第六十一話 王宮潜入の結果
俺と四聖剣のソラスとギルバートは、一時休戦し西の都のほとりにやってきた。
ソラスは抱えたギルバートを地面に置き、その場でゆっくりと腰掛ける。
「こやつの縄を解いてやってもいいですかな? 悪さはしないと思いますが」
「あ、ああ。 アンタがこうして話し合いをしてくれているのを知れば、手は出してこないだろ。 悪い奴じゃなさそうだったし」
「こやつは昔からそういう奴なんです。 有り余る向上心の持ち主でしてな、私も手を焼いているのですよ」
そう言いながらソラスはギルバートの縄を解き、その場に寝かせた。
「さて、本題と参りましょう。 君はさっき捕らえられている人々を逃したいと言っていましたね」
「ああ、アンタと会う前に実はもう逃しちゃったんだけどな」
ソラスはキョトンとした顔をした後、笑った様な表情を見せた。
「なるほど、なかなか大胆なことをしてくれますね」
「そこをギルバートに見つかって戦闘になっちゃったって訳。 それにしても、アンタなら捕らえられている人々が、どこから連れてこられてそんな仕打ちを受けているか知っているんだろ?」
「はい…… これが人として道に反することだという自覚もあります。 ただこれは絶対である王の命、我々四聖剣は従う他ないのです」
「王の命令は絶対……か…… ソラス聞いてくれ、俺は王が侵略しようとしている世界出身なんだ」
俺の出身を知ったソラスは驚いた表情をしている。
「何と、どうやってこの世界に来たのですか? 捕らえた人々はこれまで逃してなどいないはず……」
「それは秘密っていう事で。 今俺の世界はアンタらの侵略によって悲しんでいる人々がいる。 俺はこの侵略を止めたい、その為に王を倒したいとも思っている」
「そんな言葉、私たちの前で口にしたら本来は処刑ものですよ。 しかし君が何故そこまで危険を冒して王宮に侵入しているのかが分かった気がします」
「この状況、やっぱりアンタらとまた戦わなくちゃいけないのかな」
「王を守護するのも我々の職務、王に危険が迫ると分かっていて野放しにする訳にはいきません。 ……本来であれば」
「本来であれば……?」
ソラスは崖の下に輝くウィンドピアの夜景を見つめながら口を開いた。
「先代の王であればという話です。 私がこんな事を口走るのは憚られますが、今の王は利己的すぎる。 このままでは国は悪い方向に進んでいく事になるでしょう」
「な、なら!」
「今後私は君を感知する事はできません」
ソラスが俺に目で合図を送る。 王宮に侵入した俺を見逃してくれるって事か。
「あ、ありがとうございます! 王をギャフンと言わせてやりますよ!」
「そんな物騒な言葉はここ以外では謹んでくださいね」
「う、う〜〜ん……」
俺とソラスが会話をしていると、隣で寝ていたギルバートが目を覚ました。
「あれ、ここは? ……あ!! そうだ俺はレン君と戦ってて!! ……でもなんでソラス爺も一緒にいるんだ?」
「さっきはすまなかったな、あの後色々あって……」
俺とソラスは少し前にした会話をギルバートに話した。
「なるほど、僕は王宮内でレン君に気づかないフリをすれば良いって事だね? でも残念だなあ、またリベンジしたいんだけど……」
「俺で良ければ王宮の外でいくらでも戦ってやるさ、王宮の中だけは勘弁してくれ」
「仕方ない分かったよ! また戦うっての、約束だよ!」
「分かった分かった! じゃあ俺、そろそろ行かなきゃだ。 王宮への
俺は目の前に
「今日は話を聞いてくれてありがとう、アンタらみたいな人たちが四聖剣に居てよかったよ」
「国を想っての事です、お気になさらず」
そう言い残してソラスとギルバートは王宮に戻っていった。
もう日付が変わってから結構な時間が経っている。 いつ現実世界に戻されるか分からない、皆が待つ小屋に戻らねば。
俺はすでに開いていた
小屋に移動すると、そこには無事逃げられた人々がそこら中に座り込んでいた。
良かった、流石にこの小屋までは追っ手は来なかったらしい。
そして、セリカ、レナ、シエラの姿もある。 あの
「3人とも、無事で何より!」
「あ、レンさん!! え、お腹から血が……」
俺の服を見たセリカがプルプルと震えながら近づいて来る。
「あ、これか。 すぐ止血したし傷も塞がってるから大丈夫だ」
「そうなんですか? また病院に連れて行かなきゃなのかと思いましたよ……」
「あの爺さんの
「元の世界に送り返しますか……?
「ちょっと試してみるか」
俺は座り込んでいる人々の前に立った。
「皆さん、先ほどは突然すみませんでした。 これから皆さんを元の世界に送り返せるか試してみますので、穴が開いたら入ってみてください」
不安に満ちていた人々の顔に、徐々に笑顔が戻る。
無事捕らえられている人々も救出できたし、次回潜入するときの脅威も半減した。
こうして2回目の王宮潜入は成功という結果になった。
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