第五十六話 助っ人
「リベラ、顔は知らないが王宮内でその名前を聞いた事がある。 どうしてだい?」
「——私の母なので」
さっきまで和やかだった場の空気が少し重くなる。
セリカの両親の救出に必死で、レナの母親についてはまだ所在もわかっていない。
「そうだったのか。 名前は聞いた事があるけど、どんな人なのかは知らないんだ」
「分かりました、お気になさらないでください。 セリカさんとは少し家庭の事情が違うので」
レナは顔色ひとつ変えずに言う、まるで母親の安否をそこまで気にしていない様な様子だ。 今まで何があったのか聞いてみようかとも考えたが、ここまで表情が変わらないと逆に聞きづらい。
「また王宮に潜入する機会はあるだろうし、その時に探してみるよ」
「お願いします、でも優先度は低めで結構です。 余裕があったらでお願いします」
「あ、ああ。 正直なところ、前回の潜入で俺の
「四聖剣は
確かにハウエルと模擬戦をしていた時も、
あの時は恐らく音で俺のことを捉えていた、ならロエルもそうなのかもしれない。
身動きはしていなかったが、呼吸音とか……
そう考えるとこれ以降一人で潜入するのは難しい気がしてくる。
「俺はまた王宮に潜入する、それに当たって潜入に向いているサポート役がいた方がいいかもしれない。 陽動があるだけでも潜入しやすさは大分変わるしな……」
「それでしたら私にお任せを!」
セリカが手をピンと高く挙げる。
「
「それはレンさんもですよね!」
「俺の場合少し状況が違う気が……」
俺がそう言うとセリカは俺の目の前に近づいてきた。
「それはそうですけど、私の両親まで救っていただいて、私も何か役に立ちたいんです!」
セリカは本気の様だ、目つきがいつもとは少し違う。
俺はちらっと両親を見た。 自分があんな目に遭ったんだ、娘がその危険に犯されるとなれば止めてくれるだろう。
俺の視線を感じ取ったのか、ルパートさんが口を開く。
「確かにリスキーだ、だけど私たちは助けてもらった身だし、恩人には協力しないといけないね」
「お父さん……!」
勝手に話が進んでいるがいいのだろうか、自分が言っている事をわかっているんだろうか。
「それにまた捕まったらレン君が助けに来てくれるさ!」
「人任せ! そもそも捕まらないでくださいよ!!」
この家族は思ってた以上に能天気だ。 セリカの柔らかい空気も両親譲りなんだろう。
だが潜入するときに
「よし、じゃあ次はセリカにも協力してもらおう。 だけど少しでも危険だと思ったらすぐ逃げろよ? 特にロエルには注意だ、白髪の少年を見つけたらすぐに逃げろ」
「分かりました!!」
「あとセリカも王宮に潜入するとなるとアイツの協力も欲しいな……」
「アイツって誰です?」
「ちょっと久しぶりに行ってみるか、会えばわかるよ」
俺はその場であの場所へ転移穴を開いた。
「ちょっとしたらまた戻ってきます」
「ああ、セリカを頼むよ」
俺とセリカは転移穴を通り目的地に着いた。
そこは目の前にはサイモンズバーと書かれた看板が立っている。
「あ、アイツって……!」
「そうだ、シエラだ」
俺たちは久しぶりにサイモンズバーの中に入る。
「いらっしゃ……あら久しぶり!」
シエラはにっこりと笑って俺たちを迎え入れてくれた。
「元気にしてたか?」
「そりゃもう元気いっぱいよ! いきなり会いにくるなんてウチが恋しくなったのかい?」
シエラは何かと俺に絡んでくる、その様子を見たセリカが頬を膨らませている。 この光景がなんだか懐かしい。
「ふふ、冗談よ!そんな顔しないでセリカちゃん!」
「冗談とは思えません……」
「うーん、半分冗談ってとこかな! それよりもどうしたのいきなり!」
「ちょっとシエラにお願いしたい事があってな……」
「何? レン君からお願いされたら何でもしちゃうよ〜〜」
目の前でシエラがクネクネしている。 何でもと言いながらそれは嘘だ。
多分男女のわちゃわちゃ系のお願いを期待しているんだろう。
「一緒に王宮に潜入して欲しい!」
「えっ!? そんな犯罪級のお願い!?」
「ああ、潜入するにはシエラの
シエラは手を頬に当てて考えている。
多分彼女の頭の中で独自の損得勘定が行われているに違いない。
「でも、そのために人生を賭けるってのもねぇ……」
「大丈夫、セリカも同行するから危険だと思ったらすぐに
「うーん、ちなみに報酬はおいくらだい?」
シエラが横目で俺を見てくる。 こいつ足元見てやがる。
「奮発して銀貨3枚でどうだ!」
「もう一声……!」
「くそ……なら4枚!」
「あと少しで気分が乗るんだけどな?」
「ああもう仕方ない、銀貨5枚!!」
「よし、乗った!!」
シエラが俺の手を握る。
俺たちはシエラの勧誘に成功した。
〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
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