第十六話 身近な被害者
俺は
移動した先には、執務席で書類に判子を押しているゼラートがいた。
「ん? お早いお帰りだな」
「出発早々悪党に襲われまして……」
「なるほど、それで悪党を連れて来たと。 できれば警備兵に突き出してもらいたかったが」
「すみません、こういう事の管轄がよく分かっていなくて」
「とりあえずその2人の身柄については引き受けよう、後でどんな罪を犯したかは詳しく聞いておく」
「ありがとうございます。 あと隻眼の魔女ってご存知ですか?」
ゼラートの
「ああよく知っている、こいつらがその一味とでも?」
「はい、指示を受けたと言っていました」
はぁとため息をつきゼラートはその場で立ち上がった。
「君たちもあの女に目をつけられてしまったか」
「有名なんですか?」
「前代の北の都の首長だからな」
「首長!? そんな人が何故裏社会に!」
「突然姿を消したと思っていたら、隻眼の魔女と名乗り裏社会を牛耳っていた。 王都の隠蔽によりその事実はあまり知られていないがな。 今では厄介な案件を水面下で遂行するにはあの女に依頼するのが一番なんだろうな」
「首長ってことは当然
「ああ、見たものを瞬時に凍結させる
プライドの高いゼラートがここまで言うんだ、間違いなく強い。
「とにかく隻眼の魔女に出会ったら、一刻も早く立ち去るんだ。 奴が
「はい、出来る限りそうします。 出会わない事を祈りますが……」
一度
一先ず、拘束した男たちを引き渡し、
「レンさんお帰りなさい!」
「ただいま、さっきの男たちはゼラートに引き渡してきた」
「ありがとうございます、一体何者だったんですか?」
「裏社会の人間ってところかな、この先こういう事がまた起きるかもしれない、いつでも逃げられる様にセリカは
「私たち、そんな人達に狙われているんですね…… いつでも逃げれる様にしておきます」
「そういえば、レナとセリカを襲った男はどうやって倒したんだ?」
「レナさんが
「目の前の人間を無力化する
「隠密行動にも向きますので、必要があればご指示ください」
「ああ、とりあえず今日は移動に戦闘と疲れたから早めに寝るか」
俺たちは解散した。
寝室に戻りベッドに入る。
次は現実か……
現実世界の
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「おはよう」
「あら、呼ばれる前に起きるなんて珍しいじゃない」
「テレビが見たくてね」
俺はテーブルに座り、テレビの電源をつけた。
今日の天気予報が映る、どうやら今日は金曜日らしい。
「そんなにテレビを見るなんて一体どうしたんだか、いつも殆ど見てないじゃない」
「俺もそろそろニュースとかに興味を持ち始める年頃なんだよ」
「あんたが見るニュースなんて、芸能ニュースくらいでしょ」
「いや、昨日どんな事件があったのかそれが見たい」
「どうせまた今日もいつもの行方不明のニュースでしょ、物騒ねぇ」
その物騒な事件に巻き込まれているのがあなたの息子だ。
「——次のニュースです、ここ数日連続して発生している原因不明の失踪事件ですが……」
「お、きたきた」
「神奈川県の高校に通う男子生徒が誘拐されかけましたが、未遂となりました。 この生徒は骨を折るなどの怪我をしたものの、命に別状は無いとのことです。 この事件で誘拐されなかったのは初の事例であり、警察が当時の状況を調査しています」
「この映像、うちの高校じゃないか!!」
「あら本当ね、学校も休校になったりするのかしら」
一体誰が誘拐されかけたんだ、それだけは確認しておきたい。
「とりあえず今日は学校に行ってくる、休校とかになる様だったら帰ってきて伝える」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
俺は朝食を食べ家を出た。
こんな状況だ、俺が
しばらく
久しぶりに電車に乗り学校に向かう。
通学路を歩く同じ高校の生徒の話題は、朝のニュースの話で持ちきりだった。
始業時間なっても唯斗はクラスに現れない。
「えー朝のニュースを見た人もいるかもしれないが、本校の生徒が行方不明事件に巻き込まれかけた。 さっき教育委員会から通達があり、来週1週間は自宅学習とすることが決まった」
クラスには歓声が響き渡る。
実質休みが突然与えられ嬉しいのだろう、この件に何も関係さえなければ。
「こらこら、あくまで自宅学習だからな、たんまり宿題は出させてもらう」
これまでの歓声が一転、えーと言う文句があちらこちらから聞こえる。
来週休学かどうかはどうでもいい、誘拐されかけたのが誰かを特定して話を聞かないと。
誰が何の目的でこの誘拐事件を起こしているのか、俺ならわかるかもしれない。
「じゃあ1限目始めるぞー」
ホームルームが終わり、1限目が始まった。
まだ唯斗は現れない、普段そんな遅刻する奴じゃないんだけど。
——もしかして事件に巻き込まれたのは唯斗か!?
確信を持てぬままただ時間だけが過ぎていく。
「ちょっと蓮」
チャイムの音が聞こえる、気がついたら下校時間だ。
顔を上げるとそこには玲奈がいた。
「多分あんた、この事件について調べようとか考えてるでしょ」
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