第一章26 《√α Re: nosce te ipsum 》

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「ちょっとファー! 付いて来ないから何処で道草貪ってるのか……と……思えば……? えっ? どう言う事!? 」




 えもいわれぬ強烈な感覚に身動ぎも出来ずにいたその瞬間、その場所に飛び込んで来たのはやはりあいつだった。




「えっと水城さんよね……?ファーと何を話していたの? って……ううんそう言う事じゃないの。ち……違うって言ってるでしょ……。何ニヤニヤした顔でこっち見てるのよ! は……ハッ倒すわよっ!! 」




 と、その可愛らしい顔をみるみる真っ赤にしながら恐ろしい表情で俺を睨みつけて来やがる。



 まあ何だ、いくら威圧感が強かろうと所詮は手の平サイズの代物だ。




「ん? 違ったのか? てっきり俺は嫉妬でもしていたのかと……」




 次の瞬間……デジャブの様にガツンッと言う鳴ってはいけない衝撃音が、鈍痛と同時に脳髄に響いて来やがった。



 俺は慌ててさっきと同じ右足のすねを抑えると、強引に武力を行使して来やがったロリッ子に抗議の遺憾砲で報復攻撃を食らわしてやる。



 あん? 美少女相手にそれをするのは憲法●条に反しているだと……?うっせぇ。正当防衛だゴラァ!




「痛ってぇえ! 四夜! さっきと同じ場所を蹴るとか絶対にわざとだろ! 慰謝料だ……慰謝料を請求する! さもなくば実力行使だ。 なんちゃらファーストなど知った事か!さぁ次は法廷で会おう! 」



「ホウテイ?寝惚けた事抜かしてるんじゃ無いわよ……。次は本気で蹴るわよ?」




 などと右手ガッツで宣言したは良いものの、予想以上にキツかった四夜の牽制により見事、最初の意気込みは霧散する事と相なった。



 前髪で暗く影を作った額の間から人殺しの様な目を向けると言う、まるで背中にデカイ龍の刺青とか指が数本短そうな人達と同じ形相を四夜はしていた。



 手の平サイズとか前言撤回。

 怖すぎるぜ、ちくちょう……。




「ふふっ……うふふふ……」



突然、水城 梓橋は笑い出した。

口に手を当てて隠す様に上品に笑うのだ。



「なっ……何笑ってんのよ!」



「ーーーー」



「え? 今なんて……」




 この時、水城梓橋さんは何かを呟いていた。

 確かにだ……どうしても聞こえなかったが、何か大切な事を言っていた様な……。



 何だ……一体何だよ……この感覚は!




「早く貼ってきたら?時間が勿体無いわよ?」


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 ■■×●=√α


 世界は無限の時空間によって作られている。

 それは川の流れの様な物だ。


 その世界線に、愚かにも人の手で干渉する事など決して許されはしないのだ。

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