カードゲームをしていれば誰しも一度はこう考えたことがあるはずだ。
「戦闘力が100しか違わないんだから、なんかうまく戦えば勝てたりしないの…?」
「なんでお前は召喚からしばらくしないと本気出せないんだ?待機中に準備運動しとけよ…」
と。
確かにそれはその通りで、仮にゲームの世界が現実になればそういったシステム上のルールや計算式から導き出される結果に変化を与えることは難しくないはず。
ただしそれは、必ずしもいい結果だけをもたらすとは限らない。
何故ならゴブリンはその精神性故に強者との戦いを放棄するかもしれないし、イタズラ好きの妖精は君や仲間達にちょっかいばかりかけて一切仕事をしないかもしれないからだ。
それどころか最悪の場合、悪魔系のユニットが味方を堕落させたり、天使系のユニットがパーティ内で宗教戦争を始めることもあるかもしれない。
そのため実際に複数のユニットを指揮する際は、それぞれの性格や特性に合わせた運用や役割分担などを常に考え続けなければいけない
だからゲームのルールや仕様はそういった面倒な処理を省き、ゲームを楽しめるようにするためのものという一面もあるのだ。
ただ、ここで少し考えてみてほしい。君がカードゲームが現実になった世界で、そういった様々な癖のあるユニットを苦労して指揮しながら冒険していたとする。
きっとウンザリして、冒険を辞めたくなるだろう。ゲームの方が良かったなと思うかもしれない。
だがそんな時、臆病で狡猾なゴブリンや、普段は不真面目な妖精が君のピンチに勝ち目のないモンスターに震えながら立ち向かっていったらどう思うだろうか?
きっとゲームでは到底味わえない感動があるはずだ
そんな仲間達を工夫して指揮し、通常では勝てないはずのモンスターを打倒した時には得も言われぬ達成感を覚えるだろう
そういったカードゲームの仕様上あり得ないが実際には起こり得る出来事を、ファンタジーが現実に持ち込まれた世界観で描写し、そしてそれに基づいたドラマが展開されるのがこの小説だ。
子供の頃、そういったストーリーを妄想したことがある人には是非読んでほしい。
具体的には一章の最後までだけでも。