第四十七話 王宮

 セリカの部屋の扉が開くと、そこにはいつもとは雰囲気が違うレース生地の服を着たセリカが立っていた。


「セリカ! どうしたんだその服!」

「ぼ、ボルグランで買ったパジャマですよ!」


 セリカが顔を赤らめ下を向いている。


「へ、変じゃないですか?」

「ああ、似合ってるぞ」


 むしろ見てるこっちが変な気を起こしてしまいそうだ。

 時々見せる上目遣いにもドキドキしてしまう。


「そ、そうだ。 お願いって何だ?」

「お風呂に入ってそのままなので、この前みたいに髪を乾かしていただけると……」

「なるほどな、任せろ!」


 俺は能力スキルを使ってセリカの髪に風を当てた。

 セリカの髪はふわりと持ち上がり、徐々に乾いていく。

 セリカの髪からいい匂いがする、これが女の子の匂いなのか。


「そういえば何でいきなり風呂に?」

「タバコの匂いが体についていたので嫌になっちゃって……」

「あ、門兵か! 確かにそう考えると俺も少しタバコ臭い」

「ベッドに入る前にお風呂には入ったほうがいいですよ! 寝る時に嫌な思いをしちゃいます!」

「そうだな。 よし、乾いたぞ」


 含んだ水分で黒ずんでいたセリカの髪は綺麗な深緑色に戻った。


「ありがとうございます!」

「よし、レナが待ってるし行こう」

「はい!」


 俺とセリカはレナの待つ部屋に戻った。


「ちょっと遅いんじゃないですかー? セリカちゃんもそんな可愛い服着ちゃって何してたんだか」


 レナの様子がおかしい。 多分今目の前にいるのは玲奈だ。


「セリカの髪を乾かしてただけだよ、何もしてない!」

「どうだか……?」


 玲奈が細い目で俺を見つめる、本当に何もしていないのに。


「まあまあ、そんな事より今後どうするかだろ? セリカの両親を探すにも情報がないと動けないしな」

「この前の話だと連れ去られた人間は王宮に集められてるって話でしたよね」

「ああ、その後どこに連れて行かれてるかが分からない…… 何か情報はないかプロの情報屋に聞いてみるか」


 俺はその場でサイモンズバーに繋がる転移穴ポートホールを開いた。

 中を覗くと椅子に腰掛けているシエラの姿が見えた。


「おいシエラ、久しぶり!」

「え、レン君? どこ?」

「こっちだこっち」


 突然の声に戸惑うシエラは振り返り転移穴に気づいた。


「そこか! 相変わらず便利な能力スキルね〜それ。 そんなに便利ならもっと連絡くれても良かったんじゃないの?」

「はは、鍛錬が忙しくてな……」


 横から玲奈の視線を感じるが、気にしないことにする。


「俺たちと別れた後、何か情報のアップデートはあったか?」

「生憎特に大きな変化はないね、関連する情報は集めてるつもりなんだけどな〜」

「ダメか、分かった! また連絡する」

「いつでも待ってるよん!」


 俺は転移穴ポートホールを閉じた。

 シエラは特に何も知らない、だとすると俺たちが知ってる事を踏まえて行動する必要があるか。


「よし、じゃあ情報を整理しよう。 王は空間転移テレポート持ち、次元超越ディメンションシフト持ちを集めて他国を侵略しようとしている。 連れ去られた人が集められるのは王宮。 あれ……もしかしてこれだけか?」

「そうですね…… 後は四聖剣の話とかくらいですかね?」

「だな…… 圧倒的情報不足だな……」

「王都内で聞き込みでもしてみます?」

「いや、聞く必要はないかもしれない」

「聞かないで情報を?」

「心理を読めばいいんだ」


 打ち合わせは一度中断し、俺は外に出た。

 この能力スキルがこんな形で活きると思っていなかった、……心理読解マインドスキャン


 そこから数十分、俺は兵士や住人の心理を読んで回った。

 心の内が読めているので嘘もつけない、そして怪しいことは聞いていないんだから足もつかない。 我ながらベストアイディアだ。

 そして分かった事は何個かある。

 まず王宮とは中心にそびえ立つ塔を指していて、頂上階に王が住んでいるらしい。 また四聖剣もその下のフロアにそれぞれ配置されているとの事だ。

 連れてこられた人々については特に新しい情報は得られなかった。


 俺は宿に戻り新たに得た情報をレナとセリカに共有した。


「王宮ってあれのことだったんですね! なんかイメージと違います」

「俺もだ、あそこから空間転移テレポート持ちがどこに連れて行かれてるかまでは知ってる奴はいなかった。 だから次は身体透過インビジブル能力スキルを使って王宮に忍び込んでみようと思う」

「そんな簡単に侵入できるんですかね?」

「煙には気をつけるよ。 見えてないのであれば侵入くらいはできそうなもんだけどな」

「確かに! それじゃあ私も……!」


 セリカがその場で立ち上がる。


「いや、次は俺だけで行く。 場所は敵の本丸だ、危険すぎる。 それにセリカをずっとおんぶしている訳にもいかないだろ?」

「……」


 セリカが言葉を失っている。

 セリカには悪いが一人の方が見つかるリスクが低い。


「大丈夫、そう簡単い見つからないし、いざとなったら空間転移テレポートを使ってでも逃げるさ」

「……すみません、お願いします」

「よし、じゃあ行ってくる」


 俺は宿を出てどこから見ても見つけられるくらいに高さがある王宮を目指す。


 ——15分ほど小走りをすると、塔のふもとに辿り着く。

 遂に王の居城に侵入する時が来た、心臓の鼓動が早くなるのを抑え、俺は能力スキルを使った。


身体透過インビジブル……!」



〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜



この小説って異世界ファンタジーなのか現代ファンタジーなのか、ジャンル設定に悩んでいます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る