第四十六話 王都の検問

「あれが……」

「そうです、王都です」


 天高くそびえ立つそびえ立つ塔が俺たちの視界に入る。


「いよいよって感じだな……」

「はい、レンさんの能力スキルが見破られないと良いのですが……」

「そこはやってみないと分からないな…… 最悪見つかったら逃げてまた別の方法を考えよう。 とりあえずレナは正規ルートで王都に入ってくれ」

「分かりました」

「よし、じゃあやってみよう。 セリカ、背中に乗ってくれ」

「は、はい!」


 俺はセリカを抱え、検問の少し前で身体を透明化し、馬車を降りた。

 検問を見ると王都の兵士が2名、通行者の身分や王都に来た目的を尋ねられている。

 検問で弾かれ、来た道を戻っている様な馬車も見かける。 正規のルートでも王都に入るのは難しいらしい。 レナは大丈夫なんだろうか。

 そんな心配をよそに、検問の順番は俺たちの馬車に回ってきた。

 兵士2人の内1人がレナに近づく。


「はい、お疲れさん。 身分を証明できるものはあるかい?」

「これを」


 レナはゼラートから受け取った証明書を兵士に手渡す。


「この用紙、西の都からかい。 サインをチェックさせてもらうよ」


 兵士が用紙を見つめる。

 サインを見るだけで偽造かどうかをチェックできるのだろうか。

 もしかするとそういう能力スキル持ちなのかもしれない。


「首領直筆とはな、問題ない返すぜ。 ちなみに王都へは何しに来たんだ?」

「首領ゼラート様の御所望品を購入しに参りました」

「お使いってことか、ご苦労なこったな。 おい、積荷の方は問題ねぇか?」

「ああ、衣類と食料くらいだな、怪しいものはねぇ」


 レナと会話をしていた兵士が声を発すると、荷台からもう一人の兵士が顔を出し答えた。


「じゃあ問題ないな、通って良いぞ」

「ありがとうございます」


 レナの馬車が前に進み、門をくぐって行く。

 これでレナは大丈夫、問題は俺とセリカだ。

 門の先に向かってゆっくりと音を立てない様に進む。

 既に門兵の視界に入る位置にいるが、何も言わずタバコを吸っているので問題なく透明化できているんだろう。


 ——後少し進めば王都だ。

 ゆっくりと歩を進める、緊張したが案外上手くいくもんだ。


「おい、何だあれ」


 門兵の1人が俺たちの方を指差している。 どうしてだ、透明化はできているはず。


「あそこだけ煙が人型になってるぞ」


 ——しまった、タバコの煙か。 

 煙の中でこの能力スキルを使うとどうなるかなんて検証してなかった。

 おそらく、俺たちが立っている場所だけ煙が滞留せず、人型に見えているんだろう。


「本当だな、ちょっと見てくる」

「任せた」


 門兵の1人が近づいてくる、これはピンチだ。

 走って逃げれば音が出るし、能力結合スキルコネクトで他の能力スキルを使おうにも一瞬透明化が解除されてしまうかもしれない。 もっと色んな検証をしておくべきだった。


「一体何だってんだこりゃ」


 これは一か八かで高速移動ファストムーブで逃げるか……?

 門兵の手が目の前に迫る、これは仕方ない!


 俺が高速移動ファストムーブを発動しようとした瞬間、目の前の門兵がその場で倒れた。

 突然の出来事に動揺したが、これはチャンスだ。

 俺はすぐさまその場を離れ、煙の範囲外に出た。


「おい、どうした!」


 門兵が駆け寄る。

 大丈夫だ、見えていないなら問題はない。

 俺たちはそのまま目の前を走る自分体の馬車に乗り込んだ。


「はあ、危ねぇ! バレるかと思った!」

「もうドッキドキでしたよ!!」

「あの兵士が倒れてくれなかったらどうなってた事か…… あれは一体何だったんだ?」


 するとレナが運転席で振り向いた。


「私の能力スキルです、振り返るとお二人がピンチでしたので」

「そっか! いやぁ本当に助かった…… でもこれで無事第一関門突破だな!」

「はい! この後はどうします? いつも通り宿でも探して、今後の計画を練ります?」

「そうだな、そうしよう」


 俺たちはそのまま馬を預けておける宿を探し、3人分の部屋を取った。

 今までは男性、女性の2部屋を取っていたが、ボルグランで働いた分金銭的な余裕があるので、リッチに人数分の部屋を取った。


「じゃあ各々準備ができたら俺の部屋に集まってくれるか?」

「分かりました」

「分かりました!」


 部屋に入る、ここの宿はボルグランに行く途中に宿泊した宿の様に至って普通だ。

 小さな作業机とベッドが置いてあるだけで、装飾なども特にされていない。

 寝泊りができれば良いだろうといったオーナーの意図をひしひしと感じる。


 ——数分待つと、荷物を置いたレナが俺の部屋にやってきた。


「失礼します」

「きたきた、適当なところにかけてくれ」

「はい」


 レナは椅子に座る。

 そこから10分ほど待ってもセリカはやってこない、何かしているのだろうか。

 ——そして遂には30分が過ぎた、これは流石に声をかけに行った方が良いだろうか。


「ちょっとセリカにまだかどうか聞いてくるわ」

「分かりました、ここで待っています」


 レナには俺の部屋で待ってもらい、俺はセリカの部屋に向かった。

 部屋の前に立ち、扉をノックする。


「おーいセリカ、まだ準備できないのか?」

「レンさんですか? お願いしたい事があるんですけど……」

「お願い? 何だ?」

「今開けますね」


 扉が開くと、そこにはいつもとは雰囲気が違うレース生地の服を着たセリカが立っていた。



〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜



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