第一章22 《不条理で不合理な世界観は必然に!》
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さて、思い出すだけでも実に癪ではあるのだが昨晩のババ抜きレースの結果から話すとしよう。
結果から言って仕舞えば、それは
序列にほとんど差異は無い。
相も変わらず俺は奴隷のままで、俺より一つ上の序列として東先輩がランクイン。
四夜と言えば一昨日と変わらず巧みな言葉と表情の数々で、周りをだまくらかし難なく2位にランクインしやがった。
そして言わずもがなだが、不思議と勝負事になると謎のセンスで負け無しの浅倉先生は今回もぶっちぎりで1位抜けだった。
「やはり世の中って不公平じゃないか?なぁ四夜。お前にだって、是非ともセルフサービスで歯磨きして欲しいもんだ」
今のはちょっとした皮肉さ。
相変わらず今日も、俺は朝から四夜の身の回りのお世話に追われていたのだ。
それが面倒かと聞かれれば当然面倒だし、その様な状況に満足か?と聞かれれば、チェック・イェーガーも舌を巻く程の極超音速で答えてやるぜ。
いいえ別に、ってな。
だから其くらい悪態をついたって構わないだろ?
だが不思議と不快感と呼べるであろう物は今の現状を過ごす俺には感じ得ず、ましてや昨日覚えた危機感とでも呼べる感覚は今や心の何処にも存在しなかった。
ありとあらゆる雑念を抜きにして言えば、ただ本当に面倒であるだけなのかも知れない。
洗面台の鏡に反射してドアが隙間からリビングの様子が見える。
新しいルームメイトである東先輩はあの未確認生物である浅倉先生と何やら談笑中だ。
「何だよ手伝う気概もねぇってか」
コップに並々と注いだ水道水で四夜に泡だらけの口内を濯がせる。
「ファーは底無しのバカ?世の中ってのは相応にアンフェアな物よ。今更そんな事に気が付いたなら……」
洗面台の前の椅子に座っている四夜のトロンとした瞳が薄く開いたのを、俺は洗面台に貼り付けられた鏡ごしに知る事になった。
「四夜……お前いつの間に覚醒してたんだ?」
「失礼ね、ずっと起きてるわよ。バカみたいな事を思い出しちゃって昨日から一睡も出来なかったんだから。其も此も全てはファーのせいよ、バカ」
「なんだそりゃ、ここまで甲斐甲斐しく世話してやってる人に濡れ衣は流石に酷いと思うぞ。弁明を求める。さもなくば浅倉先生の仕業で今日も白身だけに退化した俺の貧相な朝食と取り替えて貰うからな」
すると四夜は呆れた様に椅子から立ち上がると、その白くて細い腕を天井に掲げて手を伸ばす。
まるで目に見えぬ何かを掴む様に……。
「さっきの発言は撤回するわ。あんな事を言った私もバカだったけどファーは其を越す程のバカだったお陰で助かったんだし。きっと其も此もイヤな事を思い出しちゃったせいね」
四夜はスタッと洗面所の半開きになったドアへ向かう。
「お腹空いた。
そりゃあんまりだぜ。
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あとがき
チェック・イェーガーって何処のやっこさんだって?
世界で初めて音速の壁を突破したアメリカ兄さんのナイスガイさ。
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