第一章17 《謎の新入部員は突然に!》

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 203号室のドアの前でゆったりと腰を掛けて座っている彼を見た時は、俺も四夜も何事かと本気で驚いた。



 話にこそ聞いてはいたが……まさか本当に来るとは思ってもみなかったのだ。



 よりにもよってこの学園のカーストの最上位に君臨する彼が……。




「ふむふむ……ここが今日から僕の入る部活か。宜しくね、山瀬君。それに四夜さん」



「えっと……あずま 太一たいち先輩でしたよね? 本気で言ってます? まだ正式に設立もされてない上に、このロリっ子が部長の……」




 そう言いかけた所で、四夜の鋭い視線が左斜め下の方向から突き刺さる。

 ギロリと、何か気に食わない事でもあったのか、四夜は内なるフラストレーションを隠そうともせずに俺にぶつけてきやがる。

 思わず身の危険を感じた俺は青ざめた表情のまま二の句を告げなかった。




「面白そうな部活じゃないですか。楽器なら触り程度ですがシンセサイザーを弾いていた時期が有りましたし、この部活のお邪魔にはならないと思いますよ」




 出たよ……触り程度なら、とか分かりやすい謙遜を言う奴。



 こう言った人に限って実際に弾かせたら大抵の場合プロ並みに上手なのだ。

 人並み以上に努力して、人並み以下にも届かない酷い数学の成績をとった中学生の頃の純粋無垢な俺が泣いてるぞ!




「ふんっ! そんなに言うなら弾いてみなさいよ! 私があんたの事をテストしてあげ…………」




 ガタンッゴトンッガタンッゴトンッガタンッゴトンッガタンッゴトンッ!




 あずま 太一たいち先輩の発言にライバル心でも抱いたのか……正にこれから威張り散らそうとしていた四夜の発言のさなか。



 俺達の背後を爆音で駆け抜ける電車の音が、自信たっぷりな四夜の宣言を強引に書き消す。



 この時の四夜と言えば、まるで鳩が豆鉄砲を食らったかの様な表情をしていて本当に面白く、俺は溢れる笑みを隠し切れなかった。




「ふっ……ふふふっ……」



「何がおかしいのよ、バカ! このっての! このっ!」




 そう言って四夜はその愛らしい顔を羞恥で真っ赤に染めながら、俺の左腕をポカポカと叩いて来た。



 いや、訂正しよう。むしろするべきだ。これだけの力で殴っておいてポカポカと言うには余りにも語弊がある。




「おい四夜。俺はゲーセンにある太鼓の達●じゃ無いんだぞ。痛てぇから止めろって」




 そもそもどうしてこんな事態になったかと言うと、それは話を昨日の四夜が倒れた後にまでさかのぼる事になる。



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 後書き



 因みにこの頃はまだ太鼓の達●は存在しなかったらしい。


 時代錯誤って恐ろしい物ですよね。

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