第五十二話 襲撃
「蓮、ちょっと話が」
警察からの取り調べの後、一番最初に声をかけてきたのは玲奈だった。
玲奈に連れられ、俺は学校の屋上に向かった。
「さっき呼び出されてたのはどういう事なの?」
「俺も話そうと思ってた。 この前
俺の話を聞いて玲奈が「はぁ」とため息をつく。
玲奈は屋上の手すりに肘を置き、空を見ている。
「そんな事だろうと思ったわ、あんたが戻ってきた時の顔がそんな感じだったもの」
「他にもテストの点数が悪い〜とか色々あるだろ」
「そんな事で誰もあんたの事を呼び出したりしないわよ、いつも赤点でしょ」
「…… 何もいえねえ……」
玲奈は振り返り俺の方を見る。
「で、どうするの? このままシラを切り続ける? それとも見た事を警察に全て話す?」
「俺も少し悩んでるんだ。 もし仮に異世界と
「ふーん、一応あんたも考えてはいるのね。 ならあんたがしたい様にすればいいと思うわ」
「あれ、意外だな。 もっとこうしろとか言ってくるのかと思った」
「今回は何をするのが正解なのか、私も分からないしね。 でもこれだけは言える、あんたはもう少し人を頼ってもいいと思うわよ、昔から一人で抱え込む癖があるから」
玲奈の顔が少し柔らかい雰囲気になる。
「さすが幼馴染、今後の参考にさせてもらうよ」
「じゃ、言いたい事は言ったし教室に戻るわよ」
俺たちは教室に戻り、残りの授業を受けた。
教室に帰った時、唯斗が恨めしそうな目つきをしていた気がするが、気にしない事にした。
一日の授業を終え、俺はどうするべきかを考えながら家に帰った。
俺は母親の手料理を食べ、風呂に入る。
風呂を上がった瞬間、頭の中に声が響く。
「レンさん、起きてください!!」
危機感を感じるようなセリカの声だ。 これは何か良くない事が起きているのかもしれない。
いつもの就寝時間からは3時間程早いが、俺はそのままベッドに向かう。
就寝しようとベッドに入るものの、ある疑問が頭に浮かぶ。
「俺の意識を異世界に飛ばしているのは玲奈の
俺はすぐに布団から飛び上がり、隣の玲奈の家に向かった。
インターホンを鳴らすと玲奈の母親の声がする。
「はい、どちら様?」
「こんな時間にすみません、御堂です! 玲奈いますか?」
「いるわよ、ちょっと待ってね〜」
部屋の中から少しドタドタという音がした後、目の前のドアが開いた。
ドアを開けたのは花柄でサテン生地のパジャマを着た玲奈だった。
玲奈のパジャマ姿を見たのなんて小学校以来なので、少しドキっとしてしまう。
だがそんな事をしている場合じゃない、セリカの様子がおかしい。
「何よ、こんな時間に」
「セリカたちの様子がおかしい、俺はもう寝るから向こうに飛ばしてくれ」
慌てている俺を見て、玲奈も状況を察した様だ。
「分かったわ」
俺はすぐに自分の部屋に戻り、ベッドに入り就寝した。
みんな無事でいてくれ……
************************
目を覚ますと下の階から大きな物音がする。
俺はすぐにベッドを飛び出し一階に向かった。
そこには必死にドアの前に押さえているセリカと母親の姿があった。
「ごめん、やっと戻ってこれた!」
「レンさん、良かった! 王都の兵士がこちらに向かってきているのが見えたので起こしたんです!」
「ありがとう、起こしてくれなかったら帰ってくるのがもう少し遅れてた。
「はい!」
セリカは目の前に
「セリカ、二人を連れて行ってくれ。 足止めはしとくから」
「分かりました!」
「俺もすぐ逃げる、また泊まってる宿でまた落ちあおう」
俺はセリカの家の外に
「よし、これで時間は稼げたはず……」
「やっぱりテメェか!!」
剣を構えた兵士が一人、遠くから猛烈なスピードで近寄ってくる。
あの紅い鎧、またアイツか……
アウゼスは勢いをつけて剣を水平に振る。
俺はその場でしゃがみ、何とか攻撃を回避し高速移動で距離をとった。
「最初にテメェと会ったのもここだったな!!」
「王都からは相当な距離があるはず、どうやって……」
「こっちも
間髪入れずにアウゼスは剣を振る。
ハウエルとの修行のお陰で、攻撃は全て
「この前は気にする事が色々とあったけど、今は気にする事は何もない、すぐに決める」
「言ってくれるじゃねえか!」
アウゼスが思いっきり剣を振る。
振りかぶる一瞬の隙を俺は見逃さなかった。
俺はその場でジャンプしアウゼスの脇腹に蹴りを入れた後、後方に下がった。
「長引かせると体力が持たない、これで決める。
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