第三十四話 支配人の正体
「どういうことだよ、支配人がアタイの親を殺しただなんて……」
フェラルの震えた声が部屋中に響く。
状況が全く掴めない、どうやり取りがあったんだろうか。
「フェラル、何を言ってるんです? 私は何も……」
「支配人、アタイはついさっき
支配人の顔つきが変わる、フェラルの前でこの冷たい表情をしている支配人は初めて見た。
「そうですか、ついに発現してしまいましたか。 その
「ああ、支配人がアタイを育ててくれたのは……」
「ここまで来たらもう隠す事はないですね、そうです。 フェラルの
「そんな……そんな事……」
フェラルは床に俯きながら座り込んだ。
涙が頬を伝っているのが分かる。
「支配人、昨日から色々と違和感を感じていたがこういう事だったのか」
「レン君、君は部屋の血痕を見つけたり、フェラルの前で
「やっぱり血痕のことを知ってたのか」
「もちろん、14年前のあの日は忘れられません。 自分の子を守ろうと必死に抵抗する人間を殺すなんて、あんなに命を奪うことに興奮するシチュエーションはそうそうありませんからね」
「もしかしてその子っていうのが」
「ああ、フェラルですよ。 あなたはよく懐いてくれましたねぇ、私があなたを孤独にした張本人だというのに」
「この外道がっ……!」
フェラルはもう放心状態だ。
それも当然だ、一番大好きな人が実は両親を殺した犯人で、加えて愛情なんてなかったと宣告されてしまったのだから。
俺の中で体の内に留めておけない程の怒りが湧き出てくるのを感じる。
「君は働く場所を間違えたね、こんな所見られたら君は始末しないといけない」
「お前だけはぶっ殺す……」
「舐められたものですな、君みたいな若造にはまだまだ負けませんよ」
「やってみるか?
俺を起点に薄い氷が地面を伝い、支配人の周囲を囲む。
「何か言い残す事はあるか、この後お前はすぐに氷漬けだ」
「ふっふっふ、強いていえば"
「………? まあいい、失せろ」
俺は支配人を氷で覆い、力の限り硬い氷を張った。
——これで終わりだ。
「フェラル、大丈夫か?」
「……」
フェラルは床に座らされた人形の様に俯いている。
「フェラル、お前の
無理やりフェラルの顔を上げ、視線を俺の顔に合わせた。
俺の顔を見た数秒後、フェラルの涙がどっと増し、俺に抱きついてきた。
こんなに辛い事があったんだ、今日はずっとそばにいてあげよう。
——ゆっくりと抱きついているフェラルの腕が緩み、右手が少しづつ上を向く。
「れ、レン……」
「何だ?」
フェラルの腕を見る、どうやら何かを指差している。
俺は指が指し示す箇所を見ようとする。
——その瞬間、俺の背中に激痛が走った。
支配人が氷の外に出てきている!?
氷を破って出てきたのか、そんなはずはない物音ひとつしなかった。
だとしたらどういう事なんだ、俺がは確かに支配人を凍結させたはず……
支配人は小刀を持ち俺の背後に立っていた。
その後ろには大きな氷の塊があり、壊された形跡はない。
背中が熱い、背中を触った俺の手には紅い血が纏わりついていた。
「レン、大丈夫か!! レン!!」
「これはちょっとやばいかもしれない……」
このままだと血が足りなくなって意識を失い、最悪死に至るだろう。
そうなる前に俺は目の前に転移穴を開いた。
「フェラル、これで逃げて助けを呼んできてくれ」
「でも……」
「いいから!!!!」
「そうはさせませんよ」
支配人が転移穴に向かって歩いてくる。
俺は
「フェラル、早く!!!!」
「——分かった」
フェラルは転移穴を通りこの場を脱出した。
「君は
「くそ……
風の刃が支配人の周囲を囲う。
「ほう…… 氷の次は風ですか」
「くたばれ……!!」
風の刃が支配人の体を切り刻む。
支配人の体から血が吹き出し、その場で倒れた。
「やった……のか……?」
「いえ、まだ私は生きています」
背後から支配人の声がする。
俺は慌てて振り返りながら体を前に乗り出した。
支配人の小刀が俺の頬を掠める、危なかった。
俺の目の前に立った支配人は無傷だ。
おかしい、確かに俺の攻撃は当たっていたはずなのに。
「君じゃ私には攻撃する事はできません、今投降するのであればこれ以上は手を出さないと約束しましょう」
「お前…… 一体何者なんだ」
「今はこの宿の支配人をしておりますが、以前は王直属の
「だから
「はい、王は今ある事に執心中ですから」
「別次元の世界を侵攻するんだろ」
支配人は少し驚いた表情を見せた後、また元の表情に戻った。
「まあ君には関係のない事です」
「くっ…… でもなぜお前はそこまでフェラルの
「君にも言いましたよね? 彼女は特別だと。 なんせ王の血筋を引く者なのですから」
「フェラルが…… 王の血を……?」
〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
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