第四十九話 白髪の少年
俺は王宮の地下部分にある牢獄を抜け出し自分の宿に戻り、レナとセリカを呼び出した。
空はすっかり橙色に染まり、日没が迫っている事を知らせている。
「ご無事で何よりです! 何か情報は分かりましたか?」
「ああ。 セリカの母親に会ってきた」
「お母さんと!?」
セリカは目をぱっちりと見開き、俺に近寄ってきた。
「どこに居たんですか!? 元気でしたか!?」
「気持ちはわかるけど少し落ち着け! 大丈夫だ、見た感じだと衰弱はしてなさそうだ。 王宮の地下牢獄に捕らえられていて、俺の世界へ
「…… 良かった……」
セリカは安心したのかその場で座り込んだ。
頬には涙が一筋、俺も同じ境遇だったら泣いてしまうかもしれない。
レナは座り込んだセリカの背中をさすっている。
「あと父親もそこに捕らえられているらしいんだけど、会う事はできなかった」
「でも生きていてくれたってだけでも私にとっては収穫です、レンさんありがとうございます」
セリカが涙を袖で拭い、いつもの笑顔で笑って見せる。
その笑顔が眩しすぎて、父親が衰弱している事をセリカに伝えることができない。
「遂にここまできたんだ、絶対助けような、セリカ」
「はい!!」
「じゃあ情報を整理して作戦会議をしよう!」
俺は王宮で見たもの、知った事を二人に共有する。
一通り話し終わった後、レナが口を開いた。
「その刻印っていうのが不思議ですね、人の
「俺もそこが不思議なんだ。 どういう過程でその刻印が押されたのか聞こうと思ったら兵士が戻ってきてしまってな」
「私たちもそんな刻印が押されてしまったら、牢獄のメンバー入りですね」
「それだけは絶対に避けたいな……」
そういえば白髪の男には気をつけろと言われた。何か関係があるのだろうか。
いずれにせよセリカの父親の命が危ない、そんな事に貴重な時間を費やすわけにはいかない。
「そんなに時間に余裕がある訳でもないし、今夜もう一度潜入してみる。 できる事なら牢獄から王都の外に
セリカとレナは思い当たる場所がないか考えている様だ。 少し時間が経った後、セリカが口を開いた。
「私の家なんてどうですかね? 兵隊さんがきてからもう数ヶ月経ってますし、流石にもう注目はされていないと思うんですよ」
「確かにな…… レナは何か良いところ思いつくか?」
「私はウィンダム邸以外はあまり詳しくないので…… 強いて言えばハウエル様のお店とかでしょうか」
「王都の兵士が襲ってきてもハウエルさんがいれば安心だしな! でもいきなりそんなことしたらあの人の鉄拳を食らうかもしれない……」
「流石に迷惑ですよね」
「そうだな…… じゃあセリカの家にするか、一旦そこに逃げてその後の事はまた考えよう」
「分かりました!」
「よし、決まり! セリカ、両親を助けられたらすぐ伝えにくるから少し待っていてくれ」
「はい、信じて待っています」
俺たちはその場で一度解散し、日付が変わる頃まで宿で待機した。
——0時を知らせる小さな音が時計から鳴った。 出発の時だ。
俺はその場で牢獄の外の階段部分に
俺は
目の前の小さな勝手口の扉を押すが開く気配がない、鍵がかけられている。 昼に通れたのはたまたまだったのか。 だが一度通って仕舞えばこっちのもんだ。 中のイメージができるので、俺は
俺はもう一度
うっすらとした
ここからは念のため
セリカの母親も無事な様だ。 俺はそっと近寄り声をかける。
「また来ました、今からあなたを逃します」
少し驚いた表情をした後、は口を開く。
「本当に来てくれたのね」
「はい、セリカもあなたが生きている事を知って喜んでいました」
「あの子には本当に辛い思いをさせちゃったわね…… 早く会いたい」
「俺が今から王都の外に
「え、あなたも
「はい、事情は後で説明します」
俺はセリカの母親の前に
「これは、私の家……?」
「はい、一旦中で待っていてください」
「分かりました、こんな事言える立場じゃありませんが、主人もよろしくお願いします」
「ご主人はどちらに?」
「あの牢獄です」
母親が指さした牢獄を見ると、鉄格子にもたれかかっている一人の男性が見えた。
「分かりました、次にお送りします」
俺は母親が
父親の檻に移動し、
「セリカのお父さんですよね?」
「き、君は……?」
声がかすれ、衰弱しきっているのが分かる。
「後で話しますので、今はこの
「わ、分かった」
男性が
「誰かな、こんなところまで侵入してくる不届き者は」
「まずい、早く入ってください!!」
「あ、ああ」
父親が
できれば他の人も助けたかったが、今はこれが限界だ。
俺は
「あれあれ、もしかしてこいつらを逃しに来たのか?」
声の主が俺の視界に入る。
声の主は、白髪の袴の様な服を着た、中性的な美少年だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます