
「遠慮なんてしないで? それともワタシがその気にさせてあげようかしら」
ハウエルの顔つきが一気に変わる。
先ほどまでの柔らかい雰囲気は完全に消え、まるで修羅の様な雰囲気に空間が包まれる。
隻眼の女王と対面した時のあの身体中の毛穴が開く様な感覚にまた襲われる。
2回目の感覚で理解した、これは殺気だ。
殺らなきゃ殺られる、そう本能が俺に告げている。
「じゃあ遠慮なく……!」
〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
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