第五十四話 両親の避難先
血だらけの包帯に巻かれた俺の姿を見て、セリカはその場で気絶してしまった。
それを見ていたレナはすぐにセリカのもとに駆け寄り、セリカの頬を軽くペシペシと叩いた。 それが効いたのか、すぐにセリカは目を覚ました。
「ボルグランの先生のところに
「わ、分かりました!!」
セリカは俺の前に
「さあ、レン様、行きますよ」
正直もう両腕の感覚がなくなってきていて、痛みもさっきよりは強くない。
レナが俺の肩を持ち、ゆっくりと
「おお、久しぶりじゃな。 また派手にやられとるのぅ、お前弱いじゃろ」
「いや、結構強い方だと思うんですけど……」
「まあ良い、氷漬けのお前さんを治癒するよりはだいぶ楽だわい。 ほれこのベッドに寝転んでくれ」
ベッドと言うのは名ばかりの、机にシーツを敷いただけの台に、レナとセリカの助けを借りながら俺は寝転ぶ。
寝転んだ俺の腕に老人は手を当てる、するとすぐに老人の手が真っ白に光り始めた。
”
この老人の
それから30分ほど
「すごい、まさかこんなにすぐ良くなるなんて……」
「どうじゃワシの
「はい、助かります!」
「じゃあそれに見合う治療費をもらうぞい」
老人は俺の目の前に手を差し出してきた。
「お、おいくらですか……?」
「今回は金貨一枚ってとこじゃな」
「た、高い…… けど仕方ない……」
俺は金貨一枚を老人に手渡した。
ボルグランを出発した時は余裕だと思っていた金銭も、いつの間にやら半分になっている。 何回もこの老人に世話になるわけにはいかない、破産してしまう。
——俺たちはその後宿に戻り、セリカの話を聞くことにした。
「それで、両親は無事なのか?」
「はい、おかげさまで!! 王都の兵士が到底来れない様な僻地の小屋に今はいます」
「なるほど、でもいつ兵士が来るか分からないし、少し経ったらまた居場所を変えた方がいいかもしれないな」
「そうですね…… 王宮のことについて色々と知っているみたいなんですけど、レンさんとレナさんも話を聞きますか?」
一応セリカの両親を救出するというミッションは達成したものの、俺たちにはまだやる事が残っている。 話は聞いておいた方がいいだろう。
「ああ、案内してくれ」
「分かりました!」
セリカはまた
転移先は密林と言った感じの場所で、太い木の枝が地面から隆起しており、ゴツゴツとしている。 また、その木の根には苔が生えており、ツルツルと滑って歩きづらい。
「よくこんなところ知ってたな、確かにこんなんじゃ王都の兵士も来ないかも」
「ですよね! 私も初めてきたとき驚きました。 お父さんとお母さんが若い頃、二人になりたい時によくきてた場所なんだそうです」
こんなところで二人きりにならなくても、もっと他にいいところはあると思うが、口にには出さなかった。
転移したところから少し歩くと、一箇所だけ太陽が降り注ぐ箇所が目に入る。
そこには色鮮やかな花々が咲き誇っており、綺麗な蝶の様な昆虫がひらひらと舞っている。 その中心に、小さな建物を見つけた。
なるほど、確かにここで二人きりならさっきの話も分かる。
俺たちは花々を潰さぬ様ゆっくりと小屋に向かって歩き、小屋のドアを開いた。
「お父さん、お母さん、ただいま!」
「お帰り! あ、レンさんも来てくれたんですね」
セリカの母親が俺にお辞儀をする。
俺もそういう作法は詳しくないがお辞儀を返す。
「無事逃げられて良かったです、旦那さんは?」
「奥で寝ています、まだ良くはなってませんが、ここにいればいずれ良くなると思います」
セリカの母親はにっこりと笑う。
「少しだけお会いしてもよろしいですか?」
「ええ、あの人も喜ぶと思います」
俺は小屋の奥へ進む、すると横たわるセリカの父親を見つけた。
顔色は良くないが呼吸は安定している。 これなら今の俺でもなんとかできるかもしれない。
「
父親の頭部に当てた俺の手はうっすらと白く光り始める。
俺を治癒してくれた老人と比べると違いは歴然だが、多少は効果があるだろう。
俺はそのまま治療を続けた。
——
「こ、ここは……」
「え、目覚めましたか!! セリカ!!」
セリカは父親の顔を見るとすぐに駆け寄ってきて、特大のハグをした。
父親は状況を把握できていない様なので、ここまでの顛末を説明した。
「なるほど、君には本当に世話になったんだね、ありがとう。 私の知っている事であればなんでも話すよ」
「それじゃあ遠慮なく……」
俺はセリカの両親に王宮の中で起きている事を聞くことになった。
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